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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(11月24日)

2016年11月28日 | 暴走する都教委
 ◆ いじめ対策を言うならば、東京で起きたいじめ自殺等について明らかにすべきだ
 公開議案が①水泳授業等における「スタート」の取扱について(飛び込みによる都立高生の重大事故を受けて) ②教育職員免許状に関する規則の一部を改正する規則の制定について、
 報告が③東京都特別支援教育推進計画(第2期)・第1次実施計画(案)の骨子について ④「いじめ総合対策【第2次】(案)」について。
 非公開議題はいつもながら、教員等の懲戒処分や校長任命案件であった。
 10時、定例会開催時刻に宮崎教育委員の姿はなく、しばらくして現れた。時計の針は10時11分。宮崎教育委員は「降雪の影響で電車が止まってしまい」と言ったが、その言葉に私は唖然としてしまった。それを考え余裕を持って家を出るのはあたり前のことだろうが。単なる傍聴者の私でさえ、交通機関の遅れを考えて6時45分に家を出たというのに、だ。
 ② 教育職員免許状に関する規則の一部を改正する規則の制定について
 教育再生実行会議の提言を受けて文科省は今年度から小中一貫教育の義務教育学校を制度化した。それに伴い、義務教育学校の教員については、小学校教員免許と中学校教員免許の両方を持たねばならず、その取得については都道府県教委が定めることとしており、その提案であった。
 しかし、小中一貫教育制度について十分な検討をしないまま、文科省は義務教育学校を制度化し、都教委も検討した形跡はないまま、今回の規則制定の提案をした。
 6校の小中一貫校を設置してきた品川区は、今年度からその6校を義務教育学校に換えた。何のための小中一貫教育なのか、そのプラス面・マイナス面は? 見ていかねばと思う。
 ③ 東京都特別支援教育推進計画(第2期)・第1次実施計画(案)の骨子について
 盲・ろう・養護学校、特殊学級という呼称を特別支援学校、特別支援学級と文科省が変えたのが2007年。翌2008年から2016年までを都教委は「特別支援教育推進第1期」とし、今回、「取組みにより、東京の特別支援教育は着実に前進した」と評価した。主な成果として次の3点を挙げた。
 「知的障害特別支援学校の企業就労率が35.2%(2007)から46.4%(2015)にアップ」「知的障害特別支援学校の普通教室数が736教室(2004)から1239教室(2016)に増加」「スクールバスの平均乗車時間が72分(2004)から60分(2016)に短縮」。
 2つ目の、教室数が増加したのは、教育委員会・学校が特別支援学校・学級に振り向ける子どもを探し、保護者に繰り返し説得したことによる。2006年度、私が中学校で働いていたとき、「授業についていけない子」調査が頻繁に教育委員会から下りてきた。そうした子どもを特別支援学校・学級に振り向けるためであった。
 更に来年度からの10年を「第2期」とし、「共生社会の実現に向け、障害のある幼児・児童・生徒の自立を目指し、一人一人の能力を最大限に伸長して、社会に参加・貢献できる人間を育成」することを基本理念に、特別支援教育の充実をめざすという。
 その政策目標には、「小学校における特別支援教室での指導が必要と考えられる児童のうち、特別支援教室を利用している児童の割合が現状では37.8%、2026年には100%を目標にする」等々が掲げられている。
 教育委員会や学校が特別支援学校・特別支援学級に入ることが必要と判断した子どもについては、そちらに振り向けるべく、100%達成に向けさらに取り組む。子ども自身や保護者の考えで一般の小中学校に入学しないよう、説得するということか。
 「将来統計では、知的障害のある児童・生徒を中心に、今後も在籍者数の増加が見込まれる。2026年には2614人の増(うち、知的障害が2365人増)」と見積もる。
 「きょうだいや近所の友だちと一緒の学校に行きたい」という当事者の願いや、障害のあるなしにかかわらず、同じ場で生活し教育を受けたい・受けさせたいという考えについては、都教委は考慮しない、と宣言したと同じだ。
 「共生社会の実現」どころか、障害者差別を助長する、恐ろしい政策である。都教委は、当事者の声をよく聴くべきである。
 ④ 「いじめ総合対策【第2次】(案)」について
 いじめ問題対策委員会からの「最終答申」(2016年7月28日)を受けて、都教委が出した「いじめ総合対策【第2次】(案)」の報告。12月24日までパブリックコメントを募集し、2月の教育委員会定例会で「いじめ総合対策【第2次】」を策定、来年度から学校において取り組みを開始するという。
 「軽微ないじめも見逃さない《教職員の鋭敏な感覚によるいじめの認知》」「教員一人で抱え込まず、学校一丸となって取り組む《「学校いじめ対策委員会」を核とした組織的対応》を始めとする6つのポイントを掲げ、未然防止、早期発見、早期対応、重大事態への対処の4つの段階に応じた具体的取組をあげる。
 6つのポイントを踏まえて、いじめ防止の取り組みを推進するにあたっては、「いじめの件数が多いことをもって、その学校や学級に問題があるという捉え方をしない」などの注意事項が書かれている。
 「きめ細かく、素晴らしい」などの意見が教育委員からあったが、現実を見ていない意見だと私は思った。11月10日の定例会で今年4月から6月までのいじめ調査の集計報告がなされた際に、「学校いじめ対策委員会が組織的に対応した学校が増えた」が、「教員とスクールカウンセラーが連携して対応した事例のうち、効果が見られた事例の割合が、どういうわけか、過去2年間よりも減少した」と報告された。
 それがなぜなのか、教育委員は考えなかった、あるいは考えが及ばかなったということか。
 横浜に自主避難した中学生へのいじめの件に触れ、「賠償金云々は、大人の話。大人に理解を得る働きかけも大事」(宮崎教育委員)との発言には同意する。しかし、東京で起きてきたいじめによる自殺については、誰も一度たりとも触れてこなかったし、今回も触れなかった。
 昨年9月、大月駅で自殺した都立高校生の件、今年4月に同級生から殴られて死亡した青井小学校の件について、都教委はどのような調査をし、どう判断したのか、再発防止に向けて各学校にどのような指導をしたのか等を明らかにすべきだ。ぜひ、明らかにしてほしい。
 こうした実際に起きたことに向き合わずに対策を策定しても、絵空事である。

 「いじめ総合対策【第2次】(案)」の最後のページには「東京都の公立学校から巣立つ子供たちに伝えたいメッセージ」だとして、「人間と社会」(都立高校で昨年度から週1時間の必修を課した教科の、都教委作成の「教科書」)の最後のページを転載している。
 そこには、「多様な人と出会い、関わり、時にはぶつかり、高め合えるからこそ、私たちは幸福な人生を切り拓き、よりよい社会を、豊かな未来を築くことができるのです。何よりも、違った意見をもつ者同士の調整を図ることができること、それこそが人間らしさなのです。」とある。
 ここで言う、「違った意見をもつ者同士の調整を図る」とは何なのか。「日の丸・君が代」については、教員だけでなく子どもたちにも「君が代」起立を強制し、「お前が起立するまで式は始めない」と学校・教員が子どもを恫喝する現実。「違った意見をもつ者」も、上の考えに合わせて「調整を図れ」ということなのか、と勘ぐりたくもなる。言葉はきれいだが、人間的でも教育的でもなく、恐ろしい。
 12月8日は議題がないので、次回は22日とのこと。

『レイバーネット日本』(2016-11-25)
http://www.labornetjp.org/news/2016/1124nezu
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