◆ きみが死んだあとで (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
長編ドキュメンタリー映画『きみが死んだあとで』(代島治彦監督)は一九六七年十月、東京・羽田弁天橋で、佐藤栄作首相南ベトナム訪問阻止のデモの隊列にいて、機動隊に攻撃されて死亡した京大生山崎博昭から始まる、この五十年余りの若者たちの記録である。
山崎の死について証言する同級生たちは古希を超え、老境にある。が、山崎は十八歳のままだ。
「死者はいつまでも若い」はドイツの作家、アンナ・ゼーガースの小説だが、この三時間を超すインタビュー構成を見ながらわたしは闘争のまっただ中で殺害され、青春を中断させられた若者たちを思い起こしていた。
詰め襟の学生服を着た山崎の生真面目な表情がことさら悲劇性を強めている。生きていればどうしていただろうか。
彼の死の七年前、六〇年六月、安保反対闘争の国会デモで、東大生樺美智子が機動隊に殺害された。
六八年、東大闘争がはじまり、「連帯を求めて孤立を恐れず」がスローガンとなり(日大闘争など全国で全共闘が一斉に立ち上がった。
その後、七七年五月成田空港反対闘争は、学生と農民との共闘だった。機動隊が催涙ガス銃を水平撃ち、直撃を受けた二十七歳の東山薫が死亡した。
ひとびととの連帯を求めて亡くなった、若者たちの生と死の物語は、新しい時代の運動を切り開く、教訓に満ちている。
『東京新聞』(2021年1月1日【本音のコラム】)
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