Ⅲ 国歌ピアノ伴奏職務命令違反にかかる戒告処分取消請求事件
1 事案
提訴:平成14年1月25日
原告:職務命令に従わなかった小学校教諭
被告:東京都教育委員会
事件の概要
○○市立○○小学校の音楽専科の教諭である原告は、平成11年4月6日、同小学校の平成11年度入学式において、校長から国歌斉唱の際、ピアノ伴奏を行うよう、同月5日の職員会議及び6日の朝に職務命令が出されたのにもかかわらず、その命令に従わなかった。
被告は、このことは地方公務員法第32条及び第33条に違反するとして、平成11年6月11日付け原告に対し、地方公務員法第29条第1項第1号、第2号及び第3号により戒告処分を行った。
原告はこの処分を不服として、平成11年7月21日東京都人事委員会に審査請求したが、同委員会が平成13年10月26日付けで同請求を棄却する裁決をしたため、本件訴訟を提訴した。 第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務) 職員は、その職務を遂行するに当たって、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
第33条(信用失墜行為の禁止) 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
第29条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
争点
(1)原告の本件行為について、地方公務員法第29条第1項第1号、第2号及び第3号に該当する事由はあるか。
(2)本件処分は適法か。
裁判所の結論
争点(1):原告のした本件行為は、地方公務員法第32条及び第33条に違反するものであり、すくなくとも同法第29条第1号及び第2号に該当する。
争点(2):本件処分は違法であるとまではいえず、適法であるというべきである。
<判決:平成15年12月3日 東京地方裁判所>
2 裁判所の判断要素
(1)ピアノ伴奏は音楽教諭の職務に関する職務か?
←小学校教諭の職務は児童の教育をつかさどること。(学校教育法28条)
←高等学校教諭の職務は生徒の教育をつかさどること。(学校教育法51条)
←入学式の行事も教育の一環として行われるものである。
←行事を推敲するための行為を分担して行うことも教諭の職務に関する事項である。
←小学校の音楽専科の教諭の職務は児童の教育のうち主として音楽に関するものをつかさどる。
入学式において「君が代」を含む児童の歌唱をピアノで伴奏することは、原告(音楽教諭)の職務に関する事項に含まれる。
(2)職務命令でピアノ伴奏を強要することは、原告の「思想・信条の自由」を侵害するものか? (憲法19条に違反するか?)
←地方公務員は全体の奉仕者である(憲法15条2項)
←地方公務員は、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げて専念する義務がある。(地方公務員法30条)
←「思想・良心の自由」も、公共の福祉の見地から、公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けるものと解するのが相当である。(憲法12条、13条)
←音楽専科教諭に国歌斉唱の際にピアノ伴奏を命じる内容の職務命令を発する必要性はあった。(音楽教諭は教育のうち音楽に関するものをつかさどる)
←職務命令自体は、その目的も、手段も、合理的な範囲のものということができる。
本件職務命令が教育公務員である原告の「思想・良心の自由」を制約するものであっても、原告において受忍すべきものであり、憲法19条に違反するとまではいえない。
(3)校長の管理権、校務掌理権の濫用ではないか?
←職務命令は、職務上の上司が受命者の職務に関して発する命令である。
←本件職務命令は、職務命令発出の要件を満たしている。
←明らかに不当な目的に基づくものであるとか、内容が著しく不合理であるとまではいえない。
校長の管理権ないし校務掌理権を濫用したとまではいえない。
(4)信用失墜行為に当たるか?
←入学式という児童、保護者、来賓等が多く出席している行事の場において、職務命令に違反し、その進行上予定されていたピアノ伴奏を行わない。
教育公務員の職に関する信用を傷つけた行為に当たる。
TITLE:新実施指針Q&A
URL:http://tokyo.cool.ne.jp/kunitachi/kyouiku/040210Q&A.htm
1 事案
提訴:平成14年1月25日
原告:職務命令に従わなかった小学校教諭
被告:東京都教育委員会
事件の概要
○○市立○○小学校の音楽専科の教諭である原告は、平成11年4月6日、同小学校の平成11年度入学式において、校長から国歌斉唱の際、ピアノ伴奏を行うよう、同月5日の職員会議及び6日の朝に職務命令が出されたのにもかかわらず、その命令に従わなかった。
被告は、このことは地方公務員法第32条及び第33条に違反するとして、平成11年6月11日付け原告に対し、地方公務員法第29条第1項第1号、第2号及び第3号により戒告処分を行った。
原告はこの処分を不服として、平成11年7月21日東京都人事委員会に審査請求したが、同委員会が平成13年10月26日付けで同請求を棄却する裁決をしたため、本件訴訟を提訴した。 第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務) 職員は、その職務を遂行するに当たって、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
第33条(信用失墜行為の禁止) 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
第29条 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
争点
(1)原告の本件行為について、地方公務員法第29条第1項第1号、第2号及び第3号に該当する事由はあるか。
(2)本件処分は適法か。
裁判所の結論
争点(1):原告のした本件行為は、地方公務員法第32条及び第33条に違反するものであり、すくなくとも同法第29条第1号及び第2号に該当する。
争点(2):本件処分は違法であるとまではいえず、適法であるというべきである。
<判決:平成15年12月3日 東京地方裁判所>
2 裁判所の判断要素
(1)ピアノ伴奏は音楽教諭の職務に関する職務か?
←小学校教諭の職務は児童の教育をつかさどること。(学校教育法28条)
←高等学校教諭の職務は生徒の教育をつかさどること。(学校教育法51条)
←入学式の行事も教育の一環として行われるものである。
←行事を推敲するための行為を分担して行うことも教諭の職務に関する事項である。
←小学校の音楽専科の教諭の職務は児童の教育のうち主として音楽に関するものをつかさどる。
入学式において「君が代」を含む児童の歌唱をピアノで伴奏することは、原告(音楽教諭)の職務に関する事項に含まれる。
(2)職務命令でピアノ伴奏を強要することは、原告の「思想・信条の自由」を侵害するものか? (憲法19条に違反するか?)
←地方公務員は全体の奉仕者である(憲法15条2項)
←地方公務員は、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げて専念する義務がある。(地方公務員法30条)
←「思想・良心の自由」も、公共の福祉の見地から、公務員の職務の公共性に由来する内在的制約を受けるものと解するのが相当である。(憲法12条、13条)
←音楽専科教諭に国歌斉唱の際にピアノ伴奏を命じる内容の職務命令を発する必要性はあった。(音楽教諭は教育のうち音楽に関するものをつかさどる)
←職務命令自体は、その目的も、手段も、合理的な範囲のものということができる。
本件職務命令が教育公務員である原告の「思想・良心の自由」を制約するものであっても、原告において受忍すべきものであり、憲法19条に違反するとまではいえない。
(3)校長の管理権、校務掌理権の濫用ではないか?
←職務命令は、職務上の上司が受命者の職務に関して発する命令である。
←本件職務命令は、職務命令発出の要件を満たしている。
←明らかに不当な目的に基づくものであるとか、内容が著しく不合理であるとまではいえない。
校長の管理権ないし校務掌理権を濫用したとまではいえない。
(4)信用失墜行為に当たるか?
←入学式という児童、保護者、来賓等が多く出席している行事の場において、職務命令に違反し、その進行上予定されていたピアノ伴奏を行わない。
教育公務員の職に関する信用を傷つけた行為に当たる。
TITLE:新実施指針Q&A
URL:http://tokyo.cool.ne.jp/kunitachi/kyouiku/040210Q&A.htm
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