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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

6/23東京電力ホールディングス第93回定時株主総会(下)

2017年07月09日 | フクシマ原発震災
  たんぽぽ舎です。【TMM:No3119】2017年7月4日(火)地震と原発事故情報-
 ▼ 2021年デブリの取り出しは不可能だし極めて危険
   それよりも優先すべきことがいくつもある

山崎久隆(たんぽぽ舎)

 総会の場で次に質問が集中したのは1~3号機のデブリ取り出しとその工程についてだ。
 「誰もやったことのない作業、リスク低減のために進めていく」と福島復興本社代表の増田尚宏常務執行役は答えていた。
 しかし「熔け落ちた燃料の場所も状態も全く分かっていません」と認めているのに、デブリ取り出しの作業は中長期ロードマップ通りに進めたいとする。その実現可能性についても、精神論を述べるだけで成立を証明する具体的な説明は一切なかった。
 「新々・総特」の時と同様、東電取締役は「こんなに頑張っているのだから少しは評価して欲しい」と言いたいのだろうが、頑張っている方向が違うのだから質問も批判も出る。
 デブリは再臨界を引き起こしたり水蒸気爆発を起こすことよりは、冷却水の流れに乗って建屋から流出し海や土壌を汚染するリスクのほうが大きい。
 海側遮水壁を作っても、その下の地下30メートル以深はブロックしていない。水と共に流れ出してもウランやプルトニウムなど放射線量が測定しにくいα(アルファ)放射体は監視の目をすり抜けるだろう。
 燃料が建屋内に留まる限りは環境への影響は少ないが、それを取り出すために、いろいろなことを始めれば、その行為のために漏えいや事故が起こりやすくなる。
 第一、作業者の被曝が大変多くなり、そのため安全対策や汚染防止措置に欠陥が生じやすくなる。事故が起きたり放射性物質が拡散したら、既に帰還を始めてしまった地域で再度、避難が必要になる恐れもある。事態がさらに拡大すれば、3.11のような広域避難が必要な事態になる可能性もある。
 デブリ取り出しが安全に出来るようになるには、時間の経過で放射線量が下がるのを待つほかはない
 ロボットを入れてのデブリの確認作業だけで、従事者は毎時1ミリシーベルトを超える被曝労働だという。たった1時間足らずで一般の年間被曝限度を超えている。
 放射線防護の基本は「遮蔽」「距離」そして「時間」だ。このうち「時間」は被曝労働に従事する時間を必要最小限にとどめることを意味する。線量が高ければ高いほど作業時間は削られる。
 現在、建屋内の空間線量は事故当時、気体状で放出されたセシウムが一番効いている。そのうちセシウム137の半減期30年を一つの目安とし、30年間の冷却期間を置くことを私は総会の場で提案した。その間は密封管理を徹底し、漏出防止の対策のみ実行する。漏出管理の徹底と言っても作業の難しさはあまり変わらない。ただし格納容器内にアクセスしないで行うため、被曝量は大幅に減る。
 ◎ 原子力損害賠償と東電の立場

 このことを報じたマスコミはなかった。たぶん、話が理解できなかったのかも知れない。しかし再稼働原発が5基から7基へと増えようとしている時に、事故対策として損害賠償問題を取り残したままでは、福島第一原発事故の教訓が忘れ去られたことになる。
 原子力損害賠償法の第4条では「責任の集中」が規定されている。事故を起こした会社に損害賠償を含む全ての責任があるとする規定である。
 その点から東電の現状を見れば、福島の被災者への賠償や補償、あるいは避難している人たちへの支援などは東電だけが負担すべきであり、国や他電力が資金を供出する謂われは無いはずだった。
 ところが原子力損害賠償支援機構法が2012年に成立し、電力会社も「一般負担金」として一定の金額を機構に拠出することとされた。
 これが責任の集中を「分散」させる結果になった。国も「原子力研究開発」の名目で380億円を凍土壁対策にと、税金が投入された。
 原子力損害賠償の額が上限「1200億円」なので、22兆円近い金額をまかなえない。これに「過去の準備しておくべきだった金額が2.4兆円」などと理屈をくっつけ、電力各社に原子力の出力比で負担金を定めたのが「一般負担金」で、さらに過去に存在しなかった新電力についても「過去分」としてその10%を負担すべきと、2400億円の負担を求めることにしたのが、経産省の作った「電力システム改革貫徹委員会」だった。
 この結論が同じく経産省の作った「東電改革・1F委員会」に持ち込まれる。
 このいきさつは、昨年7月、株主総会直後に出された東電による経営破たんに至る可能性を回避するための施策を要求する文書が基礎になって作られている。東電が、東電のために作ったようなものである。
 制度の整合性、法令との関係を問われても、廣瀬社長は「福島への責任を果たすためには必要な制度であり、原賠法違反とは考えていない」と答えた。
 そこまで言うのであれば、質問した株主の言うとおり原賠法を変えるべきだ。例えば22兆円を補償できる保険制度とするべきである。
 22兆円を支払うには、現在の保険料率「1万分の20」で計算すれば、年間440億円の保険料負担になる。これは原発1基分の利益を吹き飛ばす金額である。70兆円ならば1400億円もの金額になる。これが負担できないならば原発を止めるべきとの指摘がなされた。
 これに対する実質的な回答はなかった。

 文鋏常務の回答は、資金確保の回答としてなされた。
 21.5兆円の内機構が交付金をもって東電の賠償支援は13.5兆円、このうち東電が支弁する金額は8兆円、機構からの交付金は利益として計上しているから、これについて返済はない。原子力事業者は機構の業務に要する費用を負担する義務を有している。賠償支援は電気事業者の相互扶助として、機構へ負担金として払っている。
 原発事故が起きたら機構法で相互扶助の考え方で資金を供給することとなっているとした。
 廣瀬社長は根拠は示さず原賠法上の問題はないと回答した。
 それ以上の回答はなされず、以後は原発と火力のバーターの話にすり替えてしまった。質問とはかみ合っていない
 ◎ 議案の採決は

 総会の最終場面は、会社と原発推進株主と私たちの議案の採決だ。
 会社提案は大株主、この場合最大株主は原子力損害賠償支援機構つまりであり、議決権を有する株数の50.1%を持っている。事前に合意書を提出している機関株主を合わせて過半数は確保されているので、会社提案は賛成、それ以外は反対へと結論づけられている。
 会場での採決は、いわばセレモニー以上の意味は持たないが、提案株主としては会場のどのくらいの賛同が得られたかは重要だ。
 採決の場面では、会社提案にも提案株主にも賛同の挙手をしない人が相当数いる。
 現在の総会のあり方に疑問を持っているか、本当にどっちにも賛成できないと思っているか、いずれにしても、それらの人々が脱原発提案に賛成するようにこれからも働きかけることが重要だ。
  (了)

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