パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京の教育に国際水準の人権を適用することを求める要請書

2011年11月17日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 《11・7予防訴訟をすすめる会による最高裁要請行動から》
 ◎ 東京の教育に国際水準の人権を適用するよう求める要請書
2011年11月7日
上告人 花輪紅一郎
(NGO国際人権活動日本委員会会員)

 1,国際人権の領域から注目すべきメッセージ

 『世界人権宣言』制定の理念は、恒久平和の実現のために、世界中が一定の人権水準を達成し共有することにあります。その崇高な目的に向けてわが国でも関係機関を先頭に人権の啓発と普及が地道に推進されてきました。私は法律の専門家でも学者でもありませんが、国民の一人として日常生活の中に人権が浸透し定着することが大切であると考え、一教員としては『現代社会』の授業の中で常に国際人権を取り上げてきました。
 今、国際人権の領域から注目すべきメッセージが発せられていることを、前回の要請の時に、国内未翻訳の最新の資料として提出させいただきました。「自由権規約19条(意見と表現の自由)に関する『一般的意見34』」です。未だ英文のみですので、「disrespect for flags and symbols(旗やシンボルに敬意を払わないこと)」の文言が追加挿入された「パラグラフ38」だけを部分訳して提出しました<資料1>。今回は引き続き、そこに追加された文言の意味を確認しつつ、本件訴訟への積極的かつ速やかな国際人権の適用を要請いたします。
 2,パラグラフ38
 「パラグラフ38」とは、規約19条3項(権利の制限条項)<資料2>について、公人・公的機関に対する反対・批判の言論の自由を制限することが許されないケースを取り上げている項目です。その違反に当たる詳細な例示の中に、不敬罪・侮辱罪・国家元首に対する名誉毀損などに加えて「旗やシンボルに敬意を払わないこと」の文言が追加されました。すなわち、「国旗国歌に敬意を払わない」ことを禁止したり処罰することは、規約19条3項違反の人権制約にあたるとしたのです
 今世界中で、国旗国歌に対する敬意表明が社会問題化している国が日本以外にあるかを考えた時、国連がこの時期この文言を追加した意味を、わが国の関係者は真剣に受けとめるべきです。
 まさしく、本件訴訟は、私たち教員である原告が、卒業式で国旗国歌に正対して起立斉唱する行為を公権力から強制されない自由を主張しているものです。
 先般5月30日から7月19日にかけて、一連の先行する君が代関連訴訟に対して最高裁の判断が示されました。その骨子は、公権力による「起立斉唱命令」は「儀礼的所作」だから思想・良心への「直接的制約」にはならないものの、「敬意の要素を含む」から思想・良心の「間接的制約」にあたり、ただし命令に「必要性・合理性」があるから憲法19条(思想・良心の自由)違反にはならない、というものでした。
 しかし、その後7月21日に国際自由権規約委員会で採択・発表されたパラグラフ38には次のような下りがあります。
 「表現の形態がある公人に対して侮辱的とみなされるという事実だけで、処罰を科すことが十分に正当化されるわけではない。」
 これは、「儀礼」というだけで国歌斉唱時の着席行為に対して処罰を科すことは正当化できないことを意味しているのではないでしょうか。
 同様に、「すべての公人は、合法的に、批判および政治的反対の対象になる」として、その批判や反対の対象の具体的例示の1つとして「旗とシンボル」を明示しています。
 このように「国旗国歌に敬意を払わない」ことを、法律に基づかず処罰するのは自由権規約19条違反になるという国際人権の解釈は、国内の人権水準を国際レベルに合致させるという条約批准の本旨からも、ただちに本件訴訟にも適用されるべきだと考えます
 加えて、2008年自由権規約委員会が日本政府に向けた『総括所見』の中で、「公共の福祉」名目に個人の権利を制限することに懸念を表明し改善を勧告していることも、公権力による人権制約の限界を示すものとして、再度想起されるべきでしょう<資料3>。
 3,教育権の国際水準
 私たちが争っているのは、直接的には「教員の権利」ですが、教員の思想・良心に対するに権力的介入は、教育現場の学問の不自由や、多様な個性を認めない画一的価値観で序列化する形式的で硬直した息苦しい教育を生んで、必然的に「子どもの権利」の侵害に直結する側面も持っていることにも、留意していただきたい。
 既に東京都の卒業式では、都教委の「10・23通達」が、教員への強制にとどまらず、生徒に対して「起て、歌え」と実質的な強制に及んでいる実態は、別添のチラシでご確認ください。
 この事態は、教育権の国際基準に抵触します。世界人権宣言26条(教育への権利)、社会権規約13条(教育への権利)、子どもの権利条約12条(意見表明権)、同14条(思想・良心・宗教の自由)、同28条(教育への権利)、同29条(教育の目的)、に掲げられた国際的な「教育」の理念に反しています。
 また、教育への国家の介入について、日本の憲法にこそ制約を定めた条文はありませんが、自由権規約18条(思想・良心・宗教の自由)第4項<資料4>には、国家は子どもの思想・良心・宗教に関して中立的かつ客観的でなければならず、保護者の意向に反して強制してはならないとの規定があり、子どもに対する国家の教育権の限界を示しています(『一般的意見22パラグラフ6』<資料5>)。
 このような事態の中で、教員の「職務」とは、校長の命令にただ無条件に従うことではなく、教育の本来の目的である、生徒の人格形成の自由、思想良心の自由、学習権を守り、侵害行為があればそれを排除する教育実践こそ、教員のより本質的な「職務」であり、それを国民全体から求められているのだと私は考えます。
 東京の学校の卒業式にも、世界標準の人権が適正に適用されるよう、そしてやがて国民の日常生活の中に国際レベルの人権水準が達成され定着し国際社会からも尊敬されるよう、司法の賢明なご判断を要請いたします。

※『一般的意見34』パラグラフ38
http://wind.ap.teacup.com/people/5831.html

コメント    この記事についてブログを書く
« 思想・良心の自由を、生徒た... | トップ | 子どもたちに「日の丸・君が... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日の丸・君が代関連ニュース」カテゴリの最新記事