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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「オリパラ教育」の集大成は、学校連携観戦チケットの強制割当

2019年11月21日 | 暴走する都教委
  《東京教組 職場討議資料》
 ◆ 問題点だらけのオリパラ観戦・引率


 9月に東京都のほとんどの学校に対して、「オリンピック・パラリンピック2020東京大会」の児童・生徒の観戦チケットの割り当てが通知されました。突然、来夏に授業として観戦することが伝えられ、戸惑った方も多いと聞きます。
 東京都教育委員会は、「オリパラ教育」の集大成として「希望する学校に直接観戦する機会を提供する」と、学校連携観戦チケットの発券事業を企画しました。
 昨年から今年にかけ意向調査を行った上で、チケットの割り当てを決定し、各区市町村教育委員会に「学校の教育活動の一環」として実施するよう求めています。オリンピック・パラリンピックの観戦の意義の有無とは全く関係なく、一律に学校行事として事実上強制的に実施されてしまうことには、いくつもの深刻な問題が存在します。
 ◆ チケットの割り当て決定までの経緯
 まず、どのような経緯で、このオリパラ観戦が決まっていったのかです。

 昨年2018年の10月に都教委は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における子供の競技観戦について」を報道発表しました。
 この時点では、あくまで「希望する学校に観戦機会を提供する」という事業でした。
 その後予備調査を学校に下ろし、今年の5月には最終意向調査が行われました。
 この間、職員には全く相談もせず、勝手に申し込みをした管理職もいたようで、いざ割り当てが決まった時に寝耳に水という学校が少なくなかったことも、大きな問題です。
 ◆ 希望ではなく、強制された申し込み

 当初の報道発表では「希望する学校に観戦する機会を提供」となっています。
 5月に出された「学校観戦チケット最終意向調査における留意事項」(以下留意事項)には、「交通機関の相当の混雑が予想され、夏の暑い時期の活動になります。」として「学校の所在地やその他の状況なども十分ご検討の上、特に低年齢の子供たちについては、各学校におかれましても、慎重にご検討の上、ご回答くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。」となっています。
 そもそもがあくまで「希望」であり、その際に「混む」し「暑い」から、「遠さ」や、連れていく「年齢」には気を付けろよ、と言っているわけです。
 にも関わらす、都内のほとんの学校が申し込みを行いました。年齢については、多摩地域では観戦場所まで遠くても、小学校低学年まで全員連れていく小学校もあります。まともな教育上の判断をして申し込んだとは到底思えないのです。
 校長会ですら高学年だけでいいのではないか、と言ったのにもかかわらず、地域全体で「全学年連れていく」ことが決められた地区もあるそうです。
 3月頃、ある公明党の区護会護員は自身のプログに「都内の学校のすべての子どもたちを大会に無料招待します」と書いていました。
 最終意向調査前の時点で「すべての子ども」と言っていること、「招待」と「一斉の引率」は全く違うもであることなど、学校の検討を前提としないで「オリパラ観戦で100万人の子どもにレガシーを」というスローガンが先行してしまっていることがよくわかります。
 ですから、この都の取り組みは、政治のカが大きく働いて児童・生徒の動員がなされるものであり、学校教育への政治の介入が各地区で実際に行われたものと断じざるを得ません。
 皆で盛り上げなければいけないから、オリンピックだから、国を挙げた一大事業なのだからと言って見逃すことはできません。
 それでは「国家の一大事だから」と戦争に突き進んだあの時代と何ら変わらないではありませんか。
 ◆ 「混雑」「酷暑」の中に子どもを晒すのか

 留意事項でも指摘されている「暑い時期」「相当な混雑」については特に重大深刻な問題です。
 ですから、東京教組は連合東京とともに都に要請をしています(略)が、酷暑対策でマラソンの実施揚所すら今頃揺れている状態ですので、いくら都が「暑さ対策をしっかりしている」といっても不安は大きくなるぼかりです。
 やはり、教育の専門家である我々が、きちんと実踏をした上で本当に可能なのか判断すべきです。
 酷暑については、近年の日本の夏ははっきり異常状態です。
 プール等も暑さで中止になる状況ですから、長時間の徒歩や、屋外での観戦では、熱中症のリスクの高さは言うまでもありません。
 また、特別支援を除いてバスは控えるように求められています。しかし、電車と徒歩で大勢の子どもたちの引率が可能なのでしょうか。
 前回の東京オリンピックとは経済・流通の状況が全く違います。

 東京都の資料によると、オリンピック・パラリンピック両大会計30日間での見込み観客数は約1010万人。単純計算で1日平均34万人弱が各競技揚を訪れます。
 そのため都は企業に対して、物流の抑制分散を要請しているところです。
 それに応じて既に対策室を設けて計画を立てている企業もある中、当の都自身が100万人以上の子ども・教職員を移動させることに対して、今の時点で対応できていない状況です。
 複数の競技揚に多数の学校の子どもたちの団体が約34万人の移動の中に投げ出されることになりますが、その調整は各学校レベルでできるものでは全くありません
 トイレ1つとっても、通常の遠足などでもとても気を遣うことの1つですが、さらに大きなハードルとなってしまうでしょう。
 これらの状況が解決せずに大会当日を迎えてしまうのではないかという懸念を、今はとても払拭できません。
 その場合、死亡事故も十分に想定されます。オリンピック・パラリンピソクを推進し成功に向かって取り組む立場であれば、そのような事態は何がなんでも回避するという結果を出さなければなりません。
 子どもたちに「負のレガシー」を残すことは許されません。

 ◆ キャンセルはできない?

 しかし、留意事項には、都の負担でチケットを一括購入しており、5月の最終意向調査以降は「購入後の返金が認められていないため」「正当な理由なくキャンセルすることは認められません」とあります。つまり「金がもったいないからキャンセルしてくれるな」と言っているのと同じです。
 観戦場所も決まっていない5月の段階で希望調査を出させ、キャンセルを認めないなどということはあり得ないと考えます。
 9月に観戦場所と日程が決まって以降検討し、各学校が安全を理由に、取りやめや一部の学年の取りやめを決定することは、認められるべきです。
 実踏の結果、危険と判断されたということは、明らかに「正当な理由」です。「子どもの安全」より「金」を優先してはなりません。
 また、学校自身が安全を理由とした参加・不参加の決定権がないのであれば、万が一、病人や死者が出た場合の責任の所在がどこにあるのか、現在の状況では不明であることも、引率する者の不安を増大させています。
 ◆ 当日の中止基準が必要

 また、たとえ実施が決定したとしても、当日になって中止する判断も必要です。
 計画をたて準備を進めたことを中止するのは勇気のいることです。暑さや荒天について、当日の実施基準が必要です。
 この夏は「暑さ指数」がクローズアップされ、指数31度以上は原則屋外での運動の禁止という基準に従い、夏の水泳指導等が中止になったところが多いと聞いています。
 こうした基準を設定した上で、会場付近の暑さ指数・ゲリラ豪雨予測・台風の接近情報などをまとめて発信するサイトの開設等を求めていく必要があります。
 ◆ 授業として実施することの問題点

 夏季休業中は、学校以外の団体などが、スポーツに限らず子供に関する様々なイベントを行う時期でもあります。
 2020大会開催に合わせ、既に時期をずらしたり、2020に限り中止を決定しているものもあります。このこと自体子どもの様々な興味・関心についてニーズに応えていくという立場から問題があります。
 そして、子どもの参加にある程度の強制力のある授業をしてしまうことは、同時期に開催される催しについては参加できなくなってしまうということです。
 オリンピックに興味がある子どもにとっては、逆に自分の観戦したい競技が別にあるでしょう。日本の活躍が期待される種目・試合に興味がある子どもが多いことも予想されます。そちらを自由に観戦することの方がよっぽどその子の一生の思い出になるはずです。
 また、受験にも大きな影響がある時期です。こうした子どもの時間を奪ちということにも大きな問題があります。
 ◆ 教職員の勤務の問題

 文科省は完全週5日制が実施となった2002年に、夏休みに振り替えが無くなったのだから、休暇を取らない限り勤務時間であり研修に励むように、という内容の通知文を出していました。
 しかし、あまりに多忙になった現状から今年になってこの通知を撤回し、今度は夏休みはなるべく休むように、という通知を出しました。
 今回のオリパラ観戦は、この通知に反しています。
 実地踏査や交通手段の確保、事前の観戦マナーの指導、など大きな業務付加が予想されます。このままでは、来年の夏は多くの人が年休の消化できない夏休みとなってしまいそうです。
 また、勤務時間の問題もあります。
 割り当てられた種目によっては、夜の開催も含まれ、我々の勤務がどこまで延長されてしまうのか懸念もあります。
 勤務時間をずらすとしても限界があります(例えば13:00出勤、22:00退勤などあり得るでしょうか)し、その場合、次の日の勤務時間とのインターバルの問題も出てきます。
 しかも泊を伴う行事ではないので超勤を命じることもできません
 この部分をきちんとしようとするなら、観戦時間は非常に限られたものになります。
 まして会場内に弁当などを持ち込むことは、現在許されていません。午前や午後のみで異動時間を考慮すれば、観戦は1時間にも満たないところも出てくるのではないでしょうか。
 そもそも、中教審では教員の業務の仕分けを強く打ち出していたのであり、このオリパラ引率こそ「学校以外が担うべき業務」ではないでしょうか。
 子どもたちにレガシーを残したいという趣旨に賛同する、地域の青少年対策委員会や、町内会が担うことも可能でしょう。その場合、学校の教員が参加するならボランティア休暇になるでしょう。
 ◆ 子どもの最善の利益のために

 東京教組は後掲の記事(略)のように連合東京と共に、オリパラ観戦について「子どもの安全」を求める要請を行いました。最も大きく懸念されるのが子どもの安全です。
 東京教組は、第31回の定期大会において《教職員の良心宣言》を採択しました。
 その1項は「私たちは、子どもの最善の利益のために働く」であり、3項は「私たちは、教育の自由と教職員の生活を守る教育労働者である」です。
 オリパラ観戦・引率についてはその両方が脅かされています。
 都は「オリパラ教育の総仕上げ」と言っていますが、もし、オリパラ教育で愛国心教育が行われるのであれば、2項「私たちは、学校に憲法を活かし、平和を希求する」も脅かされていることになります。
 今後、子どものオリパラ観戦・引率の問題について、特に子ども安全の問題について学校現場の立場から訴え、都民の大きな声にしていく必要があります。
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