=たんぽぽ舎です。【TMM:No4194】「メディア改革」連載第62回=
◆ 官僚用意の問答集を棒読みする菅会見は世界の恥
◆ コロナ人災、無策無能で緊急宣言をまた延長
◎ 菅義偉首相が「17日間の短期集中」と明言していた3度目の緊急事態宣言が予想どおり延長になった。政府は5月7日、4都府県に出されている同宣言を5月31日まで延長すると決定。首相は同日午後7時から官邸で記者会見を開いた。
就任以来、官邸での会見は11回目だが、いつも以上に、声に力がない。滑舌が悪いので聞き取れない。「ワクチンの治験」が「ワクチンの危険」と聞こえる。プロンプターがあるが、うまく使えない。
「東京五輪を開けるのか」という質問にまともな回答はなかった。
「人流を抑える」という行政の長が100人近い随行員を引き連れて訪米し、五輪を強行開催では、民衆が政府の自粛要請に応じるはずがない。
質疑応答では今回も、フリーランス枠の記者以外は質問事項を事前に提出しているようで、首相は質問の時から机上の台本に目を落とし、回答は紙を読んでいる。
インドなどからの水際対策を聞かれ、「ゲノム解析のサーベイランスに重点を置く」などと答えたが、「サーベイランス」がなかなか言えない。カタカナで言う必要があるのかと思う。
産経新聞の杉本記者は「現行憲法下においても、政府は国民の私権を制限する感染対策を行っている。緊急事態条項がなければ採れない対策は、具体的に言うとどういうものか」と聞いた。
首相は5月3日の日本会議系集会で、自民党憲法改定案にある緊急事態条項とコロナ禍を結び付けた発言をしており、御用新聞による完璧なサクラ質問だった。
菅首相は「(憲法には)今、参議院の緊急集会しかない。コロナの感染が拡大する中で、海外の国を見ると強制的な執行を私権制限がない中でできている。緊急事態への国民の関心は高まっていると思う」と回答した。
「例えばワクチンの治験についても、国内治験というものも求められ、3~4か月ぐらいは掛かるので、接種も遅れてしまうなどの問題がある。感染症を考えた時、落ち着いたら検証し、対策を考える」と答えた。
しどろもどろの回答で、憲法に緊急事態条項を新設しなければできないコロナ対策など、何もないことを自白してしまった。
◆ 東京新聞記者の「会見改革」要請を無視した菅首相
◎ 菅首相は会見の冒頭、宣言の延長について「深くおわびを申し上げる」と3秒、軽く頭を下げて陳謝したが、空々しい。その後、「東京や大阪の人流が減少している」と言い張り、「1日100万回のワクチン接種」と大風呂敷を広げた。
菅首相がワクチン問題で、「訪米の際、ファイザー社のCEOと協議した」と二度述べたが、これは不正確だ。首相側はファイザー社トップとの面談を画策したが断られ、電話での要請になった。電話なら、日本からでももっと早く要請できたはずだ。
今回の質疑応答も緊張感がなかったが、菅首相が無視した質問があった。
内閣記者会の幹事社(常勤19社の持ち回り、2カ月交代)である東京新聞の清水俊介記者は、「そもそも短期集中という設定は正しかったのか。宣言解除の判断基準を明示すべきだ」と質問。
清水記者はその後、「この会見はひとり1問が原則だが、国民の疑問に応える有意義な質疑になるよう、各社から再質問が上がった場合、その再質問にも応じてもらいたい」と述べた。
菅首相は解除の基準について回答せず、会見のあり方に関する要望について何も答えなかった。小野日子内閣広報官も無視した。
◆ 「内閣記者会主催」なのに広報官が仕切る前例踏襲
◎ 安倍前首相時代から首相会見では、質問は1人1問とされ、「更問い」(さらとい)ができなくなっている。
ネットのBuzzFeed Japanの<菅首相が会見で「無視」した記者の言葉>(7日)は<記者会見は首相官邸記者クラブ「内閣記者会」の主催。つまり本来は司会も報道側で行うのが筋だが、官邸側が司会するのが常となっている>と書いた。
<スタンドマイクの前に立って質問をする必要がある。以前は自席から質問をするスタイルだったが、昨年4月の前首相の会見から、このやり方となった。今年1月4日の菅首相の会見では、ここに「自席からの追加質問はお控えいただきたい」との言葉が加わった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c3248a60cb93c0d4cfa04d6052ca595c06b0a4d
◎ 8日の東京新聞は<会見に先立ち、本紙を含む内閣記者会の一部加盟社は、回答が不十分だったりした場合は再質問を認めるよう、小野広報官に要望していた><この日も、会見の開始前に事務方が注意事項として「追加質問はお控えください」と述べていた>と書いた。なぜ、内閣記者会の総意として要求しないのか。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102841
清水記者の質問の後、もう一つの幹事社、共同通信の吉浦記者が五輪開催について質問。
小野氏は「幹事社以外の質問」に移り、14人が指名された。
最初は「毎日新聞の小山さん」。次に「TBS後藤さん」。
参加者が挙手する前に、社名と名前(姓)を言って指名している。
小野氏は「ラジオ日本の伊藤さん」「それでは、2番目の列で、京都新聞、国貞さん。どうぞ」などと質問者を指名した。
「それでは、奥のフリーランスの安積さん、どうぞ」と指名された安積明子氏は「インド在住の邦人を領事館でPCR検査すべきでは」と質した。
菅首相がまともに答えなかったため、自席から「PCRについては」と声を上げた。首相は「PCR(検査)の場所を領事館で紹介している」と答えた。
その後、「それでは、前列に戻ります。日本経済新聞の重田さん」などと次々と指名。「それでは、あと2問とさせていただきます。それでは、真ん中の列、読売新聞、黒見さん、どうぞ」「最後の質問になります。フジテレビの鹿嶋さん、どうぞ」と指名した。
すべて、台本があるのだ。
まだ多くの記者が挙手している中、小野氏は58分で打ち切った。
◎ 官邸での首相会見が昨年4月17日から、29人に制限されている。
内閣記者会常勤幹事社19社から各1人、記者会非常勤幹事社・専門紙・雑誌・ネット・外国メディア・フリーランスから各1~2人を抽選で選んでいる。
日本の首相の記者会見が「国際標準の記者会見」になっていないのは、日本にしかない「記者クラブ」(海外ではkisha kurabuと訳されるので、私は「キシャクラブ」と呼ぶ)制度があるからだ。
月刊「創」6月号に、菅首相の米国での共同会見でのロイター記者の質問無視などについて書いたが、菅流の会見は海外にはない。
「キシャクラブ」問題についてはフェイスブック(FB)に投稿しているので、参照してほしい。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173
◆ 官僚用意の問答集を棒読みする菅会見は世界の恥
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◆ コロナ人災、無策無能で緊急宣言をまた延長
◎ 菅義偉首相が「17日間の短期集中」と明言していた3度目の緊急事態宣言が予想どおり延長になった。政府は5月7日、4都府県に出されている同宣言を5月31日まで延長すると決定。首相は同日午後7時から官邸で記者会見を開いた。
就任以来、官邸での会見は11回目だが、いつも以上に、声に力がない。滑舌が悪いので聞き取れない。「ワクチンの治験」が「ワクチンの危険」と聞こえる。プロンプターがあるが、うまく使えない。
「東京五輪を開けるのか」という質問にまともな回答はなかった。
「人流を抑える」という行政の長が100人近い随行員を引き連れて訪米し、五輪を強行開催では、民衆が政府の自粛要請に応じるはずがない。
質疑応答では今回も、フリーランス枠の記者以外は質問事項を事前に提出しているようで、首相は質問の時から机上の台本に目を落とし、回答は紙を読んでいる。
インドなどからの水際対策を聞かれ、「ゲノム解析のサーベイランスに重点を置く」などと答えたが、「サーベイランス」がなかなか言えない。カタカナで言う必要があるのかと思う。
産経新聞の杉本記者は「現行憲法下においても、政府は国民の私権を制限する感染対策を行っている。緊急事態条項がなければ採れない対策は、具体的に言うとどういうものか」と聞いた。
首相は5月3日の日本会議系集会で、自民党憲法改定案にある緊急事態条項とコロナ禍を結び付けた発言をしており、御用新聞による完璧なサクラ質問だった。
菅首相は「(憲法には)今、参議院の緊急集会しかない。コロナの感染が拡大する中で、海外の国を見ると強制的な執行を私権制限がない中でできている。緊急事態への国民の関心は高まっていると思う」と回答した。
「例えばワクチンの治験についても、国内治験というものも求められ、3~4か月ぐらいは掛かるので、接種も遅れてしまうなどの問題がある。感染症を考えた時、落ち着いたら検証し、対策を考える」と答えた。
しどろもどろの回答で、憲法に緊急事態条項を新設しなければできないコロナ対策など、何もないことを自白してしまった。
◆ 東京新聞記者の「会見改革」要請を無視した菅首相
◎ 菅首相は会見の冒頭、宣言の延長について「深くおわびを申し上げる」と3秒、軽く頭を下げて陳謝したが、空々しい。その後、「東京や大阪の人流が減少している」と言い張り、「1日100万回のワクチン接種」と大風呂敷を広げた。
菅首相がワクチン問題で、「訪米の際、ファイザー社のCEOと協議した」と二度述べたが、これは不正確だ。首相側はファイザー社トップとの面談を画策したが断られ、電話での要請になった。電話なら、日本からでももっと早く要請できたはずだ。
今回の質疑応答も緊張感がなかったが、菅首相が無視した質問があった。
内閣記者会の幹事社(常勤19社の持ち回り、2カ月交代)である東京新聞の清水俊介記者は、「そもそも短期集中という設定は正しかったのか。宣言解除の判断基準を明示すべきだ」と質問。
清水記者はその後、「この会見はひとり1問が原則だが、国民の疑問に応える有意義な質疑になるよう、各社から再質問が上がった場合、その再質問にも応じてもらいたい」と述べた。
菅首相は解除の基準について回答せず、会見のあり方に関する要望について何も答えなかった。小野日子内閣広報官も無視した。
◆ 「内閣記者会主催」なのに広報官が仕切る前例踏襲
◎ 安倍前首相時代から首相会見では、質問は1人1問とされ、「更問い」(さらとい)ができなくなっている。
ネットのBuzzFeed Japanの<菅首相が会見で「無視」した記者の言葉>(7日)は<記者会見は首相官邸記者クラブ「内閣記者会」の主催。つまり本来は司会も報道側で行うのが筋だが、官邸側が司会するのが常となっている>と書いた。
<スタンドマイクの前に立って質問をする必要がある。以前は自席から質問をするスタイルだったが、昨年4月の前首相の会見から、このやり方となった。今年1月4日の菅首相の会見では、ここに「自席からの追加質問はお控えいただきたい」との言葉が加わった>
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c3248a60cb93c0d4cfa04d6052ca595c06b0a4d
◎ 8日の東京新聞は<会見に先立ち、本紙を含む内閣記者会の一部加盟社は、回答が不十分だったりした場合は再質問を認めるよう、小野広報官に要望していた><この日も、会見の開始前に事務方が注意事項として「追加質問はお控えください」と述べていた>と書いた。なぜ、内閣記者会の総意として要求しないのか。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102841
清水記者の質問の後、もう一つの幹事社、共同通信の吉浦記者が五輪開催について質問。
小野氏は「幹事社以外の質問」に移り、14人が指名された。
最初は「毎日新聞の小山さん」。次に「TBS後藤さん」。
参加者が挙手する前に、社名と名前(姓)を言って指名している。
小野氏は「ラジオ日本の伊藤さん」「それでは、2番目の列で、京都新聞、国貞さん。どうぞ」などと質問者を指名した。
「それでは、奥のフリーランスの安積さん、どうぞ」と指名された安積明子氏は「インド在住の邦人を領事館でPCR検査すべきでは」と質した。
菅首相がまともに答えなかったため、自席から「PCRについては」と声を上げた。首相は「PCR(検査)の場所を領事館で紹介している」と答えた。
その後、「それでは、前列に戻ります。日本経済新聞の重田さん」などと次々と指名。「それでは、あと2問とさせていただきます。それでは、真ん中の列、読売新聞、黒見さん、どうぞ」「最後の質問になります。フジテレビの鹿嶋さん、どうぞ」と指名した。
すべて、台本があるのだ。
まだ多くの記者が挙手している中、小野氏は58分で打ち切った。
◎ 官邸での首相会見が昨年4月17日から、29人に制限されている。
内閣記者会常勤幹事社19社から各1人、記者会非常勤幹事社・専門紙・雑誌・ネット・外国メディア・フリーランスから各1~2人を抽選で選んでいる。
日本の首相の記者会見が「国際標準の記者会見」になっていないのは、日本にしかない「記者クラブ」(海外ではkisha kurabuと訳されるので、私は「キシャクラブ」と呼ぶ)制度があるからだ。
月刊「創」6月号に、菅首相の米国での共同会見でのロイター記者の質問無視などについて書いたが、菅流の会見は海外にはない。
「キシャクラブ」問題についてはフェイスブック(FB)に投稿しているので、参照してほしい。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173
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