パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「10・23通達」が国際社会で注目(3)

2018年02月19日 | 人権

  《リベルテから》
 ★ 国際人権と「日の丸・君が代」強制問題

国際人権プロジェクトチーム 花輪紅一郎


 (1)国際人権文書に「10・23通達」という言葉が載った


 ①自由権規約審査での大きな前進

 人類普遍の原理である「人権」の国際標準を、法的拘束力のある条約として定めたのが『自由権規約』(1966)です。締約国は、遵守義務を負うと同時に、定期的に国内の人権実現状況を国連に報告して審査を受けなければなりません。
 日本は1979年に批准して、今回で7回目の審査になりますが、それに先立ち30項目の事前質問(リスト・オブ・イシュー)が、自由権規約委員会から日本政府に示されました(2017年11月24日)。その中に2項目「『日の丸・君が代』強制問題」に関する質問がありました。国際人権の文書で「10・23通達」という単語が使われたのは初めてです。問題の所在が極めて明瞭になりました。
 私たちが、第7回日本政府報告審査のリスト・オブ・イシュー採択に向けて、NGOレポートをジュネーブに送ったことは、『リベルテ48号』でお知らせした通りです。和文レポート全文(A4・1枚裏表)も折り込みました。
 その中で私たちが訴えたことは、

2003年の「10・23通達」以来毎年不服従者は絶えることなく被処分者数は累計480名に達した、
被処分者には「再発防止研修」で思想改変が強要され人権侵害は現在も進行中である、
都教委は教員への強制を通して生徒への強制圧力を強めている、
一般市民の抗議の呼びかけが「公共の福祉」で制限され刑事罰を科されたことで萎縮効果が高まっている、

 などでした。
 それから3ヶ月、11月24日付で発表された30項目の課題リストの中に、私たちが申し立てたテーマに関する「課題」が2項目取り上げられていたのです。


 ②国連から都教委につきつけられた質問
 「『日の丸・君が代』強制問題」に関わる事前質問は、2つです。(国際PT仮訳)

 【パラグラフ23】
 「前回の総括所見(パラ22)に関連して、「公共の福祉」というあいまいで無制限な概念を明確化し、自由権規約18条および19条それぞれの第3項が許容する限定的な制約を超えて、思想、良心、および宗教の自由、または表現の自由への権利を制約することがない事を確保するために講じられた対策について、ご報告願いたい。」
 (このパラグラフでは、人権制約概念としての「公共の福祉」に、具体的改善策が求められています。)
 【パラグラフ26】
 「2003年に東京都教育委員会によって発出された10・23通達を教員や生徒に対して実施するためにとられた措置の自由権規約との適合性に関して、儀式において生徒を起立させるために物理的な力が用いられており、また教員に対しては経済的制裁が加えられているという申し立てを含めて、ご説明願いたい。」
 (このパラグラフでは、「10・23通達」の自由権規約適合性が問われています。)

 a,「公共の福祉」問題とは?
 日本では「公共の福祉」が人権制約概念としてしばしば使われてきました。第6回政府報告書では、板橋高校卒業式事件最高裁判決が、「表現の自由」を「公共の福祉」で制限した適切な例として引用されました。
 それに対し自由権規約委員会の立場は、規約19条(表現の自由)で人権制約が許容されるのは、第3項に明記された「限定的な制約」だけで、「公共の福祉」はそれに該当しないというものです。
 この問題は、第3回報告から4回連続で規約違反の懸念と改善の勧告とが示され続けてきている積年の懸案事項です。今回こそ政府は、口先の説明ではない、具体的対策を示すことが迫られています。

 b,「10・23通達」問題とは?
 2003年都教委は、卒入学式で教職員に国旗掲揚国歌斉唱を服務として命じる「10・23通達」を発し、従わない教職員に懲戒処分を科し続けて来ました。
 自由権規約18条(思想・良心・宗教の自由)2項には「何人も、自ら選択する宗教または信念を受け入れまたは有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない」とあります。
 果たして都教委の施策は、思想・良心・宗教の自由の侵害に当たらないのか、今回直接問われることになりました。都教委・文科省は、国際人権標準に則った回答を迫られています。

 ③国際人権PTの国連への働きかけの歩み
 すすめる会の「国際人権プロジェクトチーム」による国連への働きかけは、2008年第5回自由権規約委員会日本報告審査に遡ります。
 2010年には「子どもの権利条約」審査に、2012年には「社会権規約」審査に、各々レポートを提出してきましたが、その後は「自由権規約」に絞り、第6回審査では2013年の予備審査と2014年の本審査の両方にレポートを出しジュネーブにも渡って直接訴えてきました。
 
その結果、前回第6回審査では、予備審査の段階でリスト・オブ・イシューに取り上げられ、日本政府は「2011年再雇用1次最高裁判決文」を引用してかなり苦しい回答せざるを得ませんでした。
 そのやりとりを受けて本審査後の「最終見解」では、パラグラフ22に、「『公共の福祉』を理由とした基本的自由の制約」問題として取り上げられることになりました。この辺りのいきさつは、『リベルテ37号』(2014年11月)に「パラ22全文」を添えて報告させていただいた通りです。
 しかし、パラ22の文章中に「『日の丸・君が代』強制問題」であることを特定する文言がなかったため、国内関係機関にこの勧告の即時執行を迫っても、この勧告は「一般論・抽象論にすぎない」との言い逃れを許してきてしまいました。
 そこに今回の「10・23通達」を明記してのリスト・オブ・イシューです。今度こそ都教委も政府も言い逃れは出来ません。政府は1年以内に回答をしなければなりません。世界が政府回答に注目しています。

 (2)12・10国連人権勧告実現集会に参加して
 「条約」には遵守義務がありますが、政府はわざわざ「勧告」には「法的拘束力がない」と勧告を無視する閣議決定を行いました(2013)。それに対して、市民・NGOグループが、毎年人権週間に勧告の即時実行を求める集会を行っています。
 今年は、12月10日(土)午後、青山学院大学本多記念国際会議場に約200人を集めて行われました。記念講演は、ジュネーブの国連人権理事会に50回以上通っている前田朗東京造形大学教授。国連人権機関の仕組みとこれまでのNGOの活動実績の全体像の解説がありました。国連で活動するNGOの最初の目標は国際会議の場で発言の機会を得ること、次は訴えが勧告として取り上げられること、そして今日的課題はその勧告を国内でいかに実現させるかと前進してきています。
 集会後、国連大学前~表参道~原宿のイルミネーションの中をデモ行進しました。外国人も多い街並みで時に英語による「私たちは国連人権勧告を実現させたいという願いで集まったグループです」との呼びかけを交えながら、たくさんの幟旗を掲げてのデモ行進には沿道から注目が集まりました。すすめる会の仲間も10数人が参加しました。

『リベルテ 東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース 50号』(2018/1/27)

コメント    この記事についてブログを書く
« アベを倒そう!(351)<モリ... | トップ | 「昭和財政史終戦から講和ま... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人権」カテゴリの最新記事