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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 「夫は法に守られず、佐川さんは法に守られた」(赤木雅子さん)

2022年12月30日 | 平和憲法

  《月刊救援「人権とメディア」》
 ☆ 赤木雅子氏の請求を却下した大阪地裁裁判官の大問題

浅野健一

 この判決言い渡しは自分の目で見ておきたいと思って、一一月二五日午後一時から、大阪地裁で傍聴券を求めて並んだ。
 森友学園・安倍晋三記念小學院(安倍昭恵名誉校長)をめぐる文書改竄を強制され自死した赤木俊夫氏の妻、赤木雅子氏が当時の財務省理財局長の佐川宣寿氏に一六五〇万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(中尾彰裁判長、神永暁右陪席裁判官、籔野拓輝左陪席裁判官)は一一月二五日、佐川氏個人の賠償責任を否定し、請求を棄却した。
 佐川氏が改竄の方向性を決定付けたとする財務省調査報告書を踏まえ、改竄指示行為全般の責任を免れないと指摘したが、自死との因果関係には触れなかった

 雅子氏は二〇年三月、国と佐川氏を提訴。国側は昨年六月、俊夫氏が改竄の経緯を記録した「赤木ファイル」を開示し、原告側が佐川氏らの証人調べを申請した直後の昨年一二月約一億円の賠償請求を受け入れる「認諾」という「卑劣な行為」(松丸正弁護士)で裁判を終結させた。

 佐川氏との訴訟だけが続いていた。
 地裁は佐川氏らの尋問を「実施せずとも判断は可能」として一切認めず、結審を強行した。佐川氏は、公務員が職務で損害を与えた時は国が賠償責任を負うと主張していた。裁判官は、安倍夫妻を守るための公文書改竄作業を「公務員の職務」と認定した

 原告の雅子氏は、夫の死を招いた張本人である佐川氏が姿を隠し、謝罪もせず沈黙していることも問題にしており、裁判所が慰謝料を認めるかに関心があったが、中尾裁判長は「道義上の責任はともかく、被告に賠償責任がない以上、改ざんを指示した行為について説明・謝罪する法的義務も発生しない」と退けた。冷酷な判決だ。
 雅子氏は改竄の苦しみを綴った夫の手記を法廷に持ち込んだ。
 一方、被告の佐川氏はおろか菅弘一弁護士ら代理人弁護士(五人)も姿を見せなかった。

 雅子氏は閉廷後、記者団に「こんなにばっさり切られるなんて残念でならない」「夫は法に守られず、佐川さんは法に守られた」と述べた。
 「真実が知りたくて裁判を起こした。でも、改ざんの経緯について一言も知ることができなかった。改竄は、安倍元首相の国会での発言がきっかけだ。そのきっかけを作ったのは昭恵さんなので、絶対に知っていることを、私に伝えるべきだと思う

 雅子氏の「犯罪行為をしても組織や法律に守られ理不尽だ」との指摘は、国家命令ならどんな悪事も免責される社会への痛烈な批判だ。
 安倍首相「私、妻、事務所が関与していれば総理、議員を辞める」と国会答弁したのは一七年二月一七日。菅義偉官房長官は二二日、佐川、中村両氏、太田充審議官を官邸に集め会議を開いている。
 俊夫氏は二六日、上司から改竄を命じられた。菅氏が安倍夫妻のために改竄を指揮したと私は確信している。

 判決公判の法廷は九六席ある。傍聴希望者は一〇五人で六一人が当選したが、私は外れだった
 記者席は三十席で、司法記者クラブが独占した。記者席で取材した共同通信記者は、私の同志社大学での最後の一年生ゼミの共同研究委員長、須賀達也氏だった。
 私が一七年三月、安倍記念小の現場を訪ね、国有地払い下げ聞題を最初に追及した木村真豊中市議に取材した時、当時四年生だった須賀氏が助手を務めてくれた。あれから五年半だ。

 私は法廷の前の廊下で判決を見守った。
 閉廷後、冤罪・東住吉事件で国賠訴訟を闘う青木恵子氏が傍聴を終えて出てきた。青木氏は雅子氏と共著のある元NHK記者の相澤冬樹氏に判決の問題点を聞いていた。

 私は雅子氏への手紙を相澤氏に託していたが、「雅子さんを紹介する」と言われ、近くの生越照幸弁護士の事務所に移動した。そこで、ずっと会いたかった雅子氏に初めて会えた
 「遺族の方が裁判を起こして、真相を解明してほしいと思い、関西の弁護士に働きかけ、岡山県に住む俊夫さんのお父さんに会いに行った」と話した。

 雅子氏は、唯気式喉頭で話す私の言葉をよく聞いてくれた。「私の父はもう亡くなったが、喉頭がんを患った。声が出ないと大変なことはよくわかる」と励ましてくれた。
 
 雅子氏は二六日のTBS「報道特集」の〈“2000日の闘い”「真実が知りたい」〉に生出演した。
 金平茂紀キャスターらは俊夫氏に改竄を強いた当時の田村嘉啓・元財務省国有財産室長(現在、財務省東北財務局理財部長)と中村稔・元財務省総務課長(在英国大使館公使などを経て国税庁長官官房審議官=国際担当)に取材した。二人は「財務省広報がすべて対応する」などと回答を拒んだ。
 金平氏

 「“赤木ファイル”に出てくる上司はみんな出世している。俊夫さんがうつ病で苦しんでいるときの映像を観ていて、なんという対比だ」

 とコメント。
 雅子氏

「夫も三〇年、公務員として働いてきた中で、改竄という犯罪行為を指示され、やってしまった。最後は職場に一人だけ残されて異動もできずに、うつ病を発症した。その人たちは出世して嬉しいのかなとも思うし、悔しい気持ちでいっぱいだ」

 雅子氏は

「その人たちが一人でもいいから本当のことを話してほしい

 と答えた。
 雅子氏は、不当判決に抗い、高裁で闘いを続ける。みんなで支援したい。

『月刊救援』(2022年12月10日)

 


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