■「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」傍聴記 2006/12/22
<安部晋三首相と自由民主党を提訴した本人訴訟>
杉並区で「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)の教科書が採択されたことに対し、地元住民らが、教育基本法10条(筆者注:教基法10条「教育は不当な支配に服することなく……」)に違反したとして、安倍晋三首相(提訴時は内閣官房長官)と自由民主党を提訴した民事訴訟(「平成18年(ワ)第20396号損害賠償等」、原告側は「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」と呼称)の第1回口頭弁論が、12月15日(金)午後1時30分より東京地方裁判所で行われました。
昨年、杉並区では、区が「つくる会」が執筆した教科書の導入を採択したことに反対する市民らによる運動が起こりました。杉並区の「つくる会」教科書採択反対運動は、テレビでも放映されたので、裁判に対する関心が高いのではないかと思い、早めに裁判所に行きました。
しかし、予想していたような混雑はなく、傍聴人は裁判開始後に入ってきた人も含め23名でした。ただ、同じように「つくる会」教科書採択取り消しの裁判を行っている愛媛や栃木などの関係者たちも傍聴にきていて、この裁判が全国的な広がりをもっている裁判であることがわかりました。
裁判がはじまる前、原告代表の女性が、「法廷の前の掲示板に書いてある被告が自由民主党となっているので、安倍晋三の名前も入れてください」と抗議をしていました。また、裁判所の作った書類に入力ミスがあったらしく、名前を間違って書かれた原告の女性が注意をすると、裁判所の係りの若い男性が「すいません」と謝っていました。「この前も字が違ってましたよ」と言われ、男性が「パソコンで出なかったものですから……」と弁明すると、「私たちが間違ったら、ハンコやらなにやら大変なのに」と言うと、「直してきます」と言いながら向こうに行きました。
原告は、女性5人、男性1人の計6人です。今回は、弁護士のいない本人訴訟なので、裁判長に裁判のやり方を教わりながら審議を進めていく形式でした。原告の率直な質問や要望に対し、裁判長が<女性パワー>に押され気味ながら、最後まで原則論で答えているのが、まったく議論がかみ合っていない感じで、笑いを誘いました。ふつうの裁判とはかなり趣を異にした裁判の光景であるとの印象を持ちました。
傍聴席の正面のドアが開いて法廷に入ってきたときから裁判長はひどく緊張した感じでした。席に着くと同時に相手のペースに引きずられまいとするように、被告は出廷していないことを告げたあと、「まず、断っておきたいのですが」と言いながら、民事訴訟における口頭弁論の在り方について説明をしました。
それによると、裁判で議論を詰めていくのはもちろん大事だが、書面が重要であり、書面を尊重すること、それは裁判所が年間2万件以上の裁判を50部(筆者注:東京地裁の民事部は50部)で行っているため、一つひとつの裁判に時間をかけることができないためであること。そして議論があるのは承知しているが、どの裁判も重要なので、迅速且つ適正な判決をしなければならない、と裁判所の実情を説明し、協力を求めました。
さらに「今日は原告に10分間の時間を与えることができるが、今後はそれができるかどうかわからない」と述べ、口頭弁論では主に書面の確認と補充といったことのやり取りになることを理解してほしい、と重ねて協力を求めました。
それに対し、原告代表は裁判に臨む思いを「教育基本法改正案が参院で強行採決されるかもしれないという今日(筆者注:この裁判が行われた12月15日夜、教育基本法改正案が成立した)、安倍首相を訴える裁判の第1回目が開かれたことにめぐり合わせを感じます。一期一会の機会。裁判官は法衣をまとった国家のロボットでなく、事実に基づいた公正な裁判をしてほしい」と語り、教科書採択に対する安倍首相らの介入は一市民として許せないとの思いから裁判を起こすに至ったと、訴訟の理由を述べました。
原告は「弁護士もいない、生まれてはじめての裁判なので、いろいろ教えてください」とお願いをしたあと、「対等な人間として裁判長と呼ばず、『さん』付けで呼びたいので、名前を教えてください」と続けると、裁判長は「(名前は)入口の掲示板に書いてあります」と答え、「3人のだれがだれだかわからない」と重ねて尋ねると、「掲示板に書いてあります」と答えながらも、裁判長が3人の裁判官の名前を教えました。裁判官を名前で呼んでもいいかという質問に対し、「慣例に従って(裁判長と呼んで)もらっている」と裁判長が答え、「それでは松井裁判長(筆者注:裁判長の名前は松井英隆さん)と呼びます」と原告が応じ、次に意見陳述に進みました。
原告代表が「素人が国家の中枢である安倍首相と自由民主党を訴えた裁判なので、口頭で言わせてほしい」と要望を述べ、「この裁判の録音テープを公開することはできますか?」と尋ねると、裁判長は「録音テープについてはできない」と答えました。原告側が重ねて「(裁判所では)録音テープはとっているのか」と聞くと、「とっていない」と答えました。
原告の「(この裁判の)中身の記録は残らないのか」という質問に対しては、「書記官が必要な部分については記録をしている」と述べました。それに対し、原告代表が「どの部分をメモしてどの部分をメモしないのか、それは書記官の判断によるのか」と尋ねると、裁判長は「そうだ」と答え、「それではこの裁判で話し合われたことが全部記録として残らない」と言うと、裁判長は「裁判所としては適切に対応している」として、原告に理解を求めました。
さらに、原告代表が「そちらの事情もわかるが、こちらの意見として口頭で述べたい」との主張を繰り返した上で、「50代、60代、70代の親たちは、みんな戦争は真っ平だと言っている。安部がやろうとしていることは、20にもならない若者たちに戦争に行けと教えることだ。これは松井裁判長も同じ思いをもっているはずだ。戦争はもうコリゴリだという親の思いを受け継いだものとして、次の人たちにバトンタッチをしていきたい。拙い陳述書で訴えたいことはそのことだ」と述べ、裁判を起こした理由について明らかにしました。
ほかの原告も録音テープをとってほしいと訴えましたが、裁判長は、逐一の微妙な発言が記録として残されるような仕組みになっていないこと、基本は書面であり、書面を中心として進めてもらいたい、と原告に理解を求めました。それに対し、原告側は「国民は裁判を受ける権利がある。憲法で保障されている」として口頭での裁判を重ねて主張しましたが、受け入れられませんでした。
原告側は、裁判の速記録もないことに対し、「書記の人の判断でメモをとっているということだが、それだと正確な記録として残らない」と主張し、録音テープをとることを要望しましたが、「許可していない」として退けられました。さらに、原告側から裁判の進め方についての要望がありましたが、裁判長に「慣例に従ってほしい」として退けられました。
原告代表は、被告ら(安倍首相と自由民主党)に対し、損害賠償としてそれぞれに1,000円ずつ支払うことや、謝罪広告を載せることなど、4つの要求を読み上げたあと、意見陳述を行いました。
原告の意見陳述
「昨年8月、安部および自由民主党が(教育における不当な介入を禁じている)教育基本法10条に違反し、杉並区において『つくる会』の教科書を採択しました。安倍は内閣総理大臣として憲法遵守の義務があるにもかかわらず、憲法違反を行っています。(略)
国民の多くは教育基本法改正案に対し、慎重審議を求めています。安倍はやらせタウンミーティングなどで世論を誘導し、成立させようとしています。これは国民を愚弄するものです。政府の改正案は国家主義を目的にしたものであり、日本は同じ道を後戻りしています。つくる会の教科書はその前倒しです。安倍は政治介入し、子どもや教育から自由を奪い、国のために喜んで命を捨てる子を作ろうとしています。
戦争は金儲けのために行われるものです。人間の形をした悪魔のために殺される。弁護士のいない本人訴訟ですが、安倍と自由民主党を訴え、1人の大人として、日本の子どもと外国の子どもを守りたい一心で裁判を起こしました。庶民の必死の思いを汲み取ってほしい。人間には、人間としての尊厳と誇りが……」と述べたあと、思いがあふれて言葉にならないといった感じで絶句すると、傍聴席から拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手はやめてください」と傍聴席に注意をしました。
あとを引き継いで、原告代表の隣に座っていた原告の女性が意見陳述を続けました。
「国のために死ねと言われた親や祖父母は、平和を祈っています。政治家も後藤田さんや野中さんなど戦争体験者は戦争に反対し、改憲に反対しています。経済界の品川正治さんも、戦争だけは絶対やってはいけないと言っている。いまならまだとめることができます。その力が裁判所にはある。大人一人ひとりが誇りと人間の尊厳をもって、裁判所が良心と良識をもって憲法遵守の裁判を行ってほしい」と読み上げると、傍聴席からまた拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手をすれば退廷してもらいます」と注意しました。
次いで、後ろの列に座っていた原告の女性が立ち上がり、意見陳述をしました。「1人の人間として訴えたい」との思いを伝えながら、3人の裁判官を名前で呼び、「客観的、科学的、中立的な立場で裁判を行ってほしい」との要望を述べた上で、「つくる会の教科書は自国への愛と誇りに満ち溢れているが、自国への愛の前に過去の真実を見る態度として適切か」と問いかけました。
つづいて「真実を求めるのが人間。過去と向き合い、真実と……」というところで、裁判長が「時間がありません。あと1分ほどです」と制限時間を告げると、少し早口になって「安倍はどうか。安倍は好きなように変えている。規則がやすやすと変えられる現状。たやすく……」というところで、また裁判長が「あと10秒」と告げ、さらに言葉を続けようとする原告を遮って「そこまで」と制限時間が切れたことを告げました。
傍聴席から拍手が起こると、「やめてください」と裁判長が注意し、ほかの原告が「あと30秒」と発言を求めると、「やめてください」と裁判長がやや強い口調で発言を制しました。さらに発言を求める原告とのやりとりがあったあと、裁判所の指示に従わない場合は訴訟法に則って退廷してもらいますと裁判長が言い、原告はあきらめてそれ以上の発言はしませんでした。
最後に、裁判長が訴状について不明な点があるとし、被告によるどのような不法行為があったのか、具体的に記した書面を提出してほしいと述べ、原告が1月末までに裁判所に提出することで合意しました。また、裁判長は、民事訴訟における口頭弁論は一方的に意見を述べる場ではないとして、原告に理解と協力を求めました。
次回の裁判は、2月16日(金)13時15分より、東京地裁527号法廷で行われる予定とのことです。
裁判が終わったあと、別室で原告と傍聴人の交流会がありました。(以下略)
(ひらのゆきこ)
『市民メディア・インターネット新聞JANJAN』
<安部晋三首相と自由民主党を提訴した本人訴訟>
杉並区で「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)の教科書が採択されたことに対し、地元住民らが、教育基本法10条(筆者注:教基法10条「教育は不当な支配に服することなく……」)に違反したとして、安倍晋三首相(提訴時は内閣官房長官)と自由民主党を提訴した民事訴訟(「平成18年(ワ)第20396号損害賠償等」、原告側は「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」と呼称)の第1回口頭弁論が、12月15日(金)午後1時30分より東京地方裁判所で行われました。
昨年、杉並区では、区が「つくる会」が執筆した教科書の導入を採択したことに反対する市民らによる運動が起こりました。杉並区の「つくる会」教科書採択反対運動は、テレビでも放映されたので、裁判に対する関心が高いのではないかと思い、早めに裁判所に行きました。
しかし、予想していたような混雑はなく、傍聴人は裁判開始後に入ってきた人も含め23名でした。ただ、同じように「つくる会」教科書採択取り消しの裁判を行っている愛媛や栃木などの関係者たちも傍聴にきていて、この裁判が全国的な広がりをもっている裁判であることがわかりました。
裁判がはじまる前、原告代表の女性が、「法廷の前の掲示板に書いてある被告が自由民主党となっているので、安倍晋三の名前も入れてください」と抗議をしていました。また、裁判所の作った書類に入力ミスがあったらしく、名前を間違って書かれた原告の女性が注意をすると、裁判所の係りの若い男性が「すいません」と謝っていました。「この前も字が違ってましたよ」と言われ、男性が「パソコンで出なかったものですから……」と弁明すると、「私たちが間違ったら、ハンコやらなにやら大変なのに」と言うと、「直してきます」と言いながら向こうに行きました。
原告は、女性5人、男性1人の計6人です。今回は、弁護士のいない本人訴訟なので、裁判長に裁判のやり方を教わりながら審議を進めていく形式でした。原告の率直な質問や要望に対し、裁判長が<女性パワー>に押され気味ながら、最後まで原則論で答えているのが、まったく議論がかみ合っていない感じで、笑いを誘いました。ふつうの裁判とはかなり趣を異にした裁判の光景であるとの印象を持ちました。
傍聴席の正面のドアが開いて法廷に入ってきたときから裁判長はひどく緊張した感じでした。席に着くと同時に相手のペースに引きずられまいとするように、被告は出廷していないことを告げたあと、「まず、断っておきたいのですが」と言いながら、民事訴訟における口頭弁論の在り方について説明をしました。
それによると、裁判で議論を詰めていくのはもちろん大事だが、書面が重要であり、書面を尊重すること、それは裁判所が年間2万件以上の裁判を50部(筆者注:東京地裁の民事部は50部)で行っているため、一つひとつの裁判に時間をかけることができないためであること。そして議論があるのは承知しているが、どの裁判も重要なので、迅速且つ適正な判決をしなければならない、と裁判所の実情を説明し、協力を求めました。
さらに「今日は原告に10分間の時間を与えることができるが、今後はそれができるかどうかわからない」と述べ、口頭弁論では主に書面の確認と補充といったことのやり取りになることを理解してほしい、と重ねて協力を求めました。
それに対し、原告代表は裁判に臨む思いを「教育基本法改正案が参院で強行採決されるかもしれないという今日(筆者注:この裁判が行われた12月15日夜、教育基本法改正案が成立した)、安倍首相を訴える裁判の第1回目が開かれたことにめぐり合わせを感じます。一期一会の機会。裁判官は法衣をまとった国家のロボットでなく、事実に基づいた公正な裁判をしてほしい」と語り、教科書採択に対する安倍首相らの介入は一市民として許せないとの思いから裁判を起こすに至ったと、訴訟の理由を述べました。
原告は「弁護士もいない、生まれてはじめての裁判なので、いろいろ教えてください」とお願いをしたあと、「対等な人間として裁判長と呼ばず、『さん』付けで呼びたいので、名前を教えてください」と続けると、裁判長は「(名前は)入口の掲示板に書いてあります」と答え、「3人のだれがだれだかわからない」と重ねて尋ねると、「掲示板に書いてあります」と答えながらも、裁判長が3人の裁判官の名前を教えました。裁判官を名前で呼んでもいいかという質問に対し、「慣例に従って(裁判長と呼んで)もらっている」と裁判長が答え、「それでは松井裁判長(筆者注:裁判長の名前は松井英隆さん)と呼びます」と原告が応じ、次に意見陳述に進みました。
原告代表が「素人が国家の中枢である安倍首相と自由民主党を訴えた裁判なので、口頭で言わせてほしい」と要望を述べ、「この裁判の録音テープを公開することはできますか?」と尋ねると、裁判長は「録音テープについてはできない」と答えました。原告側が重ねて「(裁判所では)録音テープはとっているのか」と聞くと、「とっていない」と答えました。
原告の「(この裁判の)中身の記録は残らないのか」という質問に対しては、「書記官が必要な部分については記録をしている」と述べました。それに対し、原告代表が「どの部分をメモしてどの部分をメモしないのか、それは書記官の判断によるのか」と尋ねると、裁判長は「そうだ」と答え、「それではこの裁判で話し合われたことが全部記録として残らない」と言うと、裁判長は「裁判所としては適切に対応している」として、原告に理解を求めました。
さらに、原告代表が「そちらの事情もわかるが、こちらの意見として口頭で述べたい」との主張を繰り返した上で、「50代、60代、70代の親たちは、みんな戦争は真っ平だと言っている。安部がやろうとしていることは、20にもならない若者たちに戦争に行けと教えることだ。これは松井裁判長も同じ思いをもっているはずだ。戦争はもうコリゴリだという親の思いを受け継いだものとして、次の人たちにバトンタッチをしていきたい。拙い陳述書で訴えたいことはそのことだ」と述べ、裁判を起こした理由について明らかにしました。
ほかの原告も録音テープをとってほしいと訴えましたが、裁判長は、逐一の微妙な発言が記録として残されるような仕組みになっていないこと、基本は書面であり、書面を中心として進めてもらいたい、と原告に理解を求めました。それに対し、原告側は「国民は裁判を受ける権利がある。憲法で保障されている」として口頭での裁判を重ねて主張しましたが、受け入れられませんでした。
原告側は、裁判の速記録もないことに対し、「書記の人の判断でメモをとっているということだが、それだと正確な記録として残らない」と主張し、録音テープをとることを要望しましたが、「許可していない」として退けられました。さらに、原告側から裁判の進め方についての要望がありましたが、裁判長に「慣例に従ってほしい」として退けられました。
原告代表は、被告ら(安倍首相と自由民主党)に対し、損害賠償としてそれぞれに1,000円ずつ支払うことや、謝罪広告を載せることなど、4つの要求を読み上げたあと、意見陳述を行いました。
原告の意見陳述
「昨年8月、安部および自由民主党が(教育における不当な介入を禁じている)教育基本法10条に違反し、杉並区において『つくる会』の教科書を採択しました。安倍は内閣総理大臣として憲法遵守の義務があるにもかかわらず、憲法違反を行っています。(略)
国民の多くは教育基本法改正案に対し、慎重審議を求めています。安倍はやらせタウンミーティングなどで世論を誘導し、成立させようとしています。これは国民を愚弄するものです。政府の改正案は国家主義を目的にしたものであり、日本は同じ道を後戻りしています。つくる会の教科書はその前倒しです。安倍は政治介入し、子どもや教育から自由を奪い、国のために喜んで命を捨てる子を作ろうとしています。
戦争は金儲けのために行われるものです。人間の形をした悪魔のために殺される。弁護士のいない本人訴訟ですが、安倍と自由民主党を訴え、1人の大人として、日本の子どもと外国の子どもを守りたい一心で裁判を起こしました。庶民の必死の思いを汲み取ってほしい。人間には、人間としての尊厳と誇りが……」と述べたあと、思いがあふれて言葉にならないといった感じで絶句すると、傍聴席から拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手はやめてください」と傍聴席に注意をしました。
あとを引き継いで、原告代表の隣に座っていた原告の女性が意見陳述を続けました。
「国のために死ねと言われた親や祖父母は、平和を祈っています。政治家も後藤田さんや野中さんなど戦争体験者は戦争に反対し、改憲に反対しています。経済界の品川正治さんも、戦争だけは絶対やってはいけないと言っている。いまならまだとめることができます。その力が裁判所にはある。大人一人ひとりが誇りと人間の尊厳をもって、裁判所が良心と良識をもって憲法遵守の裁判を行ってほしい」と読み上げると、傍聴席からまた拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手をすれば退廷してもらいます」と注意しました。
次いで、後ろの列に座っていた原告の女性が立ち上がり、意見陳述をしました。「1人の人間として訴えたい」との思いを伝えながら、3人の裁判官を名前で呼び、「客観的、科学的、中立的な立場で裁判を行ってほしい」との要望を述べた上で、「つくる会の教科書は自国への愛と誇りに満ち溢れているが、自国への愛の前に過去の真実を見る態度として適切か」と問いかけました。
つづいて「真実を求めるのが人間。過去と向き合い、真実と……」というところで、裁判長が「時間がありません。あと1分ほどです」と制限時間を告げると、少し早口になって「安倍はどうか。安倍は好きなように変えている。規則がやすやすと変えられる現状。たやすく……」というところで、また裁判長が「あと10秒」と告げ、さらに言葉を続けようとする原告を遮って「そこまで」と制限時間が切れたことを告げました。
傍聴席から拍手が起こると、「やめてください」と裁判長が注意し、ほかの原告が「あと30秒」と発言を求めると、「やめてください」と裁判長がやや強い口調で発言を制しました。さらに発言を求める原告とのやりとりがあったあと、裁判所の指示に従わない場合は訴訟法に則って退廷してもらいますと裁判長が言い、原告はあきらめてそれ以上の発言はしませんでした。
最後に、裁判長が訴状について不明な点があるとし、被告によるどのような不法行為があったのか、具体的に記した書面を提出してほしいと述べ、原告が1月末までに裁判所に提出することで合意しました。また、裁判長は、民事訴訟における口頭弁論は一方的に意見を述べる場ではないとして、原告に理解と協力を求めました。
次回の裁判は、2月16日(金)13時15分より、東京地裁527号法廷で行われる予定とのことです。
裁判が終わったあと、別室で原告と傍聴人の交流会がありました。(以下略)
(ひらのゆきこ)
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