=たんぽぽ舎です。【TMM:No4185】「メディア改革」連載第61回=
◆ 台本頼りの菅流記者会見は世界で通用しない
◆ 東京新聞記者が司会の広報官から指名されたのは初めて
◎ 政府は23日夜の新型コロナウイルス対応の対策本部で、4都府県に対し、緊急事態宣言の発令を決定。菅義偉首相は4月23日午後8時から、官邸で記者会見を開いた。菅氏の官邸での会見は10回目で、3月18日に緊急事態宣言の解除で会見して以来、5週間ぶり。菅氏の会見については、フェイスブックに投稿した。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173
菅氏は冒頭発言で、「再び多くの皆様がたにご迷惑をおかけすることになる。心からおわびを申し上げる」と述べ、深く頭を下げた。この会見で、私が注目したのは、小野日子内閣広報官が東京新聞を指名するかどうかだった。
◎ 小野氏は質疑応答の8番目で、「東京新聞の清水さん」と指名した。東京新聞は菅氏の首相就任以降、首相会見で1度も指名されていなかった。
東京新聞は4月5日に<菅首相の記者会見、本紙は指名ゼロ 質問「選別」、最多6回の社も>と題した記事を掲載。山井和則衆院議員(立民)が政府に「会見の記者指名に偏りがあるのでは」などとする質問主意書を出していた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/95818
清水氏は「東京新聞・中日新聞の清水です」と言って質問した。
「国民の中では、東京五輪どころではないという声が多い。国民の命を守ることより、五輪が優先されていないか。開催を判断する具体的で分かりやすい基準を示すべきだ」
菅氏は清水記者の質問に正面から答えず、「五輪の開催はIOCが行う。IOCは開催することをすでに決定している。安心の大会に向け対策をしっかり講じていく」と述べた。明確な基準は示さなかった。
4月24日の東京新聞は前夜の首相会見を1、2、7面で報じているが、質問した清水記者の実名がどこにもない。朝日新聞にもない。小野氏は質問者に所属と名前を明らかにするよう求め、首相官邸HPの会見記録には、社名と名前(姓)が載っている。動画もある。
http://www.kantei.go.jp/.../statement/2021/0423kaiken.html
◆ バイデン氏指名の記者を無視し世界に恥を晒した
◎ 官邸での首相会見の主催は日本最大の記者クラブである内閣記者会の主催。幹事社の質問、記者会のメンバーのほとんどの質問は、事前に内閣報道室に提出されている。日本にしかない記者クラブ制度で、会見が統制されているが、海外ではそうはいかない。
4月16日午後5時(現地時間)過ぎから、米ホワイトハウスで開かれたバイデン米大統領との共同記者会見で、菅首相はホワイトハウス詰めのロイター通信の記者の東京五輪に関する質問に答えなかった。
この「会見事故」は世界に、日本の首相のメディア対応が国際標準からかけ離れていることを晒した。
日米共同記者会見はネットの動画で視聴できる。
https://www.youtube.com/watch?v=p1xVccqaqY0
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/04/16/remarks-by-
会見の文字記録(英文)はホワイトハウスのHPにある。
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/04/16/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-suga-of-japan-at-press-conference/
◎ 会見はバイデン氏が司会。両氏がそれぞれ記者2人を指名。
菅氏は、日本から同行した内閣記者会常勤幹事社の記者の質問では官僚が用意した回答文を読み上げた。
バイデン氏が2人目で、「次の質問は、ロイター通信のトレバー記者にお願いしたい」と指名。
トレバー記者は大統領にイラン問題について聞き、「首相に聞きたい」と述べて、「あなたの公衆衛生の専門家たちは『東京五輪を開く状態にない』と指摘している時に、五輪開催に向かって押し進むのは無責任ではないか」と質した。
この質問に、まず、バイデン氏がイラン情勢について答えた後、菅氏の方へ体を向けて、回答を促した。また、トレバー記者にも視線を送った。
菅氏が回答するかと思ったら、何と、「じゃあ日本側から。共同通信の新富さん」と言った。バイデン氏が「あれっ」という表情を見せた。
新富記者は「総理、ロイターの質問に答えていませんが」と言うべきだが、何もなかったかのように用意した質問を始めた。「バイデン大統領からは米国選手団の五輪派遣について具体的な約束や前向きな意向は示されたのか」。
◎ 菅首相は「大会の開催を実現する決意を述べ、大統領から改めてご支持いただいた。東京大会を実現すべくしっかり準備を進めていく」と答えた。米選手団の派遣などの具体的な質問に答えなかった。
菅氏は、新富記者の質疑の時も、台本をずっと見ていた。
会見では、現地記者と同行記者がそれぞれ2問ずつ質問し、28分で終了した。会見場を去る際、菅氏は握手を求めたが、バイデン氏は応じず、会見場を去った。
菅氏の訪米直前の15日、二階俊博自民党幹事長が五輪中止に言及しており、小池百合子東京都知事が「東京に来ないで」と発言している中、国際社会は五輪開催に懐疑的だ。世界で最も影響力のあるロイター通信の記者の質問をスルーするのはあまりに無責任だ。
昨年10月21日に外遊先のジャカルタでの内外記者会見でも、現地メディア記者2人が菅氏に質問したが、外務省国際報道課が記者2人に事前に質問事項を提出させた“サクラ”会見だった。さすがに、「言論の自由」発生の地、米国では、地元記者に質問取りはできなかったようだ。
https://hbol.jp/231691?cx_clicks_art_mdl=3_title
◆ 「会見事故」を問題にしないキシャクラブメディア
◎ 菅氏の質問無視事件は、4月20日の衆院本会議の代表質問で取り上げられた。緑川貴士(立憲民主党)、赤嶺政賢(日本共産党)両議員が質問した。
ネットの衆院HPの動画で見た。
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51978&media_type=
菅氏は「バイデン大統領への質問のみと認識してしまい、結果として回答漏れがあったのは事実である」と釈明した。
緑川氏は「大統領から、開催への明確な支持、米選手団の派遣、開会式の出席予定も含め、どのような具体的回答があったのか」とも質したが、菅氏はまともに答弁しなかった。
赤嶺議員は、「答えられる回答を持ち合わせていないということではないか」と皮肉った。
日本のキシャクラブメディアは、菅氏の国際礼儀違反の質問黙殺をスルーしている。どうして、菅氏をかばう必要があるのか。
◎ 4月25日に投開票が行われた広島、長野の参院補選、北海道2区の衆院補選で、自民党は議席を取れなかった。マスメディアは菅政権の失政をきちんと追及しないが、有権者は金権政治に怒りを抱いている。
次期衆院選に向けて、山が動き始めた。自公維政治にNOを突き付ける政権反対党の候補一本化が急務だ。
◆ 台本頼りの菅流記者会見は世界で通用しない
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◆ 東京新聞記者が司会の広報官から指名されたのは初めて
◎ 政府は23日夜の新型コロナウイルス対応の対策本部で、4都府県に対し、緊急事態宣言の発令を決定。菅義偉首相は4月23日午後8時から、官邸で記者会見を開いた。菅氏の官邸での会見は10回目で、3月18日に緊急事態宣言の解除で会見して以来、5週間ぶり。菅氏の会見については、フェイスブックに投稿した。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100022241222173
菅氏は冒頭発言で、「再び多くの皆様がたにご迷惑をおかけすることになる。心からおわびを申し上げる」と述べ、深く頭を下げた。この会見で、私が注目したのは、小野日子内閣広報官が東京新聞を指名するかどうかだった。
◎ 小野氏は質疑応答の8番目で、「東京新聞の清水さん」と指名した。東京新聞は菅氏の首相就任以降、首相会見で1度も指名されていなかった。
東京新聞は4月5日に<菅首相の記者会見、本紙は指名ゼロ 質問「選別」、最多6回の社も>と題した記事を掲載。山井和則衆院議員(立民)が政府に「会見の記者指名に偏りがあるのでは」などとする質問主意書を出していた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/95818
清水氏は「東京新聞・中日新聞の清水です」と言って質問した。
「国民の中では、東京五輪どころではないという声が多い。国民の命を守ることより、五輪が優先されていないか。開催を判断する具体的で分かりやすい基準を示すべきだ」
菅氏は清水記者の質問に正面から答えず、「五輪の開催はIOCが行う。IOCは開催することをすでに決定している。安心の大会に向け対策をしっかり講じていく」と述べた。明確な基準は示さなかった。
4月24日の東京新聞は前夜の首相会見を1、2、7面で報じているが、質問した清水記者の実名がどこにもない。朝日新聞にもない。小野氏は質問者に所属と名前を明らかにするよう求め、首相官邸HPの会見記録には、社名と名前(姓)が載っている。動画もある。
http://www.kantei.go.jp/.../statement/2021/0423kaiken.html
◆ バイデン氏指名の記者を無視し世界に恥を晒した
◎ 官邸での首相会見の主催は日本最大の記者クラブである内閣記者会の主催。幹事社の質問、記者会のメンバーのほとんどの質問は、事前に内閣報道室に提出されている。日本にしかない記者クラブ制度で、会見が統制されているが、海外ではそうはいかない。
4月16日午後5時(現地時間)過ぎから、米ホワイトハウスで開かれたバイデン米大統領との共同記者会見で、菅首相はホワイトハウス詰めのロイター通信の記者の東京五輪に関する質問に答えなかった。
この「会見事故」は世界に、日本の首相のメディア対応が国際標準からかけ離れていることを晒した。
日米共同記者会見はネットの動画で視聴できる。
https://www.youtube.com/watch?v=p1xVccqaqY0
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/04/16/remarks-by-
会見の文字記録(英文)はホワイトハウスのHPにある。
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/04/16/remarks-by-president-biden-and-prime-minister-suga-of-japan-at-press-conference/
◎ 会見はバイデン氏が司会。両氏がそれぞれ記者2人を指名。
菅氏は、日本から同行した内閣記者会常勤幹事社の記者の質問では官僚が用意した回答文を読み上げた。
バイデン氏が2人目で、「次の質問は、ロイター通信のトレバー記者にお願いしたい」と指名。
トレバー記者は大統領にイラン問題について聞き、「首相に聞きたい」と述べて、「あなたの公衆衛生の専門家たちは『東京五輪を開く状態にない』と指摘している時に、五輪開催に向かって押し進むのは無責任ではないか」と質した。
この質問に、まず、バイデン氏がイラン情勢について答えた後、菅氏の方へ体を向けて、回答を促した。また、トレバー記者にも視線を送った。
菅氏が回答するかと思ったら、何と、「じゃあ日本側から。共同通信の新富さん」と言った。バイデン氏が「あれっ」という表情を見せた。
新富記者は「総理、ロイターの質問に答えていませんが」と言うべきだが、何もなかったかのように用意した質問を始めた。「バイデン大統領からは米国選手団の五輪派遣について具体的な約束や前向きな意向は示されたのか」。
◎ 菅首相は「大会の開催を実現する決意を述べ、大統領から改めてご支持いただいた。東京大会を実現すべくしっかり準備を進めていく」と答えた。米選手団の派遣などの具体的な質問に答えなかった。
菅氏は、新富記者の質疑の時も、台本をずっと見ていた。
会見では、現地記者と同行記者がそれぞれ2問ずつ質問し、28分で終了した。会見場を去る際、菅氏は握手を求めたが、バイデン氏は応じず、会見場を去った。
菅氏の訪米直前の15日、二階俊博自民党幹事長が五輪中止に言及しており、小池百合子東京都知事が「東京に来ないで」と発言している中、国際社会は五輪開催に懐疑的だ。世界で最も影響力のあるロイター通信の記者の質問をスルーするのはあまりに無責任だ。
昨年10月21日に外遊先のジャカルタでの内外記者会見でも、現地メディア記者2人が菅氏に質問したが、外務省国際報道課が記者2人に事前に質問事項を提出させた“サクラ”会見だった。さすがに、「言論の自由」発生の地、米国では、地元記者に質問取りはできなかったようだ。
https://hbol.jp/231691?cx_clicks_art_mdl=3_title
◆ 「会見事故」を問題にしないキシャクラブメディア
◎ 菅氏の質問無視事件は、4月20日の衆院本会議の代表質問で取り上げられた。緑川貴士(立憲民主党)、赤嶺政賢(日本共産党)両議員が質問した。
ネットの衆院HPの動画で見た。
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51978&media_type=
菅氏は「バイデン大統領への質問のみと認識してしまい、結果として回答漏れがあったのは事実である」と釈明した。
緑川氏は「大統領から、開催への明確な支持、米選手団の派遣、開会式の出席予定も含め、どのような具体的回答があったのか」とも質したが、菅氏はまともに答弁しなかった。
赤嶺議員は、「答えられる回答を持ち合わせていないということではないか」と皮肉った。
日本のキシャクラブメディアは、菅氏の国際礼儀違反の質問黙殺をスルーしている。どうして、菅氏をかばう必要があるのか。
◎ 4月25日に投開票が行われた広島、長野の参院補選、北海道2区の衆院補選で、自民党は議席を取れなかった。マスメディアは菅政権の失政をきちんと追及しないが、有権者は金権政治に怒りを抱いている。
次期衆院選に向けて、山が動き始めた。自公維政治にNOを突き付ける政権反対党の候補一本化が急務だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます