=たんぽぽ舎です。【TMM:No3885】「メディア改革」連載第27回=
◆ 記者会見を「やってる感」ショーに使う安倍首相
◆ 新型ウイルスを疑獄隠蔽の手段にする自公政権
安倍晋三首相の「桜を見る会」疑獄に関する報道は、新型コロナウイルスの感染拡大でかき消されている。治療法が見つかっていない感染疾病で、社会全体の関心事に違いないが、安倍首相はこの騒ぎを疑獄隠しに徹底的に利用していることを見抜かなければならない。共同通信が3月16日に公表した世論調査によると、「桜」で急落した内閣支持率が8ポイントも上がった。
安倍晋三首相は2月27日、専門家、文科相らに相談せずに、今井尚哉補佐官と2人で「全国の学校の一斉休業」を「政治判断」として決定した。
首相は2月29日と3月14日に内閣記者会に対し、新型ウイルス問題で記者会見したが、首相会見が安倍氏の政治ショーになっている。
2月29日の会見では、35分のうちの19分を演説に使い、質問を5人に限って、「まだ質問があります」というフリージャーナリストの声を無視して終了を宣言して帰宅したことが批判された。
蓮舫議員(立民副党首)が3月2日の参院予算委で「記者との質疑で、総理は答弁原稿を読んでいる。事前に記者クラブの幹事社を通じて質問内容を確認しているのか」と質したのに対し、首相は「まず幹事社の方が質問されるので、その場合、詳細な答えができるように通告をいただいている」と答弁。記者会見が出来レースであることをあっさり認めたのだ。
3月14日の会見は、行政を私物化してきた安倍首相に事実上の「戒厳令」発布の権限を与えてしまった特措法が成立したことの危うさを追及する場のはずだった。
ところが、首相は会見の冒頭、「特措法の成立に協力してくれた与党、野党の皆さんに感謝したい」と表明。日本の感染率は海外より低いなどとウソを並べ立てた。
安倍晋三記念小学校、加計学園獣医学部、桜を見る会の各疑獄をすり抜けてきたネオファシスト・日本会議レジュームに人権制約などの権限を与えた政党、議員は万死に値する。「戦前を取り戻す」安倍首相の下での大政翼賛会の復活であり、キシャクラブメディアも、大本営発表体制になっている。
会見では首相が約20分間演説し、長谷川栄一首相補佐官(広報官)の指名で、幹事社2社、その後、毎日新聞、ウォールストリートジャーナル、フリージャーナリスト安積明子氏らが質問した。
NHKは突然、会見中継をカット。安倍首相の広報官にしか思えない岩田明子解説委員が首相をヨイショして終わった。
その後、ユーチューブで会見を見た。会見開始から44分のところで、長谷川栄一首相補佐官(広報官)が会見を終了しようとした際、「まだ質問があります」「総理、これ会見と呼べますか」などと十数人が声を上げたため、長谷川氏が「最後に1問だけ」と会見を続行した。
一部メディアが「怒号で騒然」と書いたのはややオーバーだが、前回の会見が5人の仕込み質問だけで終わったのに比べればベターではあった。
再開後の質問が終わると、長谷川氏が再び会見を打ち切ろうとしたが、記者が「まだあります」と発言。首相が「まあ、いいんじゃない」と続行を認めた。
朝日新聞記者が黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題を取り上げ、「政権への信頼を回復するためには黒川検事長の定年延長の閣議決定を取り消すことを考えているか」と聞いた。いい質問だったが、首相の返答は国会答弁と同じだった。
長谷川氏は「あと2問にさせてもらいたい」と述べ、「それでは七尾さん」と指名。七尾功・「ニコニコ動画」記者が経済問題を聞いた。
長谷川氏は「最後の1問です。真ん中の男性の方」と後方の記者を指した。指名されたのは岩上安身IWJ代表だった。
https://iwj.co.jp/
IWJが15日朝に配信したメルマガ<日刊IWJガイド「安倍総理会見で岩上安身が直撃質問!『特措法で国民を慣らし、改憲で緊急事態条項を導入?』総理の回答は『安倍独裁』否定せず!!」2020.3.15日号~No.2740号>に岩上氏の質問と首相の回答が載っている。
岩上氏は「特措法に盛り込まれた非常事態宣言が発令された時、報道・言論の自由は担保されるのか。安倍独裁を可能にするような内容を含んでいることにつきぜひお答え願いたい」と聞いた。
岩上氏は安倍首相の会見に出ても一度も指名されたことはなかったので、今回が初めての質問だった。「安倍独裁を可能にする」という指摘は鋭いと思った。ただし、首相の返答は不誠実だった。
岩上氏の後、まだ多数の記者が手を挙げていたが、長谷川氏は「予定を超えましたので、これで」と発言して終わった。会見は前回より17分長い53分だった。前回よりはベターだったが、セカンドクエスチョンはなく、今回も全体的には首相の演説会だった。
◆ 内閣記者会はネオファシズム化の共犯者
革新系の国会議員や市民運動家から、新聞労連などが呼び掛けた「首相会見のフルオープン化」を求めた署名運動(3万筆以上)の成果と捉え、内閣記者会を称賛する声まで出ているが、私には内閣記者会が最低限の抵抗を見せただけだと思う。
主催者が司会を務めず、長谷川広報官が進行を仕切るのはおかしい。
キシャクラブ擁護派のメディア学者は「記者クラブがなくなると、会見の主催権が当局側に奪われる」と言うのだが、会見は官邸に支配されているのが実態だ。
南彰・新聞労連委員長は「報道機関を変えること」が署名の狙いだというのだが、キシャクラブ問題に触れないでどうするのだと言いたい。
記者会見は英語で、press conferenceと表現されるが、政治家とジャーナリストの真剣勝負の場だ。ところが、安倍首相の会見はずっと、事前に通告された質問に、用意された文書を読み上げるだけになっている。
首相だけでないが、日本の記者クラブ(海外では、1930年代後半に設置された日本の記者クラブはkisha kurabuと訳される)における政治家らの会見は、国際標準の「記者会見」ではない。
そもそも、キシャクラブで開かれる会見には、クラブのメンバー以外は参加できない。首相会見には、内閣記者会のメンバーとクラブと官邸が認めた人以外は参加もできない。
https://www.kantei.go.jp/jp/notice/20121227/index.html
長野県庁、鎌倉市には記者クラブがない。韓国の記者クラブは復活しているとか、米ホワイトハウスや英国には、日本よりひどい記者クラブがあるなどいうデマを振りまくキシャクラブ擁護の御用メディア学者(新聞労連、革新系)のデマに騙されてはいけない。
キシャクラブ制度の全面解体、廃止なしにこの国に国際標準のジャーナリズムは育たないと言っておきたい。
◆ 記者会見を「やってる感」ショーに使う安倍首相
浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
◆ 新型ウイルスを疑獄隠蔽の手段にする自公政権
安倍晋三首相の「桜を見る会」疑獄に関する報道は、新型コロナウイルスの感染拡大でかき消されている。治療法が見つかっていない感染疾病で、社会全体の関心事に違いないが、安倍首相はこの騒ぎを疑獄隠しに徹底的に利用していることを見抜かなければならない。共同通信が3月16日に公表した世論調査によると、「桜」で急落した内閣支持率が8ポイントも上がった。
安倍晋三首相は2月27日、専門家、文科相らに相談せずに、今井尚哉補佐官と2人で「全国の学校の一斉休業」を「政治判断」として決定した。
首相は2月29日と3月14日に内閣記者会に対し、新型ウイルス問題で記者会見したが、首相会見が安倍氏の政治ショーになっている。
2月29日の会見では、35分のうちの19分を演説に使い、質問を5人に限って、「まだ質問があります」というフリージャーナリストの声を無視して終了を宣言して帰宅したことが批判された。
蓮舫議員(立民副党首)が3月2日の参院予算委で「記者との質疑で、総理は答弁原稿を読んでいる。事前に記者クラブの幹事社を通じて質問内容を確認しているのか」と質したのに対し、首相は「まず幹事社の方が質問されるので、その場合、詳細な答えができるように通告をいただいている」と答弁。記者会見が出来レースであることをあっさり認めたのだ。
3月14日の会見は、行政を私物化してきた安倍首相に事実上の「戒厳令」発布の権限を与えてしまった特措法が成立したことの危うさを追及する場のはずだった。
ところが、首相は会見の冒頭、「特措法の成立に協力してくれた与党、野党の皆さんに感謝したい」と表明。日本の感染率は海外より低いなどとウソを並べ立てた。
安倍晋三記念小学校、加計学園獣医学部、桜を見る会の各疑獄をすり抜けてきたネオファシスト・日本会議レジュームに人権制約などの権限を与えた政党、議員は万死に値する。「戦前を取り戻す」安倍首相の下での大政翼賛会の復活であり、キシャクラブメディアも、大本営発表体制になっている。
会見では首相が約20分間演説し、長谷川栄一首相補佐官(広報官)の指名で、幹事社2社、その後、毎日新聞、ウォールストリートジャーナル、フリージャーナリスト安積明子氏らが質問した。
NHKは突然、会見中継をカット。安倍首相の広報官にしか思えない岩田明子解説委員が首相をヨイショして終わった。
その後、ユーチューブで会見を見た。会見開始から44分のところで、長谷川栄一首相補佐官(広報官)が会見を終了しようとした際、「まだ質問があります」「総理、これ会見と呼べますか」などと十数人が声を上げたため、長谷川氏が「最後に1問だけ」と会見を続行した。
一部メディアが「怒号で騒然」と書いたのはややオーバーだが、前回の会見が5人の仕込み質問だけで終わったのに比べればベターではあった。
再開後の質問が終わると、長谷川氏が再び会見を打ち切ろうとしたが、記者が「まだあります」と発言。首相が「まあ、いいんじゃない」と続行を認めた。
朝日新聞記者が黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題を取り上げ、「政権への信頼を回復するためには黒川検事長の定年延長の閣議決定を取り消すことを考えているか」と聞いた。いい質問だったが、首相の返答は国会答弁と同じだった。
長谷川氏は「あと2問にさせてもらいたい」と述べ、「それでは七尾さん」と指名。七尾功・「ニコニコ動画」記者が経済問題を聞いた。
長谷川氏は「最後の1問です。真ん中の男性の方」と後方の記者を指した。指名されたのは岩上安身IWJ代表だった。
https://iwj.co.jp/
IWJが15日朝に配信したメルマガ<日刊IWJガイド「安倍総理会見で岩上安身が直撃質問!『特措法で国民を慣らし、改憲で緊急事態条項を導入?』総理の回答は『安倍独裁』否定せず!!」2020.3.15日号~No.2740号>に岩上氏の質問と首相の回答が載っている。
岩上氏は「特措法に盛り込まれた非常事態宣言が発令された時、報道・言論の自由は担保されるのか。安倍独裁を可能にするような内容を含んでいることにつきぜひお答え願いたい」と聞いた。
岩上氏は安倍首相の会見に出ても一度も指名されたことはなかったので、今回が初めての質問だった。「安倍独裁を可能にする」という指摘は鋭いと思った。ただし、首相の返答は不誠実だった。
岩上氏の後、まだ多数の記者が手を挙げていたが、長谷川氏は「予定を超えましたので、これで」と発言して終わった。会見は前回より17分長い53分だった。前回よりはベターだったが、セカンドクエスチョンはなく、今回も全体的には首相の演説会だった。
◆ 内閣記者会はネオファシズム化の共犯者
革新系の国会議員や市民運動家から、新聞労連などが呼び掛けた「首相会見のフルオープン化」を求めた署名運動(3万筆以上)の成果と捉え、内閣記者会を称賛する声まで出ているが、私には内閣記者会が最低限の抵抗を見せただけだと思う。
主催者が司会を務めず、長谷川広報官が進行を仕切るのはおかしい。
キシャクラブ擁護派のメディア学者は「記者クラブがなくなると、会見の主催権が当局側に奪われる」と言うのだが、会見は官邸に支配されているのが実態だ。
南彰・新聞労連委員長は「報道機関を変えること」が署名の狙いだというのだが、キシャクラブ問題に触れないでどうするのだと言いたい。
記者会見は英語で、press conferenceと表現されるが、政治家とジャーナリストの真剣勝負の場だ。ところが、安倍首相の会見はずっと、事前に通告された質問に、用意された文書を読み上げるだけになっている。
首相だけでないが、日本の記者クラブ(海外では、1930年代後半に設置された日本の記者クラブはkisha kurabuと訳される)における政治家らの会見は、国際標準の「記者会見」ではない。
そもそも、キシャクラブで開かれる会見には、クラブのメンバー以外は参加できない。首相会見には、内閣記者会のメンバーとクラブと官邸が認めた人以外は参加もできない。
https://www.kantei.go.jp/jp/notice/20121227/index.html
長野県庁、鎌倉市には記者クラブがない。韓国の記者クラブは復活しているとか、米ホワイトハウスや英国には、日本よりひどい記者クラブがあるなどいうデマを振りまくキシャクラブ擁護の御用メディア学者(新聞労連、革新系)のデマに騙されてはいけない。
キシャクラブ制度の全面解体、廃止なしにこの国に国際標準のジャーナリズムは育たないと言っておきたい。
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