パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「高校無償化」「幼保無償化」から朝鮮学校を排除する差別に日本人としてどう向き合うか

2020年03月19日 | こども危機

  《教科書ネット21ニュースから》
 ◆ 「高校無償化・幼保無償化」からの朝鮮学校排除は差別である!
長谷川和男(はせがわかずお・「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会共同代表)

 ◆ 毎週金曜日、文部科学省玄関前で行われ続けている金曜行動

 私は朝鮮大学校の学生の呼びかけで始まった「金曜行動」に毎週参加している。この6年間、正月三が日と全国行脚で東京を離れた時以外はすべて参加してきた。
 「金曜行動」とは、「高校無償化」から朝鮮学校が排除され続けていることに抗議して文部科学省の玄関前、午後4時から5時の1時間、「朝鮮学校に対する差別をやめろ!」「朝鮮学校の学生たちの学ぶ権利を奪うな!」と叫び続けてきた。その中で、「声よ集まれ!歌となれ!」という歌も生まれた。学生たちが作詞作曲した歌だ。
 ◆ 学生たちやオモニたちの訴えにどうこたえるのか?

 「文部科学省の皆さんはいつまで私たちの声を無視し続けるのですか!聞こえないふりをし続ければ私たちが諦めると思っているのですか!私たちは決して諦めません。無償化が適応されるまで闘い続けます高校生の発言です。
 寒い日も暑い日も、雨の日も雪のちらつく日も、貴重な部活動の時間を割いて、文科省前に立ち続け、声をからして心の叫びを訴えている。オモニたちや日本人の参加者も、確実に増えている。私たち日本人は、この声にどうこたえるのか?
 ◆ 「幼保無償化」から朝鮮幼稚園がまたも排除される!

 今年の8月27日に最高裁判所は、「高校無償化裁判」の上告を棄却する決定を行った。司法は法の論理を無視して、政権への忖度の道を選んだのだ。
 さらに許せないのは、2019年10月1日から実施されている「幼児教育・保育無償化制度」から朝鮮学校が巡営する幼稚園・保育園が排除されたことである。
 全国でおよそ55万ある幼稚園、保育園、認定保育園の中でたった88カ所の各種学校が運営する幼稚園・保育園が、「多種多様な教育を実施しており、認定こども園にも該当しない」という理由で排除されたのである。
 2019年4月5日、「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令の交付について」(厚生労働省子ども家庭局長通知)が出された。
 それによると、「各種学校は学校教育法第1条の学校とは異なり、幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象にならない」とされている。
 このような説明で納得できるであろうか。2019年10月4日、安倍首相は所信表明演説で「みんなちがって、みんないい」「新しい時代の日本に求められているのは、多様性であります」一国の首相がよく平気でこのような二枚舌を使えるものだ。
 ◆ 11・2日比谷野音の集会と銀座パレード

 2019年11月2日、日比谷野外音楽堂で「朝鮮幼稚園はずしにNO!すべての幼児に教育・保育の権利を!」の集会と銀座パレードが実施された。
 フォーラム平和・人権・環境を中心に無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会などの市民団体や朝鮮幼稚園保護者会等の学園関係者が実行委員会を作って運営された。
 朝鮮学校の幼稚園児のかわいい演技が披露され、集まった3500人の参加者は「こんなに可愛い園児たちまで差別をするのか!」と日本政府の対応に怒りが爆発する集会になった。
 ◆ 朝鮮学校に対する差別が国際社会でどう受け取られているか

 国際社会では、「日本政府が朝鮮学校を差別する」問題がどのように受け取られてきたのだろうか。
 国連の人権機関からは再三にわたって日本に対する勧告がなされている。

 「高校無償化」法案が成立した2010年4月に先立って、国連人種差別撤廃委員会が同年3月6日「締約国(日本)において現在、公立および私立の高校、高等専門学校、高校に匹敵する教育課程を持つ様々な教育機関を対象とした、高等教育無償化の法改正の提案がなされているところ、そこから朝鮮学校を排除すべきことを提案している何人かの政治家の態度」について懸念が表明された。
 2013年5月17日には社会権規約委員会が「締約国(日本)の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である」と勧告した。日本政府が「拉致問題に進展がない」などの理由を挙げて弁解に終始したが、「そのような政治外交上の理由は、子どもたちの教育を受ける権利と何ら関係ない」と一蹴されたのである。
 人種差別撤廃委員会は2014年9月と2018年8月30日の2度にわたって「高校授業料就学支援金制度からの朝鮮学校の除外」について懸念を表明し、さらに「朝鮮学校に支給される地方政府による補助金の凍結もしくは継続的縮減」についても初めて勧告された。
 日本政府の朝鮮学校への対応は、国際社会では厳しく批判されているのである。「幼保無償化」についても、国際社会は間違いなく厳しい批判を浴びせるであろう。
 ◆ 在日朝鮮人への差別が日本で続いている理由

 日本と朝鮮は長い間、文化交流・善隣友好関係が築かれてきた。中国も含めて東アジアの一員として、相互に影響を与え合ってきたといえる。
 残念ながら豊臣秀吉の時代と明治以降の近現代において、日本が侵略を行ったことによる恥ずべき歴史が展開された。侵略を行う側は、侵略対象の民族差別を徹底して行うものだ。朝鮮人や中国人を日本人よりも劣った民族だというレッテル貼りに終始した。
 在日朝鮮人に対する対応は、1910年から1945年までは植民地として、主権を奪い、言葉を奪い、土地を奪い、名前まで奪っておきながら、敗戦後は外国人として軍人恩給も支給されなかった。
 私は幼いころ三鷹駅で、白衣を着た傷病兵が傷ついた体をさらしながら物乞いをする姿を何度も見てきた。あれは、戦争でけがをし、働けなくなった在日朝鮮人が軍人恩給も支給されなかった結果だったのである。
 こうした歴史の中で、民族差別は温存されていったのである。

 ◆ 杉並区議会の本会議で信じられない発言があった!

 2019年9月12日、杉並区議会の本会議の一般質問で佐々木千夏議員が信じられない質問を行った。公人によるヘイトスピーチである。ここで報告するのもおぞましいが、その一部を挙げてみよう。
 「『朝鮮通信使は各地で歓迎を受け、その宿舎には朝鮮や中国のことを知りたいと大勢の人が押し掛けた』とありますが、これは嘘です。全国で実際女性に対する暴行や殺人、今でいう関東連合のような、やくざのような問題を各地で起こしているのです」創氏改名に関しても「朝鮮人の方から、日本式に変えてほしいという要望があって、日本政府も仕方なく許可したのです」さらに「朝鮮は日本が強制的に植民地にしたのではなく、韓国が助けを求めてきたのです。日本政府は反対だったけれど、救済を求めてきたので仕方なく併合したのです」そのことが教科書で教えられていない弊害が出ているとして「子どもが正しい歴史的事実を知らないばかりにやられっぱなし、殴られっぱなし、現実に杉並区のお子さんたちがいじめにあっているのです」
 よくぞここまで根拠も実例も明らかにせず、発言できたと開いた口が塞がらない。一部発言は撤回されたが、朝鮮通信使などに対する暴言は撤回されていない。二度と再びこのような公人によるヘイトスピーチが起こらないように、監視活動を続ける必要がある。
 一方、明るい兆しも出てきている。

 ◆ 都議会内で実施ざれた「60万回のトライ」上映会

 オリンピック開催を来年に控え、今年はラグビーワールドカップに日本人は熱狂した。「60万回のトライ」というドキメンタリー映画は、大阪朝鮮高級学校ラグビー部を扱った作品である。この映画の上映会が2019年10月30日、都議会内の委員会室で開催された。
 都議会内全会派の有志が実行委員会を作り、実現したのである。ラグビーというスポーツは「ノーサイド」という言葉が象徴しているように、敵味方に分かれて全力でぶつかり合っても試合が終わればお互いの健闘をたたえ合う国際色豊かなスポーツである。
 私たちが諦めず闘い続ければ「すべての人の人権を尊重する日本社会が実現できる」と確信している。
『子どもと教科書全国ネット21NEWS 129号』(2019年12月)

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