国のヘイトスピーチ(差別扇動表現)対策が思うように進んでいない。法務省は今年に入ってから啓発活動を強化したが、電話相談への不満が続出するなど空回り気味だ。(上田千秋)
◆ 法務省人権110番に電話したら…
「まずは当事者が頑張って」 (東京新聞)
「他に言うところがないから電話をかけたのに、あんな対応をされるとは思ってもみなかった」。三十代の在日コリアンの女性は声を落とした。
女性は今月三日、法務省が設けている「みんなの人権110番」に電話。インターネット上で出回っている動画を削除してほしいと要望すると、返ってきたのは「まずは当事者が頑張ることが重要。貴重な提言として記録には残します」との回答だった。
女性は「腹立たしい思いがした。電話なんかしなければよかった」とあきれたように話す。
同省は一月、「ヘイトスピーチ、許さない」と大書したポスター一万六千枚、リーフレット一万五千部を作製。ポスターには「110番」の番号を記載し、相談を寄せるよう呼び掛けた。
「110番」は自動的に、発信場所を管轄する法務局につながる仕組み。人権擁護の担当職員らが対応し、同省のホームページには「適切な助言を行います」「最善の解決を目指します」と記載されている。
ところが実態は、こうしたうたい文句とはかけ離れていた。
ヘイトスピーチ根絶に尽力する有田芳生(よしふ)参院議員(民主党)によると、別の在日コリアンの男性は「『韓国人は死ね』という発言が人権侵害に当たるかは調査しないと判断できない」「法務省は中立の立場。啓発活動を通じて人権意識を高めることしかできない」などと言われたという。
◆ 相談は「アリバイ作り」?法規制不可欠
同省調査救済課は「相談は、外部に出さないことを前提に受けている。個別の内容はコメントできない」とするものの、この問題は十四日の参院法務委員会でも取り上げられた。
「現場の職員は何がヘイトか分かっていないのではないか」と質問した有田議員に対し、同省の岡村和美人権擁護局長は「一般的な外国人の人権についての研修で、ヘイトに触れている。今後は、各法務局で一人は精緻な対応ができるよう努力したい」と説明するにとどまった。
日本には、「韓国人は死ね」「朝鮮人は出ていけ」など不特定多数に向けられたヘイトスピーチを直接処罰する法律が存在しない。
ヘイトデモに路上で直接抗議する「カウンター」に阻まれ、一時の勢いは失っているものの、小規模なデモや集会は後を絶たない。
地方では、神奈川や福岡などの県議会を含む約百議会が、ヘイトスピーチの法規制などを求める意見書を可決している。
にもかかわらず、国は、表現の自由との兼ね合いなどを理由に、法規制には及び腰だ。
ヘイトスピーチ問題に詳しい師岡康子弁護士は「不特定の集団に対するヘイトスピーチは現行法では違法とならず、人権救済手続きの対象にならないことは法務省も分かっている。それを伏したまま、ヘイトスピーチ被害の相談を受け付けるのは、単なるアリバイ作りだ。被害者は相談によって二次被害に遭っている。法整備が先だ」と指摘した上で、ヘイトスピーチのまん延を許した法務省の責任を問う。
「法務省は、日本には新法をつくるほどの人種差別はないとして差別撤廃政策を怠ってきた。その反省をまずすべきだ」
『東京新聞』(2015/4/18【ニュースの追跡】)
◆ 法務省人権110番に電話したら…
「まずは当事者が頑張って」 (東京新聞)
「他に言うところがないから電話をかけたのに、あんな対応をされるとは思ってもみなかった」。三十代の在日コリアンの女性は声を落とした。
女性は今月三日、法務省が設けている「みんなの人権110番」に電話。インターネット上で出回っている動画を削除してほしいと要望すると、返ってきたのは「まずは当事者が頑張ることが重要。貴重な提言として記録には残します」との回答だった。
女性は「腹立たしい思いがした。電話なんかしなければよかった」とあきれたように話す。
同省は一月、「ヘイトスピーチ、許さない」と大書したポスター一万六千枚、リーフレット一万五千部を作製。ポスターには「110番」の番号を記載し、相談を寄せるよう呼び掛けた。
「110番」は自動的に、発信場所を管轄する法務局につながる仕組み。人権擁護の担当職員らが対応し、同省のホームページには「適切な助言を行います」「最善の解決を目指します」と記載されている。
ところが実態は、こうしたうたい文句とはかけ離れていた。
ヘイトスピーチ根絶に尽力する有田芳生(よしふ)参院議員(民主党)によると、別の在日コリアンの男性は「『韓国人は死ね』という発言が人権侵害に当たるかは調査しないと判断できない」「法務省は中立の立場。啓発活動を通じて人権意識を高めることしかできない」などと言われたという。
◆ 相談は「アリバイ作り」?法規制不可欠
同省調査救済課は「相談は、外部に出さないことを前提に受けている。個別の内容はコメントできない」とするものの、この問題は十四日の参院法務委員会でも取り上げられた。
「現場の職員は何がヘイトか分かっていないのではないか」と質問した有田議員に対し、同省の岡村和美人権擁護局長は「一般的な外国人の人権についての研修で、ヘイトに触れている。今後は、各法務局で一人は精緻な対応ができるよう努力したい」と説明するにとどまった。
日本には、「韓国人は死ね」「朝鮮人は出ていけ」など不特定多数に向けられたヘイトスピーチを直接処罰する法律が存在しない。
ヘイトデモに路上で直接抗議する「カウンター」に阻まれ、一時の勢いは失っているものの、小規模なデモや集会は後を絶たない。
地方では、神奈川や福岡などの県議会を含む約百議会が、ヘイトスピーチの法規制などを求める意見書を可決している。
にもかかわらず、国は、表現の自由との兼ね合いなどを理由に、法規制には及び腰だ。
ヘイトスピーチ問題に詳しい師岡康子弁護士は「不特定の集団に対するヘイトスピーチは現行法では違法とならず、人権救済手続きの対象にならないことは法務省も分かっている。それを伏したまま、ヘイトスピーチ被害の相談を受け付けるのは、単なるアリバイ作りだ。被害者は相談によって二次被害に遭っている。法整備が先だ」と指摘した上で、ヘイトスピーチのまん延を許した法務省の責任を問う。
「法務省は、日本には新法をつくるほどの人種差別はないとして差別撤廃政策を怠ってきた。その反省をまずすべきだ」
『東京新聞』(2015/4/18【ニュースの追跡】)
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