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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

北海道人事委裁決に関する声明

2006年10月31日 | 日の丸・君が代関連ニュース
                   声    明

 2006年10月20日、北海道人事委員会は、教員である北海道教職員組合員(以下「申立人」という。)が、2001年3月、倶知安中学校卒業式において、学校長によって一方的、独断的に実施された君が代の演奏に対して、演奏テープが挿入されたカセットを搬出したことに関し、北海道教育委員会が申立人に課した戒告処分の取消しを求めた事案について、同処分を取り消す裁決を行った。当然のこととはいえ評価できるものである。
 本件事案は、申立人の勤務先中学校卒業式において、学校長が教職員との共通理解のないままに、式次第にもなく、かつ、事前に生徒に対する何らの説明・予告もないままに、独断で一方的に実施したことに対して、申立人が、教育の本質と条理、生徒の学習権と子どもの権利条約に基づく諸権利、教職員の教育の自由と責務、そして、生徒・保護者・教職員の思想良心の自由と国家の価値中立性に思いをいたし、これに平和的、平穏的方法により抵抗した事案である。
 本件裁決は、卒業式などの学校行事の場において、子ども、教職員に対して、日の丸拝礼や君が代の斉唱、演奏を強制することは、子ども、教職員の思想良心の自由を侵害すること、子どもに対して意見表明の機会を与えず、事前に学習する機会を確保しないままに日の丸掲揚、君が代斉唱を実施したことは、子どもの権利条約12条(意見表明権)に反すること、学習指導要領の国旗掲揚・国歌斉唱指導条項は、大綱的基準ではなく、法的拘束力が認められないこと、卒業式などの学校行事の内容などの編成を含む教育課程の編成は、全教職員の総意により教育的配慮に基づいて決定されるべきこと、君が代演奏を決定した校長の判断には手続上重大な瑕疵があったなどを認めた上で、
申立人は、教育者としての信念に基づきカセットを搬出したこと、申立人が本件行動に至ったことについて学校長にも一端の責任があること、教職員の共通理解のないままに学校長が一方的に君が代演奏を実施しないことを確認した北教組支部と教育局間の確認に反するものであることなどを理由に、本件懲戒処分には裁量権の逸脱があったとしてこれを取り消したものであり、積極的に評価できるものである。
 現在、道内の学校において、卒業式・入学式等で日の丸・君が代が強制されている。北教組は、憲法、教育基本法、子どもの権利条約の理念に基づき、日の丸・君が代の学校現場への強制に反対するとりくみを一層強化していく。
 道教委は、本人事委員会裁決を真摯に受け止め、学校現場への一切の強制を直ちに中止するよう強く求める。

2006年10月23日
                                          北海道教職員組合
                                          北教組弁護団


【裁決書全文】
http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/061020dou-jinji-c.pdf

道人事委員会の裁決要旨
 ◆主文

 平成13年7月27日付で行った戒告処分を取り消す。

 ◇人事委員会の判断
 本件行為は教育公務員の職の信用を失墜させる行為として地方公務員法に該当するが、背景事情や行為、動機、影響その他諸般の事情を考慮すれば、戒告処分をもってしなければならないほどの違法性があるとはいえず、処分者の裁量権を逸脱したものとして取り消しは免れない。

 (1)卒業式における君が代演奏の適法性について
 日の丸・君が代が我が国の国旗・国歌として定着し、国際的にも広く認知されていたことは顕著な事実である。学習指導要領が国旗・国歌指導条項を置いている趣旨は意義、国際的儀礼を理解させることで、目的が以上のものである限り、卒業式等で絶対天皇制や戦争を賛美するものでないことは明らかである。
 教職員にも個人としての思想、良心の自由が保障され、意思に反して強制することは不当な侵害として許されないと解さなければならない。しかし、教職員は個人ではなく職務として式に出席するのだから、学校の方針として決定された場合、職務上の義務がある。
 学習指導要領の国旗掲揚・国歌斉唱指導条項は指導方法の細目を定めるもので、大綱的な規準とはいいがたく、法的拘束力は否定せざるを得ない。
 卒業式で日の丸を掲揚し君が代を斉唱するかは校長が決定することも一応可能であると考えられる。一方、校長の校務掌理権は個々の教員の裁量権限を十分に尊重し、教育的配慮のもとに行使される必要がある。卒業式等の学校行事をどのような内容にするかは校長を含む全教員の総意により教育的配慮に基づき決定されることが望ましい。しかし、教員間に鋭い意見の対立があり、あらゆる努力によっても解消されない場合には校長が決定するほかなく、他の教員もこれに従うべき義務があると解さなければならない。
 本件では準備段階から校長と反対する教職員の間で意見対立があり、何度も話し合いがもたれたが、ついに意見の一致を見ることなく式の当日を迎えた状況を考慮すれば校長の決断自体はやむを得ない。
 しかし、当日に行われた最後の話し合いの場でも、校長は協力してほしい旨の提案を繰り返すだけで学校の方針を明確にせず、教職員、生徒らに君が代の演奏が一切知らされておらず、手続き上の重大な瑕疵(かし)があったといわざるを得ない。

 (2)懲戒事由該当性について
 本件君が代の演奏は手続き上の重大な瑕疵があったといわざるを得ず、教職員に対し、これに従って式を進行させるべき職務上の義務を課すものとは認められない。
 しかしながら、校長と教職員の間に意見の対立があり、方針が正式に決定されないまま卒業式が開始される異常事態のもとで、君が代が強引に演奏されようとした際、実力で阻止したものであり、卒業式に混乱を生じさせたことは明らかであるから、教育公務員としての職の信用を失墜させる行為に該当するものといわなければならない。

 (3)懲戒権の乱用について
 請求者が本件行為に及んだのは君が代演奏は違憲、違法であり、許されないという教育上の信念に基づくもので、進行を故意に妨げることを目的としたものではなかった。背景には校長が学校の方針を明確にしないまま、抜き打ち的に君が代を演奏しようとしたことが影響していることは明らかであり、式の進行に混乱を招いたことについては校長にも責任の一端があるといわざるを得ない。
 本件行為によって式の進行に混乱が生じたことは明らかであるが、その混乱は一瞬のもので全体に与えた影響は軽微だった。
 本件行為と同時期に発生した卒業式や入学式の日の丸掲揚君が代斉唱を巡って混乱を与えた教職員に対し懲戒処分に付された例が一件もないことからすると、本件処分は類似事案に比較して相当重く、権衡を欠くといわざるを得ない。

【毎日新聞 2006年10月24日】
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hokkaido/seikei/news/20061024ddlk01040010000c.html

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