《週刊新社会 沖縄だより》
◆ 46人のための教科書の闘い
教科書無償措置法改定案が4月9日の参議院本会議で可決、成立した。直後、沖縄選出の糸数慶子参院議員から電話があり、「残念。私たち少数者は数には勝てない」と落ち込んだ様子だった。
それもそのはず、八重山・竹富町では町独自の教科書を採用したが、それに対して、文科省は是正要求を出した。今度は竹富町側が「竹富町教科書是正要求撤回大作戦実行チーム」を結成し、参院議員会館で糸数議員らが参加して支援者と共に抗議集会を開いたばかりだった。
竹富町は、八重山諸島の中で石垣市、与那国町を除く大小8の島からなる。島々をつなぐのは定期船のみで、役場は石垣市にある。
その石垣市が、数年前に革新市長から保守に代わり、中学公民の教科書を保守色の強い育鵬社版を採用したことから、竹冨町は東京書籍の公民教科書を単独で採用した。
今回は9校46人の中学2年生が東京書籍版を使用するが、「無償配付」の対象から外された。生徒には、篤志家の寄付によって無料で配付された。
ところで、改定法では採択地区の設定単位を市町村としているが、下村博文文科相は「竹富町の主張が通るような法改正ではなく、逆に協議会によって定められたものは、きちんと守ることを法律によって明確化しようということだ」と参院文教科学委員会で答弁している。
これに対し、竹富町はあくまでも石垣市と与那国町でつくる八重山地区採択協議会から離脱し、来年度も単独の採択地区とすることを決めた。
また、文科省の「是正要求」には、申立てをしない方針となった。その手続きが煩雑だからという。菅義偉官房長官はこれに対も、「是正要求に応じず、国地方係争処理委員会に不服申立てもしないことは極めて遺憾」と批判した。
「すべての教科書を町単独で調査するのは難しい。熟慮が必要」(沖縄タイムス4月12日)との専門家の意見もある。
私たち一般市民がすべての教科書をチェックすることは難しいが、沖縄タイムス4月6日付の社説によると、小学校の社会料の検定を申請した4社すべてが、尖閣諸島や竹島を取り上げ、「日本の固有の領土」の記述がなされているという。
つまり小学生にまで過剰なナショナリズムを植えつけようとしているのだ。
社説は「コミュニケーションを培い、国を超えた横のつながりを生みだすような教育であってほしい」と結んでいる。その通りである。
(あさと・えいこ)
〉
『週刊新社会』(2014/4/22)
◆ 46人のための教科書の闘い
安里英子(フリー・ライター)
教科書無償措置法改定案が4月9日の参議院本会議で可決、成立した。直後、沖縄選出の糸数慶子参院議員から電話があり、「残念。私たち少数者は数には勝てない」と落ち込んだ様子だった。
それもそのはず、八重山・竹富町では町独自の教科書を採用したが、それに対して、文科省は是正要求を出した。今度は竹富町側が「竹富町教科書是正要求撤回大作戦実行チーム」を結成し、参院議員会館で糸数議員らが参加して支援者と共に抗議集会を開いたばかりだった。
竹富町は、八重山諸島の中で石垣市、与那国町を除く大小8の島からなる。島々をつなぐのは定期船のみで、役場は石垣市にある。
その石垣市が、数年前に革新市長から保守に代わり、中学公民の教科書を保守色の強い育鵬社版を採用したことから、竹冨町は東京書籍の公民教科書を単独で採用した。
今回は9校46人の中学2年生が東京書籍版を使用するが、「無償配付」の対象から外された。生徒には、篤志家の寄付によって無料で配付された。
ところで、改定法では採択地区の設定単位を市町村としているが、下村博文文科相は「竹富町の主張が通るような法改正ではなく、逆に協議会によって定められたものは、きちんと守ることを法律によって明確化しようということだ」と参院文教科学委員会で答弁している。
これに対し、竹富町はあくまでも石垣市と与那国町でつくる八重山地区採択協議会から離脱し、来年度も単独の採択地区とすることを決めた。
また、文科省の「是正要求」には、申立てをしない方針となった。その手続きが煩雑だからという。菅義偉官房長官はこれに対も、「是正要求に応じず、国地方係争処理委員会に不服申立てもしないことは極めて遺憾」と批判した。
「すべての教科書を町単独で調査するのは難しい。熟慮が必要」(沖縄タイムス4月12日)との専門家の意見もある。
私たち一般市民がすべての教科書をチェックすることは難しいが、沖縄タイムス4月6日付の社説によると、小学校の社会料の検定を申請した4社すべてが、尖閣諸島や竹島を取り上げ、「日本の固有の領土」の記述がなされているという。
つまり小学生にまで過剰なナショナリズムを植えつけようとしているのだ。
社説は「コミュニケーションを培い、国を超えた横のつながりを生みだすような教育であってほしい」と結んでいる。その通りである。
(あさと・えいこ)
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『週刊新社会』(2014/4/22)
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