=見張り塔から メディアの今 (東京新聞)=
◆ 「業者」が記事拡散か
誤情報に覆い尽くされる危機
ネット上を席巻する「保守」的な書き込み。この多くが「業者」による組織的なものではないかという疑惑が浮上している。
ネットを介して個人や企業の橋渡しを行い、仕事の受発注を行うクラウドソーシングサービス上にそうした依頼が大量に発見されたからだ。
依頼の内容は千八百~四千字の範囲で
「憲法九条を改正し、軍隊を保有すること」
「韓国とはもう付き合うべきではない」
「民進党の政策と反対のことを行えば日本は良くなる」
といった内容のプログ記事を書くというもの。
記事を一つ書くと、、仕事を請け負った側には八百円の報酬が手に入る。
同サービスには過去に匿名掲示板の書き込みをまとめる形で記事を作る「保守系まとめサイト」の仕事依頼も掲載されていた。そちらの記事単価は一つの記事あたり五十円。
ほかにも、動画投稿サイトのユーチューブに保守的なコンテンツの動画を制作してアップロードする仕事(一動画あたり八十円)や、メルマガ記事の作成(一件あたり百円)、特定のツイートのリツイート(一リツイートあたり十円)といった仕事依頼も見つかった。
変わったところでは「マスコミや人権活動家や左翼が安倍総理やトランプ大統領を独裁者(危険人物)と批判しているけれども、そのマスコミたちは真の独裁者(危険人物)である中国の習近平に操られている」という、具体的な風刺絵制作依頼も見つかった。こちらは手間がかかる分、五千~一万円と単価が高く、実際にこの依頼で作られたとみられる画像を利用したプログ記事も発見されている。
いずれの仕事も単価は安く、依頼されて記事を作ったり、情報を拡散したりする受注側は仕事を大量にこなさない限り、割に合わない構造になっている。
ネットで韓国や中国、民進党、マスコミ関連の情報を検索すると、それらを非難する似たようなタイトルの記事を大量に見つけることができるが、記事が「業者」によって量産、拡散されているのならば、そうした現象も説明がつく。
すべてではないにせよ、その多くは金銭目当てで組織的に行われたものである可能性が高い。
このような事例は既に海外でも報告されている。セキュリティー企業のトレンドマイクロが六月十三日に発表したリポートによれば、中国やロシアの企業に依頼することで簡単にフェイクニュースを作成・拡散できるという。
九月十三日には昨年の米大統領選で大量に拡散したフェイクニュースを若者が組織的に作っていたことで問題となったマケドニアのべレスという街の最新状況をCNNが報じた。
彼らの多くは現在アカウントが凍結されているが、さまざまな方法で規制の目をかいくぐり、そのうちの一人が現在運営するサイトは既に一日三十万円弱の収入を得ているそうだ。
世論工作、あるいは収入を稼ぐ目的でゆがめた情報を大量に流通させる行為が世界中で明らかになりつつある。
既存メディアはこの事実を重く受け止め、こうした構造を白日の下にさらさなければならない。
さもなくば、低コストで流通される誤情報に自ら発信する情報が覆い尽くされることは確実だ。
『東京新聞』(2017年9月26日)
◆ 「業者」が記事拡散か
誤情報に覆い尽くされる危機
ジャーナリスト・津田大介さん
ネット上を席巻する「保守」的な書き込み。この多くが「業者」による組織的なものではないかという疑惑が浮上している。
ネットを介して個人や企業の橋渡しを行い、仕事の受発注を行うクラウドソーシングサービス上にそうした依頼が大量に発見されたからだ。
依頼の内容は千八百~四千字の範囲で
「憲法九条を改正し、軍隊を保有すること」
「韓国とはもう付き合うべきではない」
「民進党の政策と反対のことを行えば日本は良くなる」
といった内容のプログ記事を書くというもの。
記事を一つ書くと、、仕事を請け負った側には八百円の報酬が手に入る。
同サービスには過去に匿名掲示板の書き込みをまとめる形で記事を作る「保守系まとめサイト」の仕事依頼も掲載されていた。そちらの記事単価は一つの記事あたり五十円。
ほかにも、動画投稿サイトのユーチューブに保守的なコンテンツの動画を制作してアップロードする仕事(一動画あたり八十円)や、メルマガ記事の作成(一件あたり百円)、特定のツイートのリツイート(一リツイートあたり十円)といった仕事依頼も見つかった。
変わったところでは「マスコミや人権活動家や左翼が安倍総理やトランプ大統領を独裁者(危険人物)と批判しているけれども、そのマスコミたちは真の独裁者(危険人物)である中国の習近平に操られている」という、具体的な風刺絵制作依頼も見つかった。こちらは手間がかかる分、五千~一万円と単価が高く、実際にこの依頼で作られたとみられる画像を利用したプログ記事も発見されている。
いずれの仕事も単価は安く、依頼されて記事を作ったり、情報を拡散したりする受注側は仕事を大量にこなさない限り、割に合わない構造になっている。
ネットで韓国や中国、民進党、マスコミ関連の情報を検索すると、それらを非難する似たようなタイトルの記事を大量に見つけることができるが、記事が「業者」によって量産、拡散されているのならば、そうした現象も説明がつく。
すべてではないにせよ、その多くは金銭目当てで組織的に行われたものである可能性が高い。
このような事例は既に海外でも報告されている。セキュリティー企業のトレンドマイクロが六月十三日に発表したリポートによれば、中国やロシアの企業に依頼することで簡単にフェイクニュースを作成・拡散できるという。
九月十三日には昨年の米大統領選で大量に拡散したフェイクニュースを若者が組織的に作っていたことで問題となったマケドニアのべレスという街の最新状況をCNNが報じた。
彼らの多くは現在アカウントが凍結されているが、さまざまな方法で規制の目をかいくぐり、そのうちの一人が現在運営するサイトは既に一日三十万円弱の収入を得ているそうだ。
世論工作、あるいは収入を稼ぐ目的でゆがめた情報を大量に流通させる行為が世界中で明らかになりつつある。
既存メディアはこの事実を重く受け止め、こうした構造を白日の下にさらさなければならない。
さもなくば、低コストで流通される誤情報に自ら発信する情報が覆い尽くされることは確実だ。
『東京新聞』(2017年9月26日)
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