■ 公職 言葉の重みは?
「ババァ発言」訴訟第二弾も棄却
東京都知事選真っ只中の二十七日、石原慎太郎都知事を女性九十二人が訴えた訴訟の判決が出た。「"文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ"なんだそうだ」という、いわゆる「ババァ発言」に端を発する二つ目の訴訟。前回の判決後、原告らを「変な左翼」などと呼んだとして、石原氏に謝罪を求めたが、訴えは棄却された。法廷に詰めかけた原告の思いはー。
最初の訴訟では、一審は「不適切な表現で多くの女性が不快感を抱いたと思われ、知事の職にあるものの発言としては不用意」としながらも「個々人の深刻な精神的な苦痛を与えるほどの内容ではない」と請求を棄却。二審も「原告個人の生き方を制約するものではなく、権利を侵害していない」と控訴を棄却した。
今回の訴訟は、判決後の二〇〇五年二月の記者会見で「私が司法の対象になるのは分からない。裁判のための裁判であの人たちのパフォーマンス」「変な左翼」「シャケだって(中略)産卵したら死ぬわけでしょ」などと発言したのが、「ババァ発言」を正当化した名誉棄損だとして謝罪と損害賠償を求めた訴訟だ。
裁判は、途中で「対個人」と「対東京都」に分離した。対東京都の訴訟は残る。
判決に対し、原告代理人の中野麻美弁護士は「知事に責任がないとした判決ではなく、公務員としての発言なので個人として責任を負わないとした過去の判例を踏襲したということ」と説明する。
だが、原告の気持ちが治まらない。柚木康子さん(五九)は「圧倒的な影響力がある都知事の不適切な発告へ謝罪を求めてもダメな時は、私たちのできるのは訴訟だけ。それをパフォーマンスと言うなんて。公職の肩書があれば何を言ってもいいのか」と憤る。
田辺久子さん(五九)は「日本は人権を守る、男女平等だと掲げながら、このような発言が許されている。国際的にみて日本の人権感覚の欠如の現れとも思う」。
都が敗訴した場合は、訴えた原告も含む都民の税金で損害賠償が払われることにならないのかー。この点
については、中野弁護士は「都が石原知事に請求すべきだ」とする。
個人に対しての裁判を控訴するかは未定。「都がきちんと知事の責任を追及することを期待する」と中野弁護士は話した。
ところで、そもそも「ババァ発言」とは何だったのか。「週刊女性」2001年11月6日号の記事「独占激白"石原慎太郎都知事吠える"」の中で、「"文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ"なんだそうだ。"女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です"って」などと語られたものだ。
石原知事は、地球物理学の権威、松井孝典・東大教授の仮説を引用したと主張している。では松井教授の唱える「おばあさん仮説」をおさらいしてみよう。
生殖年齢を過ぎたメスが何十年も生きるほ乳類は、
現生人類だけだ
▽おばあさんはお産の経験、知識を次世代に伝える。産まれた子供の面倒もみる
▽このため女性の出産から出産までの期間が短くなり、出産回数が増え、人口増加につながった
▽人口の増えた人類は、アフリカから出て、世界各地に広がった一。
松井教授は本紙の取材に対し、「おばあさん仮説は現生人類が文明を築く上で、おばあさんが重要な役割を果たしたという内容だ。それがどう理解されるかは関知しないが、(前回の訴訟の)東京地裁、東京高裁の判決で私の仮説と石原知事の発言は相いれないと認められている。すでに決着の付いた問題で、今回新たに付け加えることもない」と話している。
また都庁知事本局報道課によると、石原知事本人は、この日の判決について「コメントはない」と話しているという。
『東京新聞』(2007/3/28朝刊「ニュースの追跡」)
「ババァ発言」訴訟第二弾も棄却
東京都知事選真っ只中の二十七日、石原慎太郎都知事を女性九十二人が訴えた訴訟の判決が出た。「"文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ"なんだそうだ」という、いわゆる「ババァ発言」に端を発する二つ目の訴訟。前回の判決後、原告らを「変な左翼」などと呼んだとして、石原氏に謝罪を求めたが、訴えは棄却された。法廷に詰めかけた原告の思いはー。
最初の訴訟では、一審は「不適切な表現で多くの女性が不快感を抱いたと思われ、知事の職にあるものの発言としては不用意」としながらも「個々人の深刻な精神的な苦痛を与えるほどの内容ではない」と請求を棄却。二審も「原告個人の生き方を制約するものではなく、権利を侵害していない」と控訴を棄却した。
今回の訴訟は、判決後の二〇〇五年二月の記者会見で「私が司法の対象になるのは分からない。裁判のための裁判であの人たちのパフォーマンス」「変な左翼」「シャケだって(中略)産卵したら死ぬわけでしょ」などと発言したのが、「ババァ発言」を正当化した名誉棄損だとして謝罪と損害賠償を求めた訴訟だ。
裁判は、途中で「対個人」と「対東京都」に分離した。対東京都の訴訟は残る。
判決に対し、原告代理人の中野麻美弁護士は「知事に責任がないとした判決ではなく、公務員としての発言なので個人として責任を負わないとした過去の判例を踏襲したということ」と説明する。
だが、原告の気持ちが治まらない。柚木康子さん(五九)は「圧倒的な影響力がある都知事の不適切な発告へ謝罪を求めてもダメな時は、私たちのできるのは訴訟だけ。それをパフォーマンスと言うなんて。公職の肩書があれば何を言ってもいいのか」と憤る。
田辺久子さん(五九)は「日本は人権を守る、男女平等だと掲げながら、このような発言が許されている。国際的にみて日本の人権感覚の欠如の現れとも思う」。
都が敗訴した場合は、訴えた原告も含む都民の税金で損害賠償が払われることにならないのかー。この点
については、中野弁護士は「都が石原知事に請求すべきだ」とする。
個人に対しての裁判を控訴するかは未定。「都がきちんと知事の責任を追及することを期待する」と中野弁護士は話した。
ところで、そもそも「ババァ発言」とは何だったのか。「週刊女性」2001年11月6日号の記事「独占激白"石原慎太郎都知事吠える"」の中で、「"文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ"なんだそうだ。"女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です"って」などと語られたものだ。
石原知事は、地球物理学の権威、松井孝典・東大教授の仮説を引用したと主張している。では松井教授の唱える「おばあさん仮説」をおさらいしてみよう。
生殖年齢を過ぎたメスが何十年も生きるほ乳類は、
現生人類だけだ
▽おばあさんはお産の経験、知識を次世代に伝える。産まれた子供の面倒もみる
▽このため女性の出産から出産までの期間が短くなり、出産回数が増え、人口増加につながった
▽人口の増えた人類は、アフリカから出て、世界各地に広がった一。
松井教授は本紙の取材に対し、「おばあさん仮説は現生人類が文明を築く上で、おばあさんが重要な役割を果たしたという内容だ。それがどう理解されるかは関知しないが、(前回の訴訟の)東京地裁、東京高裁の判決で私の仮説と石原知事の発言は相いれないと認められている。すでに決着の付いた問題で、今回新たに付け加えることもない」と話している。
また都庁知事本局報道課によると、石原知事本人は、この日の判決について「コメントはない」と話しているという。
『東京新聞』(2007/3/28朝刊「ニュースの追跡」)
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