《月刊救援から》
◆ またもや国策に従った最高裁判決
強まる辺野古新基地建設反対運動の意義
七月六日、最高裁判所第三小法廷(林道春裁判長)は、辺野古新基地建設に向けた大浦湾の約四万群体のサンゴ特別採捕(移植)申請を巡り、農水相が県に許可をするよう是正指示を出したのは「国の地方自治に対する違法な関与」として県が取り消しを求めた訴訟で、県の上告を棄却する判決を言い渡した。
三名の多数意見は、県の判断は「護岸工事を事実上停止させ、防衛局の地位を侵害する不合理な結果を招く」とし「裁量権の範囲の逸脱または乱用に当たる」とした。
しかし一方、二名の裁判官は、「(転弱地盤改良のための)変更申請が不承認になった場合護岸工事は無意味になる」と指摘、変更申請がされていない状況でサンゴの移植を許可するかとうかの情報が得られていなかったとして、「県が許可しなかったことには違法性がない」とした。
「移植後の生存率は二○%以下」と、サンゴ移植が環境保全に役に立たないことを認めながら、国の主張を形式的に容認するだけの多数意見に比べ、少数意見の方が現実に沿った判断だと言える。
今回迄三件の最高裁判決で県の主張に寄り添った反対意見が付いたのは初めてであり、今後の運動での活用が期待される。
最高裁判決を受け、七月二三日県は条件付きで移植を認めたが、防衛局が条件を無視して移植を強行したため、三〇日県は許可を撤回した。攻防は続く。
六月三〇日、防衛局は、軟弱地盤が最も深い「B27地点」の力学試験や工事によるジュゴンへの影響の評価など、県からの四度目の質問に回答した。
玉城知事の「申請不承認」は間違いないとされるが、県はなお検討中という。知事の判断はコロナ感染拡大による緊急事態宣言が終了する八月下旬にずれ込む可能性がある。いすれにしても、「不承認」がなされた以降の闘いの重要な時期か近付いている。
「変更申請」に盛り込まれた南部地域からの土砂採取については新たな動きかある。
糸満市・米須の「魂魄の塔」横の熊野鉱山予定地では、隣接した土地の森林伐採届が出され、重機による整地作業が始まった。また、鉱山からの土砂搬出路とするための農地の一時転用申請が、七月、糸満市農業委員会に提出された。
この一帯は農地転用が「一時的な利用」以外は原則として許可されないという。
ただ、「遺骨の確認」や「県との協議」に対する自然公園法に基づく措置命令は未だ行われていない。県の厳正な関与が待たれる。
沖縄戦の最大の激戦地であり、未だに戦争犠牲者の遺骨か混ざっている土砂を戦争のための基地建設の使用することは死者への冒涜だ。こうした観点から、この間二度のハンストを敢行するなど反対の行動を貫いてきた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんは、八月一五日の「終戦記念日」に当たり、一四・一五日の二日間、政府主儀の「戦没者追悼式」が行われる武道館周辺で三回目のハンストを行う予定だ。実行場所は、右翼なとからの妨害を避けて、千鳥ヶ淵戦没者墓苑周辺とされるが、「本土」の私たちの連帯、防衛行動が強く求められている。
沖縄の「慰霊の日」六月二三日には、糸満市摩文仁の平和公園で県、県議会主催の沖縄全戦没者追悼式が行われた。
追悼式では、宮古島私立西辺中学二年の上原美春さんが、「みるく世(平和な世)を創るのはここにいる私たちだ」と力強い「平和の詩」を朗読した。
一方で、旧日本陸軍の沖縄守備隊たった第三二軍司令官の牛島満中将を祭る、摩文仁の黎明之塔に沖縄陸上自衛隊のトップ佐藤真第一五旅団長ら幹部三名か集団参拝した。
沖縄戦で住民に自決を求めるなど多くの犠牲を強いた最高責任者を現自衛隊幹部が顕彰することには厳しい批判があり、陸上幕僚監部からも「地域の住民感情に十分配慮し、今後は熟慮し対応するように」と事実上の中止指示が出されていたのだ。
しかし、吉田圭秀陸上幕僚長は「私的な参拝であり問題はない」と容認している。
今年は沖縄に自衛隊が移駐してから五〇年目に当たる。
当初、旧日本軍の蛮行に配慮して「控え目」だった自衛隊も、今や沖縄での存在が大きくなっている。
既に五年前、与那国島にレーダー基地が建設、沿岸監視隊等が配備された。
宮古島には現在、警備隊が駐屯、地対空・地対艦ミサイルが配備されている。先日は、自衛隊用地選定に便宜を図ったとして前市長か逮捕された。
自衛隊配備反対の意思を表す根拠となる住民条例を議会自らが廃止した石垣島でもミサイル部隊が建設されている。
一月には、陸上自衛隊と米海兵隊が、辺野古新基地に「日本版海兵隊」と言われる陸自の水陸機動団を常駐させることで二〇一五年に合意していたことが明らかになった。
同基地は、南西諸島の軍事要塞化の要の位置にあるという指摘もある。
辺野古新基地建設に反対することは、単に米軍基地をこれ以上造るな、ということばかりでないのだ。
建設「不承認」がなされた以降の闘いがなおさら重要になる。
沖縄の人々の闘いに学び、固く連帯し、ヤマト自らの課題、責任として、基地建設反対の闘いを進めていこう。
(中村利也/辺野古への基地建設を許さない実行委員会)
『月刊救援 628号』(2021年8月10日)
◆ またもや国策に従った最高裁判決
強まる辺野古新基地建設反対運動の意義
七月六日、最高裁判所第三小法廷(林道春裁判長)は、辺野古新基地建設に向けた大浦湾の約四万群体のサンゴ特別採捕(移植)申請を巡り、農水相が県に許可をするよう是正指示を出したのは「国の地方自治に対する違法な関与」として県が取り消しを求めた訴訟で、県の上告を棄却する判決を言い渡した。
三名の多数意見は、県の判断は「護岸工事を事実上停止させ、防衛局の地位を侵害する不合理な結果を招く」とし「裁量権の範囲の逸脱または乱用に当たる」とした。
しかし一方、二名の裁判官は、「(転弱地盤改良のための)変更申請が不承認になった場合護岸工事は無意味になる」と指摘、変更申請がされていない状況でサンゴの移植を許可するかとうかの情報が得られていなかったとして、「県が許可しなかったことには違法性がない」とした。
「移植後の生存率は二○%以下」と、サンゴ移植が環境保全に役に立たないことを認めながら、国の主張を形式的に容認するだけの多数意見に比べ、少数意見の方が現実に沿った判断だと言える。
今回迄三件の最高裁判決で県の主張に寄り添った反対意見が付いたのは初めてであり、今後の運動での活用が期待される。
最高裁判決を受け、七月二三日県は条件付きで移植を認めたが、防衛局が条件を無視して移植を強行したため、三〇日県は許可を撤回した。攻防は続く。
六月三〇日、防衛局は、軟弱地盤が最も深い「B27地点」の力学試験や工事によるジュゴンへの影響の評価など、県からの四度目の質問に回答した。
玉城知事の「申請不承認」は間違いないとされるが、県はなお検討中という。知事の判断はコロナ感染拡大による緊急事態宣言が終了する八月下旬にずれ込む可能性がある。いすれにしても、「不承認」がなされた以降の闘いの重要な時期か近付いている。
「変更申請」に盛り込まれた南部地域からの土砂採取については新たな動きかある。
糸満市・米須の「魂魄の塔」横の熊野鉱山予定地では、隣接した土地の森林伐採届が出され、重機による整地作業が始まった。また、鉱山からの土砂搬出路とするための農地の一時転用申請が、七月、糸満市農業委員会に提出された。
この一帯は農地転用が「一時的な利用」以外は原則として許可されないという。
ただ、「遺骨の確認」や「県との協議」に対する自然公園法に基づく措置命令は未だ行われていない。県の厳正な関与が待たれる。
沖縄戦の最大の激戦地であり、未だに戦争犠牲者の遺骨か混ざっている土砂を戦争のための基地建設の使用することは死者への冒涜だ。こうした観点から、この間二度のハンストを敢行するなど反対の行動を貫いてきた沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんは、八月一五日の「終戦記念日」に当たり、一四・一五日の二日間、政府主儀の「戦没者追悼式」が行われる武道館周辺で三回目のハンストを行う予定だ。実行場所は、右翼なとからの妨害を避けて、千鳥ヶ淵戦没者墓苑周辺とされるが、「本土」の私たちの連帯、防衛行動が強く求められている。
沖縄の「慰霊の日」六月二三日には、糸満市摩文仁の平和公園で県、県議会主催の沖縄全戦没者追悼式が行われた。
追悼式では、宮古島私立西辺中学二年の上原美春さんが、「みるく世(平和な世)を創るのはここにいる私たちだ」と力強い「平和の詩」を朗読した。
一方で、旧日本陸軍の沖縄守備隊たった第三二軍司令官の牛島満中将を祭る、摩文仁の黎明之塔に沖縄陸上自衛隊のトップ佐藤真第一五旅団長ら幹部三名か集団参拝した。
沖縄戦で住民に自決を求めるなど多くの犠牲を強いた最高責任者を現自衛隊幹部が顕彰することには厳しい批判があり、陸上幕僚監部からも「地域の住民感情に十分配慮し、今後は熟慮し対応するように」と事実上の中止指示が出されていたのだ。
しかし、吉田圭秀陸上幕僚長は「私的な参拝であり問題はない」と容認している。
今年は沖縄に自衛隊が移駐してから五〇年目に当たる。
当初、旧日本軍の蛮行に配慮して「控え目」だった自衛隊も、今や沖縄での存在が大きくなっている。
既に五年前、与那国島にレーダー基地が建設、沿岸監視隊等が配備された。
宮古島には現在、警備隊が駐屯、地対空・地対艦ミサイルが配備されている。先日は、自衛隊用地選定に便宜を図ったとして前市長か逮捕された。
自衛隊配備反対の意思を表す根拠となる住民条例を議会自らが廃止した石垣島でもミサイル部隊が建設されている。
一月には、陸上自衛隊と米海兵隊が、辺野古新基地に「日本版海兵隊」と言われる陸自の水陸機動団を常駐させることで二〇一五年に合意していたことが明らかになった。
同基地は、南西諸島の軍事要塞化の要の位置にあるという指摘もある。
辺野古新基地建設に反対することは、単に米軍基地をこれ以上造るな、ということばかりでないのだ。
建設「不承認」がなされた以降の闘いがなおさら重要になる。
沖縄の人々の闘いに学び、固く連帯し、ヤマト自らの課題、責任として、基地建設反対の闘いを進めていこう。
(中村利也/辺野古への基地建設を許さない実行委員会)
『月刊救援 628号』(2021年8月10日)
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