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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

4次訴訟・法廷意見陳述から(1)

2015年09月26日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ◎ 国際条約(国際人権)違反
2015.9.25 加藤文也(弁護団)

 今回提出した原告ら準備書面の内、国際条約(国際人権)違反の主張の要旨にっいて、口頭で、弁論します。
 1 現行の国際人権の保障は、人間としての個人の人権を直接に承認した上で、条約締結国にその保護義務を課すものとなっております。
 従前、国際法は、国家間の取り決めを規定するもので、捕虜などの特殊な場合を除いて、個人は、国際法上の主体として充分な考慮が払われておりませんでした。しかし、第二次世界大戦を通じて、枢軸国による人権の無視と民主主義の抑圧が悲惨な戦争の原因となったことが強く認識され、戦後は、国際平和の維持にとって必要不可欠な重要課題として、人権の国際的保障の問題が取り上げられることとなりました。
 1948年の国連総会で、「世界人権宣言」が採択された後、国連人権委員会は、国際人権保障の基本法にあたる条約の制定に取り組み、国連総会は、1966年に国際人権規約〔(A規約社会権規約)、(B規約、自由権規約)〕を採択し、上記両規約は、1976年に発効しました。わが国は、1979年に国会の批准を経て、両規約に加入しました。
 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)は、1989(平成元)年に国連総会で全会一致で採択され,わが国も,1994(平成6)年に批准しました。
 本件は、自由権規約18条(思想、良心及び宗教の自由)及び子どもの権利条約3条(子どもの最善の利益)、12条(意見表明権)違反の主張をするものです。
 2 わが国の最高裁判決も、国際条約(国際人権)の裁判規範性を認めた上での判断を示すようになっております。
 ア 自由権規約人権委員会は、1989年に婚外子の差別を違法とする一般意見を採択し、第3回の日本政府報告に対する総括所見で、日本の婚外子に関する差別的な法規が規約違反であるとの懸念を示し、以後、日本政府の報告に対して、同様の総括所見を示すようになりました。
 イ 国連・子どもの権利委員会は、1998(平成10)年に日本政府の報告書に対して第1回総括所見を出し、その中で日本に対する「主要な懸念事項」として、「委員会は、子どもの権利に関する条約が国内法に優先しかつ国内の裁判所で援用できるとはいえ、実際には、裁判所が国際人権条約一般および特に子どもの権利条約を直接適用しないのが通例であることを懸念する。」との所見を示し、その改善を促しました。
 ウ 2008(平成20)年6月4日、国籍法婚外子差別事件で、最高裁大法廷は、「諸外国においては、非嫡出子に対する法的な差別的取扱いを解消する方向にあることがうかがわれ、わが国が批准した自由権規約及び児童の権利に関する条約にも、児童が出生によっていかなる差別も受けないとする趣旨の規定が存する。」と自由権規約及び子どもの権利条約が裁判規範性を有することを前提に、婚外子の差別的取り扱いをしていた法律を違憲、違法としました。
 エ さらに、2013(平成25)年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の相続差別が問題とされた事案で、「諸外国の立法のすう勢及びわが国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘…等を総合的に考慮すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかといえる。そして、…子を個入として尊重し、その権利を保護すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。」とし、民法900条4項但し書きは、憲法14条1項に違反していたとの決定を言い渡しました。
 上記最高裁大法廷決定は、国連・自由権規約人権委員会および子どもの権利委員会の総括所見を踏まえ、それに従った判断をしたことを意味し、今後、裁判所は、国連の委員会の総括所見が出された場合は、それを踏まえた判断をしなければならなくなったと解されます。
 3 本件通達とそれに基づく実施は、子どもの権利条約に違反すること
 子どもの権利条約は、第3条で子どもの最善の利益が確保されるべきことを規定し、子どもの最善の利益の評価には、子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に子どもが自分の意見を表明する権利、意見表明権(12条)を規定しております。
 2010(平成22)年6月22日、国連・子どもの権利委員会は、日本政府の第3回報告に対し、総括所見を採択し、次のような懸念、勧告を行いました。
 「43本委員会は、・・学校において子どもの意見が考慮される領域が限定されていること、ならびに、政策決定過程において子ども及びその意見が省みられれることがめったにないことを、引き続き懸念する。本委員会は、子どもを権利を持つ人間として尊重しない伝統的見方が、子どもの意見に対する考慮を著しく制約していることを懸念する
 44本委員会は、学校、裁判所、並びに政策策定過程を含むすべての場面において、子どもに影響を与えるすべての事柄について、子どもがその意見を十分に表明する権利を促進するための措置を強化することを締約国政府に勧告する。
 上記懸念は、本件通達の策定過程及び通達に従った実際の卒業式の実施に関し、全く、子どもの意見を聞くことがなされておらず、したがって、子どもの意見を尊重することが全くなされていないこと、すなわち、子どもの最善の利益に対する配慮がなされず、子どもの意見表明権が全く確保されていないことに問題があることを表明したものと解することができます。このことは、本件通達及びそれに基づく実施の規約違反性を強く裏付けるものと言わざるを得ません。
 4 本件通達に基づく懲戒処分は自由権規約18条に違反すること自由権規約18条1項は、思想、良心及び宗教の自由の保障について規定し、同3項は,これらの自由の制限を許容する要件は,「法律で定める制限」で、特に必要な場合に限られることになっております。
 この制限が、きわめて限定的なものであることは、兵役の義務がある韓国で、良心的兵役拒否をしたことにより有罪に処せらた人が、韓国の裁判所で敗訴となった後、人権委員会に訴え、人権委員会が、2006(平成18)年、何らの「代替処置もとっていなかった」ことを理由に、18条3項違反の判断を示したことからも明らかです。
 2015(平成26)年7月、国連・自由権規約人権委員会は、日本政府の第6回報告に対する総括所見のなかで、規約18条を明示し、その権利に対する「いかなる制約をも押し付けることを差し控えるように締約国に要求する」と、日本に対し、規約18条の「思想、良心及び宗教の自由」への制限を禁ずる所見を初めて示しました。
 これは「日の丸・君が代」強制と処分を念頭に置いた勧告です。規約18条違反の主張に対して判断されるのあたっては、上記勧告の趣旨を踏まえて判断されることを切望いたします。
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