◆ 戦争できる国づくり・人づくり
~軍事大国化を狙う安倍内閣の教育介入 (週刊新社会)
◆ 自衛隊員の募集基盤強化
8月31日、来年度予算の概算要求が出されたが、とくに突出しているのが防衛省であり、前年度比2・3%増の5兆1685億円と、過去最大にあたる。
軍事大国化を指向する安倍政権の性格が浮き彫りにされている。迎撃ミサイルPAC3や新型潜水艦など中朝国境への軍事的配備の強化予算が際立っている。
このような国家の軍事体制化は、その基盤形成として教育現場と自治体にその矛先が向けられている。
全体として応募入隊の状況は減少しており、自衛隊は「適質・適齢」な隊員の確保が不可欠なのである。実際、防衛省の開示資料によれば(「自衛隊候補生・曹候補生(男女)学歴別入隊状況」(2003及び04年))、高校出身者が70%を超えており、「募集基盤の強化」が重大となってきている。
防衛省陸上幕僚監部が作成した『平成27年度募集実施計画』によれば、「中期及び長期的な計画に係る的確かつ積極的な情報の発信、学校説明会の充実、リクルーターの活用等、あらゆる手段をもって学校との関係強化を図り、募集基盤の拡大を図る」と書かれている。
この『実施計画』によれば、「各種イベント及びインターンシップの開催」や学校内での「説明会」の開催、そしてさらに、地方公共団体の協力を得て「住民基本台帳の閲覧」のために「協力の獲得を図る必要がある」ことが強調されている。
とくに「一部の地方公共団体では全閲覧となっている」とまで書かれている。
このように、自衛隊員の募集のために協力する学校と自治体を拡大することが方針化されているのである。
◆ 青少年の意識変革の手法
『少年サンデー』と言えば青少年に人気の週刊漫画雑誌である。子どもの思想形成に与える影響の大きさは計り知れない。
その『少年サンデー』に「防衛大学物語-あおざくら」が現在連載中である(2016年5月11・18日合併号から)。
主人公の近藤勇美は、勉強はできるが大学へ行けるお金がない。そこで、高校の進路指導部に相談をして防衛大学校に進み、この学校での活躍の様子が描かれている。
まさに、経済的徴兵制なのである。お勉強ができてもお金のない者は「防衛大学に行け」、と言わんばかりの書き方なのである。
ここに登場する高校について、「東京都調布市、調布木多(きた)高校、地元でも有名な進学校である」と書かれている。
ここで問題なのは東京都立調布北高校という進学校が実在しているということだ。学校には何の断りもなく名前が使用されているのである。
数年前に実際に防衛大に進学した生徒がいたようだが、この高校の進路部では防衛大を奨励しているかのような書き方なのであり、まるで国策漫画のようでもある。
防衛省の言う中長期的な「募集基盤の強化」は、幼児期から子ども達の意識の中に自衛隊に対する親近感と国防・愛国意識を醸成することも含まれているのである。
今年7月に武蔵村山五中で起きた事件も中学生の意識を醸成しようとするものであった。
同中学校の学校フェスティバルで横田基地の米軍が参加してミニブートキャンプ(新兵訓練)が実施された。生徒も匍匐(ほふく)前進などの訓練に参加するなど、軍事訓練さながらなのである。
学校は「生徒達が生の英語に触れる機会」であったというお粗末さである。
◆ 自治体が本人・保護者・学校の了解なしに2万余人の名簿提出の法令違反
防衛省は隊員確保のために、その対象者となる中高3年生に募集パンフレットをダイレクトメールをしている。
その対象となる生徒の住所・氏名などの情報を提供する協力自治体の拡大が方針化されている。
大阪府では茨木市が自衛隊の大阪地本(地方協力本部)の「依頼」により2万4063人分の資料を提出していたことが、山下けいき市議(新社会党)の議会での追及で明らかになった。
自衛隊側は「プヲライバシーの尊重」などの『誓約書』を提出しているが、隊員募集のダイレクトメールに使用されること自身がその侵害に当たるというものだ。
とくに、本人はもちろん保護者・学校の了解もなく資料を提出しており、このことは重大な法令違反にあたる。
また、同市議の追及によって府内10市が資料提供していることも明らかになった。とくに箕面市では、資料提供に止まらず、市内の消防署敷地内での宿営訓練も実施していることが明らかになった。
こうした自治体と一体化した状況は全国的に行われており、自衛隊の教育現場と自治体に対する介入は、安倍安保体制を下支えするものであり、これを阻止する闘いが求められている。
~軍事大国化を狙う安倍内閣の教育介入 (週刊新社会)
永井栄俊(大学非常勤講師・元都立高校教員)
◆ 自衛隊員の募集基盤強化
8月31日、来年度予算の概算要求が出されたが、とくに突出しているのが防衛省であり、前年度比2・3%増の5兆1685億円と、過去最大にあたる。
軍事大国化を指向する安倍政権の性格が浮き彫りにされている。迎撃ミサイルPAC3や新型潜水艦など中朝国境への軍事的配備の強化予算が際立っている。
このような国家の軍事体制化は、その基盤形成として教育現場と自治体にその矛先が向けられている。
全体として応募入隊の状況は減少しており、自衛隊は「適質・適齢」な隊員の確保が不可欠なのである。実際、防衛省の開示資料によれば(「自衛隊候補生・曹候補生(男女)学歴別入隊状況」(2003及び04年))、高校出身者が70%を超えており、「募集基盤の強化」が重大となってきている。
防衛省陸上幕僚監部が作成した『平成27年度募集実施計画』によれば、「中期及び長期的な計画に係る的確かつ積極的な情報の発信、学校説明会の充実、リクルーターの活用等、あらゆる手段をもって学校との関係強化を図り、募集基盤の拡大を図る」と書かれている。
この『実施計画』によれば、「各種イベント及びインターンシップの開催」や学校内での「説明会」の開催、そしてさらに、地方公共団体の協力を得て「住民基本台帳の閲覧」のために「協力の獲得を図る必要がある」ことが強調されている。
とくに「一部の地方公共団体では全閲覧となっている」とまで書かれている。
このように、自衛隊員の募集のために協力する学校と自治体を拡大することが方針化されているのである。
◆ 青少年の意識変革の手法
『少年サンデー』と言えば青少年に人気の週刊漫画雑誌である。子どもの思想形成に与える影響の大きさは計り知れない。
その『少年サンデー』に「防衛大学物語-あおざくら」が現在連載中である(2016年5月11・18日合併号から)。
主人公の近藤勇美は、勉強はできるが大学へ行けるお金がない。そこで、高校の進路指導部に相談をして防衛大学校に進み、この学校での活躍の様子が描かれている。
まさに、経済的徴兵制なのである。お勉強ができてもお金のない者は「防衛大学に行け」、と言わんばかりの書き方なのである。
ここに登場する高校について、「東京都調布市、調布木多(きた)高校、地元でも有名な進学校である」と書かれている。
ここで問題なのは東京都立調布北高校という進学校が実在しているということだ。学校には何の断りもなく名前が使用されているのである。
数年前に実際に防衛大に進学した生徒がいたようだが、この高校の進路部では防衛大を奨励しているかのような書き方なのであり、まるで国策漫画のようでもある。
防衛省の言う中長期的な「募集基盤の強化」は、幼児期から子ども達の意識の中に自衛隊に対する親近感と国防・愛国意識を醸成することも含まれているのである。
今年7月に武蔵村山五中で起きた事件も中学生の意識を醸成しようとするものであった。
同中学校の学校フェスティバルで横田基地の米軍が参加してミニブートキャンプ(新兵訓練)が実施された。生徒も匍匐(ほふく)前進などの訓練に参加するなど、軍事訓練さながらなのである。
学校は「生徒達が生の英語に触れる機会」であったというお粗末さである。
◆ 自治体が本人・保護者・学校の了解なしに2万余人の名簿提出の法令違反
防衛省は隊員確保のために、その対象者となる中高3年生に募集パンフレットをダイレクトメールをしている。
その対象となる生徒の住所・氏名などの情報を提供する協力自治体の拡大が方針化されている。
大阪府では茨木市が自衛隊の大阪地本(地方協力本部)の「依頼」により2万4063人分の資料を提出していたことが、山下けいき市議(新社会党)の議会での追及で明らかになった。
自衛隊側は「プヲライバシーの尊重」などの『誓約書』を提出しているが、隊員募集のダイレクトメールに使用されること自身がその侵害に当たるというものだ。
とくに、本人はもちろん保護者・学校の了解もなく資料を提出しており、このことは重大な法令違反にあたる。
また、同市議の追及によって府内10市が資料提供していることも明らかになった。とくに箕面市では、資料提供に止まらず、市内の消防署敷地内での宿営訓練も実施していることが明らかになった。
こうした自治体と一体化した状況は全国的に行われており、自衛隊の教育現場と自治体に対する介入は、安倍安保体制を下支えするものであり、これを阻止する闘いが求められている。
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