☆ <イスラエルのガザ侵攻・虐殺を考えるうえで是非読んでほしい本>
<転送歓迎>(重複ご容赦)・「新芽ML」・「ひのきみ全国ネット」・「戦争をさせない杉並1000人委員会」・「杉並コモンズ」の渡部です。
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イスラエルのガザ侵攻・虐殺について、私は何回か「ユダヤ教」についてユダヤ人は「神に選ばれた民」(選民思想)、「パレスチナは神が約束した地」という考えを持っており、これは狂信的(独善的)な考えになると書きました。
この問題は2000年来の歴史の宿題だと思っていたからです。
ところが、このたび、集英社新書として
『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』(ダニー・ネフセタイ 永尾俊彦構成 1000円+税)
という本が発刊されました。
この本を読み、この本はこの2000年来の宿題を解決する糸口を指し示すだけではなく、現在のガザの問題をどうやれば解決できるかをも示唆してくれ、更には「平和憲法」を否定し軍拡に走る日本で、私たちはどうすればよいのかをも考えさせてくれる本になっていると思いました。
この本は
・まえがき
・第一章 罪深い教育
・第二章 軍隊を疑う
・第三章 虐殺された民族が虐殺する
・第四章 「全ての暴力に反対します」
・あとがき
からなっています。
「第一章 罪深い教育」では、<軍隊への憧れをかきたてる「平和教育」>という項目があり、そこには次のように述べられています。
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イスラエルの公立学校では、旧約聖書を小、中、高と12年間学びます。
・・その中で、イスラエルは神様が約束してくれた土地だということも学びます。
パレスチナ人の土地を奪って入植地をつくるのを正当化する根拠として、よく引かれるのは次の言葉です(「創世記」15章18~21節/新共同訳)
その日、主はアブラハムと契約を結んで言われた。
「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、カイン人、ケナズ人、カドモニ人、ヘト人、ペリシテ人、レファィム人、アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える」
このような文句を小学校から暗記させられました。・・
・・そこからパレスチナ人を追い出すのは当然だという理屈になるのですが、これはパレスチナ人側からみればとんでもない理屈です。
この独善性は、近隣諸国を見下すことにもつながります。・・「パレスチナ人は人間じゃない」とまでいうユダヤ教の信徒もいます。
神が一番上で、次がユダヤ人、その他どの民族もみなユダヤ人より下で、そこにパレスチナ人も入っているという極めて差別的な考えです。
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また、<よりよい軍隊をつくるための宗教>という項目には、次のようなことが述べてあります。
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入隊時には軍隊仕様の旧約聖書が配布されました。日本ではユダヤ人はみな熱心にユダヤ教を信仰していると思っている人が多いかも知れませんが、イスラエルでユダヤ教を熱心に信仰している人は全人口の3割以下と言われています。
わたしも信仰は持っていませんし、父も母も信徒ではありませんでした。
しかし、軍隊では、ユダヤ教の戒律が重視されています。
食事は戒律を守った食べ物「カシェル」(適正食品規定:渡部注)しか食べられません。
・・・
また、どの基地にもユダヤ教の教会があり、宗教指導者であるラビがいます。
・・「旧約聖書を読むことでユダヤ教の源を学び、このことによってよりよい民族、より良い軍隊をつくれるようになります」とも書かれています。
また、<軍人をつくる教育>の項目では、
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しかし、あるテストを通過できず、結局、パイロットにはなれませんでした。
・・同期生でパイロットになれたのは候補生600人のうちわずか20人です。
・・今ふり返ると、18~21歳という人生の考え方の土台をつくる極めて重要な時期に、若者が徴兵で軍隊生活を送らなければならないのは非常に危険です。最終的に頼りになるのは軍隊だ、問題は武力によって解決ができるという「力への信仰」ができてしまいます。
イスラエルでは軍があがめられていて、カルト宗教のようだと思うことがあります。
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学校と軍隊を通じて「国のために死ぬのはすばらしい」と思い込むわたしのような国民をつくりあげた国の教育の罪は、非常に重いと重います。
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「第2章 軍隊を疑う」では、ダニー氏はその後日本に来て、日本人女性と知り合い秩父に住むことになりますが、イスラエルがパレスチナ人たちに対する度重なる攻撃について、いかにそれが酷いものであったかを語り、<ナチズムに引きずられて行くイスラエル>では次のように述べています。
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イスラエルが右傾化していくことがひどく不安でした。
あのナチズムに辛酸をなめさせられたユダヤ人が創った国が、そのナチズムの方向に引きずられていく。
こういう人たちの決定で引き起こされた戦争に行くことなど、わたしは真っ平ごめんです。
しかし、友人たちはさほど深刻に受け止めてはいないようでした。
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また、<「敵」はつくられる>では、
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わたしは兵役を終えたばかりでイスラエルから日本に来た当初、憲法9条を知り、「軍隊を持たずに到底国は守れない。軍隊を持たないなんて全く非現実的だ」と思いました。
しかし、2008年のイスラエル軍のガザ侵攻から軍隊を徹底的に疑うようになった結果、今では軍隊を持たないことこそが、実は本当に国を守る基本だと考えるようになりました。
「武器に頼るとキリがない」のです。
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またここでは、アメリカとイスラエルの軍事的な深い関係も述べられています。
「第3章 虐殺された民族が虐殺する」では、2011年にアウシュビッツへ家族5人で旅行したことが述べられています。
そして次のように述べられています。
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政治指導者にとって、「敵」をつくれば民衆を扇動し、統治しやすいのです。
差別は絶対に許されません。ただ、わたしが見るところユダヤ人の側にも「敵」として利用されやすい面がありました。
ユダヤ人はローマに滅ぼされ、世界各地に離散した後も2000年間、ユダヤ教の「選民思想」のもと、戒律を守って土曜日を休み、同じ食べ物を食べ、同じ祭りを続けてきました。
また服装や容姿も独特です。男性はキッパと呼ばれる小さな帽子をかぶり、あるいは、「超正統派」(ハレーディーム=神を畏れる人)と呼ばれる人々はヒゲを長く伸ばし、黒ずくめの服装に山高帽のような帽子をかぶっています。
これらの習俗は、悪意のある政治指導者からすれば、「あいつらが敵だ」と指さしやすいのでしょう。
しかし、ユダヤ人は離散した地域の習俗にあわせず、自分たちの習俗を貫き通しました。
わたしたちは神様に選ばれた民族。他の民族とは違う。
わたしたちは優れている。
差別されればされるほど、逆にこのような意識が強くなっていきました。
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また、
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2000年もの間、「来年はエルサレムで礼拝を」はユダヤ人同士の挨拶の決まり文句でした。
それが、ホロコーストを経てパレスチナ人の土地を奪い、イスラムを建国することでついに実現しました。
ゆえに、払った犠牲のあまりの大きさから、また周りをアラブ諸国に囲まれている状況から、この国だけは何としてでも守らなければならないという意識が非常に強くなりました。その際、言論や外交に頼るのではなく、武器を手に取ってしまいまいた。
銃の引き金を引いてしまったのです。
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ホロコーストを体験したユダヤ人は、戦争や大量殺戮の非人道性を世界で一番身に染みて感じたはずなのに、その体験を歪めてしまいました。わたしたちは未熟でした。
ここにシオニズムの失敗の原因があります。
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そして、<和平のためにはどうすればいいか>では次のように述べています。
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まずイスラエルは、何よりもパレスチナ占領政策を勇気をもって中止し、既成事実に引きずられずにいヨルダン川西岸地域などのユダヤ人入植地から撤退すべきです。
それから、エルサレムには岩のドームというイスラム教徒の聖地があり、メッカやメディナの次に大事な場所ですが、すぐそばには「嘆きの壁」というユダヤ教徒の聖地もあり、この2つは分けられないので国際管理のもとに置くべきです。
その他、パレスチナの和平のためには教育の問題が大きいので、パレスチナ人とユダヤ人を保育園から一緒に教育する、学校ではアラビア語を必修にする、パレスチナ人とユダヤ人の若者の交流の機会を増やすなどです。
さらに、イスラエルは常々、「我々は平和を望んでいいる」と宣伝しているのですから、積極的に平和を創造するために「平和大使」を置くべきだと思います。
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「第4章「全ての暴力に反対します」」の<抑止力という「いたちごっこ」>という項目では、次のようなことが述べてあります。
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声を上げようと決意したわたしは、2009年からSNSでの発信だけでなく、戦争、原発、人権などをテーマに講演活動も始めました。
小・中・高校、大学、教育委員会、自治体、教員組合、労働組合、生活協同組合、脱原発の市民グループ、「9条の会」などに呼ばれ、2022年末までに北は北海道の宗谷から南は沖縄の石垣島まで通算約600回講演し、のべ2万人が聴いてくれました。
その講演でよく取り上げるのが「抑止力」をどう考えるかという問題です。
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そして、つぎのようなことを述べています。
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「武力による平和」。これがウソであることは毎日のようにイスラエルで証明されているのです。この現実の上に、2023年10月に起きたハマスとイスラエルの戦争もあります。
他方、日本はどうでしょう。平和憲法のもと、憲法9条のもと、2023年まで戦後78年間も戦争はなかったではありませんか。
歴史が証明しています、答えは出ているのです。
憲法9条の理想を実現させましょう。
憲法9条は、かつての日本が現在のイスラエルのように「武力による平和」の泥沼に陥った果てに破滅した痛切な反省のもとに生まれました。
憲法9条こそ、抑止という「いたちごっこ」、やられたらやり返すという復讐の論理を乗り越える大人の知恵、人類の智慧です。
武器は棄てるしかありません。
日米安全保障条約に基づく日米軍事同盟はやめるしかありません。
「非武装中立」こそ。憲法の精神です。
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また、<「下からの改革」をこそ>では、こんなことも述べています。
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わたしは埼玉県11区の「オール11区市民の会」共同代表もしています。
この「市民の会」は市民と野党が共闘し、政権交代の実現が目標です。
戦争や原発を止めるには、政権交代が大きな力になるのはいうまでもありません。
このように生活の中で、市民グループで、地域から政治を変える行動の積み重ねによって必ず国レベルの政治も変えられます。
そのような「下からの」改革こそが、この国の民主主義や人権感覚を成熟させていくのだと思います。
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この本は、現在起きているイスラエルのガザ侵攻・虐殺を考えるうえでまた、大動乱の世界の中で、私たちが今後どのようにすすむべきかを考える上で、大変参考になる本だと思います。
また世界大動乱の中で、2000年来の歴史の宿題が正しく解決されればとも思います。
第一刷発行は、2023年12月20日になっています。是非お読みください
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◆ 2024年『2・12総決起集会』のご案内
メインテーマ
・今こそ反戦・平和の運動を教育と社会に
・「日の丸・君が代」強制反対
・「10・23通達」処分撤回
日時:2024年2月12日(月)13:15開場 13:30開会
場所:文京区民センター・3A
講演:大内裕和さん(武蔵大学教授)
演題「21世紀ファシズムと戦争にどう立ち向かうのか」
発言:おもに現場から(7人を予定)
当日の資料代:500円
賛同金(個人1000円、団体2000円。
振込先・ゆうちょ 00100-2-611187)
主催:都教委包囲・首都圏ネット
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千葉高教組『日の丸・君が代』対策委員会」のホームページ
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