<がけっぷち 「石原銀行」>(1)
● 400億円増資 根拠示さず『延命』
石原慎太郎東京都知事が二期目の目玉公約に掲げ、「石原銀行」とも呼ばれてきた新銀行東京。都が一千億円を出資して三年前に開業したが、知事が「進むも地獄、引くも地獄」と嘆く経営状態だ。開会中の都議会では、さらなる税金投入の是非が焦点。五つのキーワードで、新銀行の今を浮き彫りにする。
再建に向け、都は四百億円を追加出資する方針を示した。当初出資した一千億円も含めると、都民一人当たり約一万千円の負担になる計算だ。
将来性を見込める中小企業の支援を目的に、無担保・第三者保証不要の融資を進めてきたが、融資の焦げ付きなどで累積赤字は一千億円に迫り、資本金千百八十七億円を食いつぶしかねない危機にある。

「限られた選択肢の中では、もうこれしかない」。石原知事は都議会で、事業清算や破たん処理を回避すべく、同行がまとめた七ページの「再建計画」を“担保”に増資への理解を求めた。実現すれば、同行の資本金は千五百億円余りに。都庁舎の建設費に匹敵する巨額だ。だが、なぜ四百億円なのか、その根拠はいまだ明示されていない。
同行内部でも「全面撤退」のシナリオが検討されたという。だが、今撤退すると千五百億-二千億円とも試算される追加負担が都民にのしかかる。そこで選んだのが当面の「延命」。その意味を、同行関係者は、こう表現した。
「“軟着陸”するための、終わりの始まりだ」
『東京新聞』(2008年3月5日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080305.html
<がけっぷち 「石原銀行」><(3)
● だぶつく預金 高金利のツケ重く
一年もの定期預金は0・5%、三年は1・5%、五年は1・7%-。新銀行東京が二〇〇六年五-九月に展開した預金獲得のためのキャンペーンの金利だ。
同年五月、国内の銀行や信用金庫などの平均金利(預入金額一千万円以上)は、一年0・08%、三年0・296%、五年0・399%(日銀調べ)。いかに高金利で集めていたかが分かる。
三年前に開業したばかりの同行にとって、融資に回す原資となる預金獲得は至上命令。キャンペーンのかいあって、〇六年四月から九月までのわずか半年間で、預金残高を二千二百三十五億円上乗せした。だがその戦略が、自らを債務超過の土俵際に追い詰める要因にもなった。
高金利の定期預金が預金全体の九割超という事情から、昨年九月中間決算で資金調達コストを示す「預金利回り」は1・15%。東京都民銀行(0・24%)などと比べ、金利負担の重さが際立つ。新銀行設立を主導した石原慎太郎都知事も「べらぼうな金利だ。こんな金融機関、ほかにはないねえ。考え直していかないと」と嘆いた。
同行の誤算は、預金をどのくらい融資で運用できたかを示す「預貸率」をみても明らかだ。黒字化に向けた預貸率水準を50%に据えるが、直近では40%止まり。預金が融資に回らずにだぶつく形になり、金利負担ばかりが膨らんだ。高金利で預金を大量に集めたツケ、甘い融資審査による相次ぐ焦げ付き。金融は素人の行政側が主導した「士族の商法」とのやゆもちらつく。
『東京新聞』(2008年3月7日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080307-2.html
がけっぷち 「石原銀行」>(4)
● 続く代表交代 責任なすり合い
「訴えてやりたい」。石原慎太郎東京都知事がそう漏らすのを、知事周辺は昨年来、何度も耳にした。二期目の看板政策に掲げながら、経営難にあえぐ新銀行東京。思惑通りに進まぬいら立ちの矛先は、トヨタ自動車出身で初代の経営トップ、仁司泰正元代表ら旧経営陣に向かっている。
「乱脈というか、『半年間持つ会社なら、つぶれても構わんからどんどん貸せ』と指導していた」「車のセールスとは違うんだから」
仁司氏らの責任追及に躍起になる石原知事。同行の「終戦処理」(同知事)を託された前都港湾局長の津島隆一・現代表も、「デフォルト(債務不履行)を容認するような業務執行、隠ぺい体質など、非常識な経営実態が明らかになってきた」と、法的措置を含めた対応に言及した。
事実、仁司氏ら旧経営陣が引責辞任した昨年六月、八百四十九億円もの累積赤字が明るみに出た。融資拡大路線を突き進む一方、甘い審査で焦げ付きが多発。それでも融資促進に努めた行員に、最高で二百万円の報奨金を出していた。
続いて代表に就いた、りそな銀行出身の森田徹氏は体調を崩し、わずか五カ月で退任した。開業から三年足らずで経営トップは津島氏で三代目。石原知事は早くも、再建に向けた経営陣刷新にも言及している。
同行関係者は「銀行内部で、責任をなすり付け合っている」と嘆いた。旧経営陣の一人は「都はもちろん、日銀も金融庁もオーケーしたルールに基づいただけ。何も悪いことをやったつもりはない」と言う。
税金一千億円を投じながら、経営難で四百億円の増資要請に至った「責任」をめぐり、泥仕合が透けて見える。
『東京新聞』(2008年3月8日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080308-2.html
● 400億円増資 根拠示さず『延命』
石原慎太郎東京都知事が二期目の目玉公約に掲げ、「石原銀行」とも呼ばれてきた新銀行東京。都が一千億円を出資して三年前に開業したが、知事が「進むも地獄、引くも地獄」と嘆く経営状態だ。開会中の都議会では、さらなる税金投入の是非が焦点。五つのキーワードで、新銀行の今を浮き彫りにする。
再建に向け、都は四百億円を追加出資する方針を示した。当初出資した一千億円も含めると、都民一人当たり約一万千円の負担になる計算だ。
将来性を見込める中小企業の支援を目的に、無担保・第三者保証不要の融資を進めてきたが、融資の焦げ付きなどで累積赤字は一千億円に迫り、資本金千百八十七億円を食いつぶしかねない危機にある。



「限られた選択肢の中では、もうこれしかない」。石原知事は都議会で、事業清算や破たん処理を回避すべく、同行がまとめた七ページの「再建計画」を“担保”に増資への理解を求めた。実現すれば、同行の資本金は千五百億円余りに。都庁舎の建設費に匹敵する巨額だ。だが、なぜ四百億円なのか、その根拠はいまだ明示されていない。
同行内部でも「全面撤退」のシナリオが検討されたという。だが、今撤退すると千五百億-二千億円とも試算される追加負担が都民にのしかかる。そこで選んだのが当面の「延命」。その意味を、同行関係者は、こう表現した。
「“軟着陸”するための、終わりの始まりだ」
『東京新聞』(2008年3月5日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080305.html
<がけっぷち 「石原銀行」><(3)
● だぶつく預金 高金利のツケ重く
一年もの定期預金は0・5%、三年は1・5%、五年は1・7%-。新銀行東京が二〇〇六年五-九月に展開した預金獲得のためのキャンペーンの金利だ。
同年五月、国内の銀行や信用金庫などの平均金利(預入金額一千万円以上)は、一年0・08%、三年0・296%、五年0・399%(日銀調べ)。いかに高金利で集めていたかが分かる。
三年前に開業したばかりの同行にとって、融資に回す原資となる預金獲得は至上命令。キャンペーンのかいあって、〇六年四月から九月までのわずか半年間で、預金残高を二千二百三十五億円上乗せした。だがその戦略が、自らを債務超過の土俵際に追い詰める要因にもなった。
高金利の定期預金が預金全体の九割超という事情から、昨年九月中間決算で資金調達コストを示す「預金利回り」は1・15%。東京都民銀行(0・24%)などと比べ、金利負担の重さが際立つ。新銀行設立を主導した石原慎太郎都知事も「べらぼうな金利だ。こんな金融機関、ほかにはないねえ。考え直していかないと」と嘆いた。
同行の誤算は、預金をどのくらい融資で運用できたかを示す「預貸率」をみても明らかだ。黒字化に向けた預貸率水準を50%に据えるが、直近では40%止まり。預金が融資に回らずにだぶつく形になり、金利負担ばかりが膨らんだ。高金利で預金を大量に集めたツケ、甘い融資審査による相次ぐ焦げ付き。金融は素人の行政側が主導した「士族の商法」とのやゆもちらつく。
『東京新聞』(2008年3月7日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080307-2.html
がけっぷち 「石原銀行」>(4)
● 続く代表交代 責任なすり合い
「訴えてやりたい」。石原慎太郎東京都知事がそう漏らすのを、知事周辺は昨年来、何度も耳にした。二期目の看板政策に掲げながら、経営難にあえぐ新銀行東京。思惑通りに進まぬいら立ちの矛先は、トヨタ自動車出身で初代の経営トップ、仁司泰正元代表ら旧経営陣に向かっている。
「乱脈というか、『半年間持つ会社なら、つぶれても構わんからどんどん貸せ』と指導していた」「車のセールスとは違うんだから」
仁司氏らの責任追及に躍起になる石原知事。同行の「終戦処理」(同知事)を託された前都港湾局長の津島隆一・現代表も、「デフォルト(債務不履行)を容認するような業務執行、隠ぺい体質など、非常識な経営実態が明らかになってきた」と、法的措置を含めた対応に言及した。
事実、仁司氏ら旧経営陣が引責辞任した昨年六月、八百四十九億円もの累積赤字が明るみに出た。融資拡大路線を突き進む一方、甘い審査で焦げ付きが多発。それでも融資促進に努めた行員に、最高で二百万円の報奨金を出していた。
続いて代表に就いた、りそな銀行出身の森田徹氏は体調を崩し、わずか五カ月で退任した。開業から三年足らずで経営トップは津島氏で三代目。石原知事は早くも、再建に向けた経営陣刷新にも言及している。
同行関係者は「銀行内部で、責任をなすり付け合っている」と嘆いた。旧経営陣の一人は「都はもちろん、日銀も金融庁もオーケーしたルールに基づいただけ。何も悪いことをやったつもりはない」と言う。
税金一千億円を投じながら、経営難で四百億円の増資要請に至った「責任」をめぐり、泥仕合が透けて見える。
『東京新聞』(2008年3月8日)【新銀行東京】
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/shinginko/news/080308-2.html
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