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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

今のウクライナは25年後のニポン

2011年09月10日 | フクシマ原発震災
 ▼ 今のウクライナは25年後のニポン

 まずは、次の映像を観てほしい。わずか5分40秒ほどの映像だけど、これは、イタリアの国営放送局が、チェルノブイリの原発事故から25年を迎えた、現在のウクライナの首都キエフの病院を取材したものだ。日本語の字幕がついてるので、イタリア語が分からなくても大丈夫だけど、目が不自由で、音声変換ソフトを使って「きっこのブログ」を読んでくれてる人は、字幕を読むことはできないので、あたしが内容を説明しつつ進めてくから、映像は飛ばして本文を読み進んでほしい。
 ※『キエフ病院の子供たち 2011 - 原発事故のもたらしたもの』(2011/6/5)
http://www.youtube.com/watch?v=kFP-xx68q6Q&feature=player_embedded
 映像を観なかった人たちのためにザクッと解説すると、これは、現在のキエフの病院で治療を受けてる赤ちゃんたちの様子と、治療にあたってる医師へのインタビュー、そして、我が子を治療してもらってる若いお母さんへのインタビューで構成されてるドキュメンタリーだ。「悪性腫瘍(癌)」を始め、「二分脊椎症」「頭蓋骨腫瘍」「脳水腫」などの重病で、手術を控えている赤ちゃんもいれば、手の施しようのない赤ちゃんもいる。
 で、ここで考えて欲しいのは、これはウクライナの「現在の状況」だってことだ。ベッドに並んでる重病の赤ちゃんたちは、みんな、去年か今年に生まれた子たちで、そのお母さんやお父さんはと言えば、まだみんな若い。つまり、チェルノブイリの原発事故の時に子供だった人たちが、それから25年が経ち、大人になって、授かった子たちなのだ。
 ウクライナやベラルーシでは、チェルノブイリの原発事故で被曝した子供たちが、とてもたくさん甲状腺癌を発症したけど、幸いにも病気を免れた子供たちでも、自分が大人になってから子供を作ったら、こうした赤ちゃんが生まれて来たってワケだ。
 ウクライナは貧しい国なので、この病院はイタリアの慈善団体によって運営されてるんだけど、薬も備品も不足してて、手術の時のマスクもないため、看護士さんはマスクの代わりにガーゼを口にあててる。それでも、この病院で治療が受けられるのは、幸運な一部の子供たちだけだ。我が子のために私財を投げ売って訪れた親も多い。それなのに、インタビュアーと小児神経科のユリオロフ教授との間で、こんなやりとりがある。
 インタビュアー 「これらの癌の子供たちは、どれくらい生き延びることができるでしょうか?」
 ユリオロフ教授 「とても少しです。というか、多くが1歳未満で亡くなります。約10%の生存率です」

 私財を投げ売って我が子を病院に連れて来ても、10人のうち9人は1歳になる前に亡くなってしまうのだ。以下、このドキュメンタリーの中で報告されてる重要な部分を引用しておく。

 「(チェルノブイリの事故後)3歳以下の脳腫瘍の手術件数は6.2倍になった」
 「低量の被曝でも遺伝子の染色体に影響を与え、奇形、悪性腫瘍をもたらすのは明らか」
 「毎年ウクライナでは500から600人の奇形の子供を手術する。1990年、ここには1100万人の子供たちがいた。現在は800万人だが、奇形の出現数は変わっていない。つまり奇形の割合が増加したのだ」
 「放射線は子供たちの遺伝子を変えつつある。ここでは放射線の被害を見ることができる。日本なら見せないだろう。この国は貧困のために情報流出を阻止する手立てがない。だから、ウクライナは世界中に子供たちが癌に侵されている事実を示している」

 最後に、映像を観た人には繰り返しになっちゃうけど、後半の若いお母さんのインタビューも紹介しておく。
 お母さん 「息子は脳腫瘍です」
 インタビュアー 「息子さんの病気はチェルノブイリの事故によるものなのでしょうか?」
 お母さん 「私はそうだと思います。チェルノブイリのせいです。事故で汚染されたウクライナの環境のためです」
 インタビュアー 「あなたはいつ生まれましたか?」
 お母さん 「1986年です」
 インタビュアー 「同年代で、息子さんが病気の母親を知っていますか?」
 お母さん 「私の町、ミエプペトロフスカでは、私と同じ時期に出産したほとんどの母親が、病気の子供を抱えています

 ‥‥そんなワケで、この、ウクライナの首都キエフは、当時の人口が250万人、旧ソ連で3番目に大きな都市だった。だけど、チェルノブイリの原発から130キロも離れた街なので、政府は住民たちに避難指示を出さず、住民たちが原発事故のことを正式に知らされたのは、1986年4月29日の夜のテレビニュース、つまり、事故から2日半も経ってからだった。だけど、実際には、市民の多くが、クチコミで事故のことを知ってた。そして、原発が大爆発を起こしたというのに、正確な情報が何も入って来ないことから、パニック状態に陥る人たちも現われた。
 原発からの距離と風向きの関係で、キエフの放射線量が上昇し始めたのは、事故から3日後の4月30日からだと報告されてる。そして、政府からの避難指示はなかったけど、市民の半数近く、約100万人が、2~3週間のうちに、自主的に避難したと言われてる。
 で、チェルノブイリの場合は、事故から9日で原子炉をコンクリートで固めたから、あとは「すでに撒き散らされた放射性物質を何とかする」ってことがポイントだったんだけど、広範囲に渡っての除染なんて一朝一夕には片付かない。そのため、政府は、とにかく住民のほうをまず移住させ、それから除染に取り掛かることにした。ここまでの流れは、どう考えても、ニポン政府の今回の対応より、遥かに人道的と言えるだろう。
 ウクライナでは、事故後、住民の移住に関するガイドラインを法律で定めたんだけど、これがとっても良くできてるもので、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウムなどの放射性物質ごとの土壌汚染度と、年間の被曝量とをそれぞれ計測して、移住レベルに対応させてた。年間の被曝量だけで言えば、5ミリシーベルト以上「移住義務区域」1ミリシーベルト以上「移住権利区域」0.5ミリシーベルト以上「放射能管理強化区域」だった。
 ニポンでは、年間の被曝量がウクライナの「移住義務区域」の4倍にあたる20ミリシーベルトを超える地域だけを「計画的避難区域」に指定した上に、この指示を出したのが事故から1ヶ月後、実際に避難させたのが2ヶ月後だってんだから、あまりにも遅すぎるし酷すぎる対応だ。この中には、年間の被曝量が100ミリシーベルトや200ミリシーベルトを超える地域も含まれてたんだから、この地域に2ヶ月間も留まってた人たちは、すでに数10ミリシーベルトも被曝してるのだ。
 その上、ニポン政府は、子供にまで年間20ミリシーベルトの被曝を押し付けた。繰り返すけど、ウクライナでは、もっとも高い規準値が「5ミリシーベルト以上」で、この数値のエリアの住民は、政府によって強制的に移住させられたのだ。
 勘違いしないでほしいのは、これは一時的な「避難」や「疎開」じゃなくて、「移住」だってことだ。つまり、ウクライナでは、年間の被曝量が*5ミリシーベルトを超えるエリアは、もう人間が暮らすことができない土地だって判断したのだ。
 ‥‥そんなワケで、年間の被曝量が5ミリシーベルトを超える土地の住民に移住を義務づけたウクライナ政府と、子供にまで20ミリシーベルトの土地で暮らすことを強要したニポン政府、あまりにもカケ離れた両政府の対応だけど、さらに驚くのが、食べ物に関する暫定規準値だ。
 ニポンでは、水も、野菜も、果物も、肉も、魚も、ほとんどの食品の規準値を1kgあたり500ベクレルに設定したけど、ウクライナでは、毎日たくさん摂取する水は2ベクレル、毎日食べる野菜は40ベクレル、野菜よりは摂取量の少ない果物は70ベクレル、そして、肉は200ベクレル、魚は150ベクレルと、どれもニポンよりは遥かに厳しく設定してるし、それぞれの食材の摂取量まで考えて設定してるのだ。
 さらに言えば、ニポンでは、大人も子供も500ベクレルを押し付けられてるけど、ウクライナでは、こうした基準とは別に「幼児の基準」が設けてあり、幼児はどんな食材でも「1kgあたり最大40ベクレル」と決められてる。つまり、1kgあたり200ベクレルの肉や150ベクレルの魚は、大人や大きな子供は食べてもいいけど、幼児には食べさせちゃいけないことになってる。
 で、ここまで書いてきたことを総括すれば、チェルノブイリの事故の時に子供だったウクライナの人たちは、ニポンよりも遥かに厳しい居住区域制限を受け、ニポンよりも遥かに厳しい食品の汚染度制限まで受けて暮らして来たのに、大人になって子供を産んでみたら、冒頭で紹介した映像のような結果が待ってた‥‥ってことなのだ。
 だから、ウクライナの子供たちよりも遥かに汚染度の高い地域で暮らし、ウクライナの子供たちよりも遥かに汚染度の高い食材ばかり食べ続けて行ったニポンの子供たちが、今から15年後、20年後、25年後、大人になった時に、どんな結果が待ってるかは、火を見るよりも明らかだろう。
 ‥‥そんなワケで、昨日のことだけど、ツイッターで、東京都の世田谷区に住む若いお母さんが、2歳の娘さんの尿検査を依頼してやってもらったところ、セシウム134と137が検出されたってツイートしてた。
 数値としては微量だけど、そのお母さんは、あたしとおんなじくらい放射能を恐れてて、4月からトータルで2ヶ月ほど九州に疎開してたし、自宅では、お水は海外のミネラルウォーター、肉や魚や野菜は西日本のものと海外のものしか使ってなかったのに、それでもセシウムが検出されたってことは、何も気にせずに生活してる人たちの子供なんて、この子の何倍も何十倍も内部被曝してると思う
 そして、今のままの生活を続けてけば、たとえ甲状腺癌を発症しなかったとしても、大人になった時にどんなことになるか‥‥ってワケで、今日は最後に、もう1本、海外のドキュメンタリーを紹介する。
 これは、ドイツの放送局が福島を取材したものだけど、これも日本語の字幕がついてるので、ぜひ観てほしい。全編で8分ほどだけど、電力利権に牛耳られてるニポンのテレビ局が逆立ちしても放送できない内容がマウンテンな今日この頃なのだ。
 ※『ZDF Frontal21 福島原発事故の影響 (日本語字幕)』
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=WZiAWJVr0HU
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『きっこのブログ』(2011.08.31)

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