=『週刊新社会』【沈思実行(200)】=
☆ 虚妄の核燃料サイクル(中)
六ヶ所村は本州最北端、青森県の太平洋岸・三沢市から北へ、32㌔にわたって伸びる寒村だった。この広大な起伏に乏しい村を、一大コンビナート地帯にしようとしたのは、経済企画庁だった。
通産省の外郭団体「工業立地センター」が細かな計画を練っていた。
1969年に閣議決定された「新全国総合開発計画」の一環だった。
しかし、高度経済成長の夢を描いて、農民たちを土地から追い払い、3千ヘクタールもの土地を確保したが、突如としてのオイルショックの襲来、マスコミに喧伝された「巨大開発」は無惨にも破綻、進出企業は一社もなかった。
その背後から姿をあらわしたのが、本命の「核燃料サイクル」だった。ウラン濃縮工場、使用済み核燃料再処理工場、MOX燃料工場などを集中立地させる計画だった。
この計画が正式に発表されたのは、1984年になってからだった。
再処理工場の着工は1993年。信じられない事実だが、それから31年がたっても、いまだに試運転さえ成功していない。
民間企業ならとっくに倒産、あるいは経営者が事業の撤退を決断している。
経営主体である日本原燃の株主は、9電力と日本原電であり、各社が徴収する電気料金から、3千人の労働者の賃金などの経費が支払われている。
つまりは、全国の電力消費者がすべてを負担しているので、稼働せずとも黒字という構造なのだ。
社長、副社長は東電、関電から派遣されている。
93年の着工当時は、97年に完成のはずだった。
が、事故続きで、最後は最終のガラス固化体製造工程で、高レベルの放射性廃液が漏れてダウン。それ以来、毎年のように、完成予定時期を翌年に繰延べして発表、それも26回目となった。
もはや誰も信用していない。肝心のむつ市の中間貯蔵場の完成も遅れ、原発各社の廃棄物を置く「トイレ」は満杯に近づき、当面、自社の原発敷地内に、使用済み燃料を保管する方法を考えはじめた。前回書いた九州電力の玄海原発、四国電力の伊方原発である。
しかし、それは切迫詰まって慌てて駆け込む醜態なのだ。
『週刊新社会』(2024年7月3日)
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