◆ 日教組第69次教育研究全国集会の報告 (ひのきみ通信)
1月24日(金)~26日(日)、広島市に於いて日教組全国教研が開催され、前日の教文部長会議と3日間の全体会及び日本語教育分科会に参加した。今年度の千葉高教組からの参加は、私とレポーター(日本語教育分科会)1名・傍聴者1名の計3名だった。
また、同時期に実施した自主教研第21回「日の丸・君が代」問題全国交流集会にも「日の丸・君が代」対策委員2名が参加した。全体会や平和教育分科会報告集・自主教研などの様子について報告したい。
初日の全体会は、原爆ドーム近くの広島県立総合体育館で行われ、物々しい機動隊や警察に守られながら朝8時までに入場した。参加者は主催者発表で約3000人。
オープニングイベントで被爆ピアノの演奏と歌が紹介され、全体会は岡島委員長や現地実行委員長の広島高教組委員長の挨拶、清水書記長の基調報告、連合会長などの来賓挨拶があった。
広島高教組委員長は前日の会議で、「今日も県教委交渉だったが『給特法改正条例』の県議会提案をしたいので事前交渉を早くやりたいと言われた」と話した。12/4に給特法改悪が強行されたばかりだが、変形労働時間導入の攻撃が千葉でも間近かも知れないと感じた。
記念講演は、女優で人権活動家のサヘル・ローズさんの「出会いこそ、生きる力」の講演だった。
イランに生まれ戦禍で両親を亡くし孤児院で育った生い立ちや八歳で来日後の言葉や貧困・いじめに苦労した学校生活について話してくれた。彼女を助けた人々、孤児院からもらい受けた母親・校長室で日本語を教えた小学校長・食べ物を持参したスーパーの店員・一月以上匿った給食センターのおばさん・電車賃を貸したJR駅員など感動的なエピソードだった。
平和教育分科会には参加できなかったが、報告(レポート)集をじっくりと読むことができたので感想等を述べたい。
平和教育分科会の『要綱』には「日の丸・君が代」の語句は登場しないが、「情勢」にあいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の中止問題や天皇即位祝賀行事のマスコミ報道や大衆動員問題などを指摘し、「予想される討議の柱」には従来同様「(1)憲法に立脚した思想・良心の自由を保障する教育内容をどう確立するか」の文言が残っている。
レポート28本(昨年と同数)の報告集には、「日の丸・君が代」の語句が、唯一、鹿児島県教組の報告に登場するだけである。
レポートの中で次の3本の報告が印象に残った。
1本目は、大阪府教職員組合の『Imagine OKINAWA~高校「産社」のとりくみ~』。
一年の「産業社会と人間」の授業で、グループ調べ学習を行い、外部講師との出会いの企画を経て最終的にプレゼンまで生徒が作り上げる取り組みだった。
生徒が設定したテーマは、「敗戦した2つの国の歩みの違い」「従軍慰安婦」「沖縄基地問題」「原爆と核兵器」「メディアと戦争」などがあった。
「敗戦~」のグループは、中国籍の生徒の「中国では小学生だって南京大虐殺を学ぶのにどうして日本の高校生は知らないのか」という訴えがきっかけで、日本人生徒・ベトナムをルーツとする生徒とともに南京大虐殺や教科書問題・ドイツ平和村等について調べ発表した。
遠慮がちだった生徒が国籍を表明し在日外国人の子ども支援の活動に奮闘するほどに成長する様子が報告された。
「従軍慰安婦」を調べた女子生徒は、元慰安婦のハルモニたちの写真と言葉を涙ながらに力強く発表した。
彼女は3年次の「課題研究」では、在日韓国籍の教員からフラワーデモを紹介され友人と参加したことがきっかけで、「性暴力」をテーマとする論文『あなたの人生は誰のもの』を完成させた。
論文には、母親が経験した性被害に苦しんだことが綴られ、戦争と性暴力の関連・従軍慰安婦問題の普遍性を指摘していた。
「沖縄基地問題」を調べたグループは、大阪から沖縄に転居した高校生が沖縄の高校生と出会って沖縄の現状を知るという創作劇を上演し、基地問題を皆に伝えた。
その中の一人は3年次の「課題研究」で「今も続く沖縄戦」をテーマにし、秋休みに沖縄高教組の協力で戦跡や基地のフィールドワークを行った。
元白梅学徒隊の方から「沖縄までこんな若い方が会いに来てくれるなんて」と泣いて抱きしめられ、辺野古では座り込みを続ける人たちが排除される様子を目の当たりにし、「何でこんな大事なこと知らなかったのだろう。何で報道されないの?」と衝撃を受けたそうだ。
生徒それぞれが自らの問題と捉え学び、誰かと繋がりながら何ができるか考えを深めている素晴らしい実践だった。
2本目は福島県教職員組合の『福島県にいる人としての悩みと平和教育』。
発表者の原発問題や放射線教育についての生の問題意識が綴られ、その声は参加者皆に突き刺さったはずである。
「全国の方は福島県をどう思っているか?気にしてるのは福島県民か放射線か」
「放射線を心配する人は、時に福島県民を傷つける。食べて大丈夫?住んで大丈夫?」
「避難したかしないか・復興か未だ被災地か・補償金(裁判)問題は?で県民は分断されている」など深刻な訴えである。
報告は最後に「誰かが死んだり犠牲にならないと成り立たないことはやめたら良いと共感できると思うが、これすら一致できない人もいる。どうしたら良いのか?『誰か』が自分や家族でもそう考えられるのか?」で結んでいた。
3本目は鹿児島県高教組の『現代文の授業における主権者教育の実践』。
昨年夏の参院選前に行った現代文の授業実践で、「何を根拠にどのような投票行動を取ればどういう結果に繋がる可能性があるのか」を学ぶアプローチが重要と指摘した。
グループ或いは全体で「あなたはどんな国がいい?どうしたら近づく?主権者(国民)に何ができる?」を生徒に討論させ、さらに「この選挙で問われているのは?」「自分の興味あるアジェンダについて候補者の主張は?」を生徒に調べ考えさせた。
生徒の選挙後の感想では「私は投票に行って自分の意見を表明できて充足感で一杯だった」「学校で普通に政治の話をできる環境が欲しい」という声が紹介された。
他にも、東京都高教の『沖縄県民投票を題材にした平和学習』・熊本県高教組の原爆遺構や権力者による弾圧の史跡をめぐる『長崎平和の旅の10年』など非常に勉強になる報告も多かった。
参加者の世代交代で若手が増えたはずだが、多くの平和学習の実践を交流し勇気づけられたと思う。
そのほか、私は右翼街宣車は見かけずアナウンスも一度も聞かなかったが、新聞では初日に90台が街宣活動し渋滞が続発したと報じられた。
また、「産経新聞」は1/25朝刊では「政治色がにじむ内容も少なくない。政府は日本を『米国とともに戦争のできる国』にするため『戦争放棄・戦力不保持』を謳った第九条を破棄する憲法改悪に突進している、などと書き込まれたレポートも見られた」、1/26朝刊では平和教育分科会の報告に対して「小学生に『基地危険』 米軍基地反対に子どもたちを誘導するような政治色の強いレポート」、総合学習分科会の「身近な地域での強制連行・強制労働の実態」を調べた報告に対し「児童の感想には自虐的な言葉が並んだ。朝鮮人強制連行をめぐっては様々な説がある」と不当な攻撃記事を掲載した。
1月25日夜の自主教研「日の丸・君が代」問題全国交流集会(於RCC文化センター)にも参加した。
この集会は、1999年国旗国歌法の成立に危機感を抱いた仲間たちが全国教研に集まった機会をとらえて第1回の集会を開催し、以後、毎年の全国教研期間中に開催地で続けてきた集会である。
今でも学校現場や裁判などで「日の丸・君が代」強制反対の闘いを続けている仲間がいる。日教組が闘いから事実上、逃げている状況下、仲間を励ます貴重な交流集会である。
参加者は21名だったが、大阪や東京・北海道・福岡・広島・宮城・新潟・千葉など全国の闘いが報告された。
平和教育分科会も自主教研も、毎回刺激を受け、教員の研修として最高レベルだと断言できる。参加しないのはもったいない。是非、青年教職員にも魅力を伝え参加者を増やしたい。
「千葉高教組「日の丸・君が代」対策委員会『ひのきみ通信 第221号』」(2020年2月15)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/20/221.htm
千葉高教組・天羽高校分会 石井 泉
1月24日(金)~26日(日)、広島市に於いて日教組全国教研が開催され、前日の教文部長会議と3日間の全体会及び日本語教育分科会に参加した。今年度の千葉高教組からの参加は、私とレポーター(日本語教育分科会)1名・傍聴者1名の計3名だった。
また、同時期に実施した自主教研第21回「日の丸・君が代」問題全国交流集会にも「日の丸・君が代」対策委員2名が参加した。全体会や平和教育分科会報告集・自主教研などの様子について報告したい。
初日の全体会は、原爆ドーム近くの広島県立総合体育館で行われ、物々しい機動隊や警察に守られながら朝8時までに入場した。参加者は主催者発表で約3000人。
オープニングイベントで被爆ピアノの演奏と歌が紹介され、全体会は岡島委員長や現地実行委員長の広島高教組委員長の挨拶、清水書記長の基調報告、連合会長などの来賓挨拶があった。
広島高教組委員長は前日の会議で、「今日も県教委交渉だったが『給特法改正条例』の県議会提案をしたいので事前交渉を早くやりたいと言われた」と話した。12/4に給特法改悪が強行されたばかりだが、変形労働時間導入の攻撃が千葉でも間近かも知れないと感じた。
記念講演は、女優で人権活動家のサヘル・ローズさんの「出会いこそ、生きる力」の講演だった。
イランに生まれ戦禍で両親を亡くし孤児院で育った生い立ちや八歳で来日後の言葉や貧困・いじめに苦労した学校生活について話してくれた。彼女を助けた人々、孤児院からもらい受けた母親・校長室で日本語を教えた小学校長・食べ物を持参したスーパーの店員・一月以上匿った給食センターのおばさん・電車賃を貸したJR駅員など感動的なエピソードだった。
平和教育分科会には参加できなかったが、報告(レポート)集をじっくりと読むことができたので感想等を述べたい。
平和教育分科会の『要綱』には「日の丸・君が代」の語句は登場しないが、「情勢」にあいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の中止問題や天皇即位祝賀行事のマスコミ報道や大衆動員問題などを指摘し、「予想される討議の柱」には従来同様「(1)憲法に立脚した思想・良心の自由を保障する教育内容をどう確立するか」の文言が残っている。
レポート28本(昨年と同数)の報告集には、「日の丸・君が代」の語句が、唯一、鹿児島県教組の報告に登場するだけである。
レポートの中で次の3本の報告が印象に残った。
1本目は、大阪府教職員組合の『Imagine OKINAWA~高校「産社」のとりくみ~』。
一年の「産業社会と人間」の授業で、グループ調べ学習を行い、外部講師との出会いの企画を経て最終的にプレゼンまで生徒が作り上げる取り組みだった。
生徒が設定したテーマは、「敗戦した2つの国の歩みの違い」「従軍慰安婦」「沖縄基地問題」「原爆と核兵器」「メディアと戦争」などがあった。
「敗戦~」のグループは、中国籍の生徒の「中国では小学生だって南京大虐殺を学ぶのにどうして日本の高校生は知らないのか」という訴えがきっかけで、日本人生徒・ベトナムをルーツとする生徒とともに南京大虐殺や教科書問題・ドイツ平和村等について調べ発表した。
遠慮がちだった生徒が国籍を表明し在日外国人の子ども支援の活動に奮闘するほどに成長する様子が報告された。
「従軍慰安婦」を調べた女子生徒は、元慰安婦のハルモニたちの写真と言葉を涙ながらに力強く発表した。
彼女は3年次の「課題研究」では、在日韓国籍の教員からフラワーデモを紹介され友人と参加したことがきっかけで、「性暴力」をテーマとする論文『あなたの人生は誰のもの』を完成させた。
論文には、母親が経験した性被害に苦しんだことが綴られ、戦争と性暴力の関連・従軍慰安婦問題の普遍性を指摘していた。
「沖縄基地問題」を調べたグループは、大阪から沖縄に転居した高校生が沖縄の高校生と出会って沖縄の現状を知るという創作劇を上演し、基地問題を皆に伝えた。
その中の一人は3年次の「課題研究」で「今も続く沖縄戦」をテーマにし、秋休みに沖縄高教組の協力で戦跡や基地のフィールドワークを行った。
元白梅学徒隊の方から「沖縄までこんな若い方が会いに来てくれるなんて」と泣いて抱きしめられ、辺野古では座り込みを続ける人たちが排除される様子を目の当たりにし、「何でこんな大事なこと知らなかったのだろう。何で報道されないの?」と衝撃を受けたそうだ。
生徒それぞれが自らの問題と捉え学び、誰かと繋がりながら何ができるか考えを深めている素晴らしい実践だった。
2本目は福島県教職員組合の『福島県にいる人としての悩みと平和教育』。
発表者の原発問題や放射線教育についての生の問題意識が綴られ、その声は参加者皆に突き刺さったはずである。
「全国の方は福島県をどう思っているか?気にしてるのは福島県民か放射線か」
「放射線を心配する人は、時に福島県民を傷つける。食べて大丈夫?住んで大丈夫?」
「避難したかしないか・復興か未だ被災地か・補償金(裁判)問題は?で県民は分断されている」など深刻な訴えである。
報告は最後に「誰かが死んだり犠牲にならないと成り立たないことはやめたら良いと共感できると思うが、これすら一致できない人もいる。どうしたら良いのか?『誰か』が自分や家族でもそう考えられるのか?」で結んでいた。
3本目は鹿児島県高教組の『現代文の授業における主権者教育の実践』。
昨年夏の参院選前に行った現代文の授業実践で、「何を根拠にどのような投票行動を取ればどういう結果に繋がる可能性があるのか」を学ぶアプローチが重要と指摘した。
グループ或いは全体で「あなたはどんな国がいい?どうしたら近づく?主権者(国民)に何ができる?」を生徒に討論させ、さらに「この選挙で問われているのは?」「自分の興味あるアジェンダについて候補者の主張は?」を生徒に調べ考えさせた。
生徒の選挙後の感想では「私は投票に行って自分の意見を表明できて充足感で一杯だった」「学校で普通に政治の話をできる環境が欲しい」という声が紹介された。
他にも、東京都高教の『沖縄県民投票を題材にした平和学習』・熊本県高教組の原爆遺構や権力者による弾圧の史跡をめぐる『長崎平和の旅の10年』など非常に勉強になる報告も多かった。
参加者の世代交代で若手が増えたはずだが、多くの平和学習の実践を交流し勇気づけられたと思う。
そのほか、私は右翼街宣車は見かけずアナウンスも一度も聞かなかったが、新聞では初日に90台が街宣活動し渋滞が続発したと報じられた。
また、「産経新聞」は1/25朝刊では「政治色がにじむ内容も少なくない。政府は日本を『米国とともに戦争のできる国』にするため『戦争放棄・戦力不保持』を謳った第九条を破棄する憲法改悪に突進している、などと書き込まれたレポートも見られた」、1/26朝刊では平和教育分科会の報告に対して「小学生に『基地危険』 米軍基地反対に子どもたちを誘導するような政治色の強いレポート」、総合学習分科会の「身近な地域での強制連行・強制労働の実態」を調べた報告に対し「児童の感想には自虐的な言葉が並んだ。朝鮮人強制連行をめぐっては様々な説がある」と不当な攻撃記事を掲載した。
1月25日夜の自主教研「日の丸・君が代」問題全国交流集会(於RCC文化センター)にも参加した。
この集会は、1999年国旗国歌法の成立に危機感を抱いた仲間たちが全国教研に集まった機会をとらえて第1回の集会を開催し、以後、毎年の全国教研期間中に開催地で続けてきた集会である。
今でも学校現場や裁判などで「日の丸・君が代」強制反対の闘いを続けている仲間がいる。日教組が闘いから事実上、逃げている状況下、仲間を励ます貴重な交流集会である。
参加者は21名だったが、大阪や東京・北海道・福岡・広島・宮城・新潟・千葉など全国の闘いが報告された。
平和教育分科会も自主教研も、毎回刺激を受け、教員の研修として最高レベルだと断言できる。参加しないのはもったいない。是非、青年教職員にも魅力を伝え参加者を増やしたい。
「千葉高教組「日の丸・君が代」対策委員会『ひのきみ通信 第221号』」(2020年2月15)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/20/221.htm
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