《ハーバー・ビジネス・オンラインから》
▼ 石炭や原子力でつくった電気は使いたくない! 誰でもできるパワーシフト
志葉玲
原発ゼロで自然エネルギー使おうをめざすソーシャルゆるキャラ「ゼロノミクマ」くん (パワーシフト・キャンペーンサイトより)
▼ 電力小売り全面自由化で、一般家庭も電力会社を選べるように
地球温暖化関連の国際会議では名指しで批判されているのに、日本は大量のCO2を排出する石炭火力による発電を続け、福島第一原発事故後も原発からの脱却をしようとしない。
私たちの生活に電気は欠かせない。しかし、環境や社会に対し無責任な電力会社の電気を使うことは、結果的にそうした電力会社の振る舞いに加担しているとも言える。そこで大事なのは「どこの電力会社から電気を買うか」ということだ。
2016年より、日本でも電力小売り全面自由化によって一般家庭も電力会社を選べるようになった。
当初は選択肢が少なかったものの、現在では太陽光や風力など再生可能エネルギー供給を目指す電力会社も各地に現れている。
▼ なかには、持続可能性の低い事業者もある
再生可能エネルギーが中心となった持続可能なエネルギー社会にむけて、電力(パワー)のあり方を変えていくこと。そうしたキャンペーンが「パワーシフト」だ。同キャンペーン事務局の吉田明子さんは「自分の使う電気を選ぶことは未来を変えることでもあります」という。
パワーシフト・キャンペーンのサイトでは、パワーシフトのあり方で重要な7つの点から、おすすめの電力会社を紹介している。
吉田さんは「再生可能エネルギーといっても、本当に環境に良いものを選ぶことが大事です」と言う。
「なかには森林を大規模に切り開いて設置するメガソーラーや、海外産パーム油を使ったバイオマス発電などがありますし、大規模ダムによる水力発電も、しばしば再生可能エネルギー扱いされることがあります。こうした電源は、環境への負荷が大きいので要注意です。私たちは、そうした持続可能性の低いものではなく、より持続可能性に配慮して電気を調達する事業者を紹介しているので、ぜひサイトをご覧ください」(吉田さん)
▼ 電力会社の契約を変えることは、簡単にできる
実際、パワーシフト・キャンペーンのサイトには、自治体がやっている電力会社、地域密着型の電力会社、生協系の電力会社、複数の地域に電気を供給している電力会社とタイプ別に各電力会社の情報が掲載されている。
そこには、太陽光や風力、バイオマス、小水力など、どのような再生可能エネルギーによる電気を供給しているかなどの情報が掲載されている。
さらに詳しい情報が知りたい場合は、各電力会社のウェブサイトで確認するといい。
電力会社の契約を変えるとなると、ちょっと大変そうに思えるかもしれない。だが、吉田さんは「とても簡単ですよ」と言う。
「物理的な電気の流れは変わらないため、設備工事はいりません。選んだ会社に、ウェブや電話などで申し込みするだけです。アパートやマンションでも建物一括契約のものを除けば切り替え可能ですし、リスクもありません。もし選んだ会社が仮に倒産したりしても停電したりはしません。電力の価格もほとんど変わりありません」(吉田さん)
実際、筆者も「パワーシフト」してみたのだが、ネット上の手続きだけで、ものの10分程度も時間はかからなかった。その後も、特にトラブルもなく電気を使えている。何より、原発や石炭火力発電による電気ではない、よりエコな電気を使えるということがすばらしい。
今まで、電気を使うたびに後ろめたい気持ちになったものだが、非常に気分が楽になる。だからと言って電気の無駄遣いはするべきではないし、省エネに努めるべきではあるのだが。
▼ 学校のパワーシフトは大きな教育効果もある
パワーシフトは個人だけではなく、企業や学校、自治体も行っているとのこと。
例えば、埼玉県飯能市にある私立中学高等学校「自由の森学園」は「未来の社会を担う子どもたちが学び生活する場である学校は、地球と社会の持続可能性に無関心であってはならないとの考えが基本にある」とのことから、パワーシフトに踏み切った。
同校には、契約した「みんな電力」のスタッフらが訪れ、環境問題の選択授業で生徒たちと議論するなど、教育効果としても大きなメリットがあるとのこと。
このような「パワーシフト体験談」もウェブサイトで見ることができる。
吉田さんは「パワーシフトによって、ただ電気を買うだけじゃなく、地元や発電所のある地域とつながりができるのです」と語る。
「例えば電力会社によっては、発電所の見学ツアーや子ども向けワークショップを行ったり、売電利益の一部をつかって子育て支援や福祉など地元の社会貢献活動を支援したりしています」
▼ 再生可能エネルギーに後ろ向きな大手電力会社の姿勢を変えるために
昨年末のC0P25(第25回気候変動枠組条約会議)では、G7の中でも唯一石炭を推進し続ける日本に批判が集まった。
多くの人々がパワーシフトして再生可能エネルギー中心の電力会社に乗り換えることは、原発や石炭火力発電を抱える既存の大手電力会社に対するメッセージにもなる。
パワーシフトした後にそれまで契約していた大手電力会社に「石炭火力や原発はお断りなので」と電話やメール、FAXなどで伝えることも重要だろう。
パワーシフト・キャンペーンでも、乗り換えの“見える化”のため、パワーシフト「1億円キャンペーン」を呼びかけている。
これは、再生エネルギー中心の電力会社を選んだ人々の「電気代」を積み上げていくというもの。
パワーシフト・キャンペーンの特設ウェブサイト上で、自身の地域やこれまでの年間電気料金などを書き込んでいくことで、パワーシフトの動きを可視化していこうという試みだ。
こうした動きが活発になっていけば、まだまだ再生可能エネルギーに後ろ向きな大手電力会社の姿勢も変えられるかもしれない。
<取材・文/志葉玲>
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2020.01.19)
https://hbol.jp/211104?cx_clicks_ranking=8_title
▼ 石炭や原子力でつくった電気は使いたくない! 誰でもできるパワーシフト
志葉玲
原発ゼロで自然エネルギー使おうをめざすソーシャルゆるキャラ「ゼロノミクマ」くん (パワーシフト・キャンペーンサイトより)
▼ 電力小売り全面自由化で、一般家庭も電力会社を選べるように
地球温暖化関連の国際会議では名指しで批判されているのに、日本は大量のCO2を排出する石炭火力による発電を続け、福島第一原発事故後も原発からの脱却をしようとしない。
私たちの生活に電気は欠かせない。しかし、環境や社会に対し無責任な電力会社の電気を使うことは、結果的にそうした電力会社の振る舞いに加担しているとも言える。そこで大事なのは「どこの電力会社から電気を買うか」ということだ。
2016年より、日本でも電力小売り全面自由化によって一般家庭も電力会社を選べるようになった。
当初は選択肢が少なかったものの、現在では太陽光や風力など再生可能エネルギー供給を目指す電力会社も各地に現れている。
▼ なかには、持続可能性の低い事業者もある
再生可能エネルギーが中心となった持続可能なエネルギー社会にむけて、電力(パワー)のあり方を変えていくこと。そうしたキャンペーンが「パワーシフト」だ。同キャンペーン事務局の吉田明子さんは「自分の使う電気を選ぶことは未来を変えることでもあります」という。
パワーシフト・キャンペーンのサイトでは、パワーシフトのあり方で重要な7つの点から、おすすめの電力会社を紹介している。
1. 「持続可能な再エネ社会への転換」という理念があるということだ。
2. 電源構成などの情報開示をしている
3. 再生可能エネルギーを中心として電源調達する
4. 調達する再生可能エネルギーは持続可能性のあるものであること
5. 地域や市民によるエネルギーを重視している
6. 原子力発電や石炭火力発電は使わない
7. 大手電力会社と資本関係、提携がないこと
吉田さんは「再生可能エネルギーといっても、本当に環境に良いものを選ぶことが大事です」と言う。
「なかには森林を大規模に切り開いて設置するメガソーラーや、海外産パーム油を使ったバイオマス発電などがありますし、大規模ダムによる水力発電も、しばしば再生可能エネルギー扱いされることがあります。こうした電源は、環境への負荷が大きいので要注意です。私たちは、そうした持続可能性の低いものではなく、より持続可能性に配慮して電気を調達する事業者を紹介しているので、ぜひサイトをご覧ください」(吉田さん)
▼ 電力会社の契約を変えることは、簡単にできる
実際、パワーシフト・キャンペーンのサイトには、自治体がやっている電力会社、地域密着型の電力会社、生協系の電力会社、複数の地域に電気を供給している電力会社とタイプ別に各電力会社の情報が掲載されている。
そこには、太陽光や風力、バイオマス、小水力など、どのような再生可能エネルギーによる電気を供給しているかなどの情報が掲載されている。
さらに詳しい情報が知りたい場合は、各電力会社のウェブサイトで確認するといい。
電力会社の契約を変えるとなると、ちょっと大変そうに思えるかもしれない。だが、吉田さんは「とても簡単ですよ」と言う。
「物理的な電気の流れは変わらないため、設備工事はいりません。選んだ会社に、ウェブや電話などで申し込みするだけです。アパートやマンションでも建物一括契約のものを除けば切り替え可能ですし、リスクもありません。もし選んだ会社が仮に倒産したりしても停電したりはしません。電力の価格もほとんど変わりありません」(吉田さん)
実際、筆者も「パワーシフト」してみたのだが、ネット上の手続きだけで、ものの10分程度も時間はかからなかった。その後も、特にトラブルもなく電気を使えている。何より、原発や石炭火力発電による電気ではない、よりエコな電気を使えるということがすばらしい。
今まで、電気を使うたびに後ろめたい気持ちになったものだが、非常に気分が楽になる。だからと言って電気の無駄遣いはするべきではないし、省エネに努めるべきではあるのだが。
▼ 学校のパワーシフトは大きな教育効果もある
パワーシフトは個人だけではなく、企業や学校、自治体も行っているとのこと。
例えば、埼玉県飯能市にある私立中学高等学校「自由の森学園」は「未来の社会を担う子どもたちが学び生活する場である学校は、地球と社会の持続可能性に無関心であってはならないとの考えが基本にある」とのことから、パワーシフトに踏み切った。
同校には、契約した「みんな電力」のスタッフらが訪れ、環境問題の選択授業で生徒たちと議論するなど、教育効果としても大きなメリットがあるとのこと。
このような「パワーシフト体験談」もウェブサイトで見ることができる。
吉田さんは「パワーシフトによって、ただ電気を買うだけじゃなく、地元や発電所のある地域とつながりができるのです」と語る。
「例えば電力会社によっては、発電所の見学ツアーや子ども向けワークショップを行ったり、売電利益の一部をつかって子育て支援や福祉など地元の社会貢献活動を支援したりしています」
▼ 再生可能エネルギーに後ろ向きな大手電力会社の姿勢を変えるために
昨年末のC0P25(第25回気候変動枠組条約会議)では、G7の中でも唯一石炭を推進し続ける日本に批判が集まった。
多くの人々がパワーシフトして再生可能エネルギー中心の電力会社に乗り換えることは、原発や石炭火力発電を抱える既存の大手電力会社に対するメッセージにもなる。
パワーシフトした後にそれまで契約していた大手電力会社に「石炭火力や原発はお断りなので」と電話やメール、FAXなどで伝えることも重要だろう。
パワーシフト・キャンペーンでも、乗り換えの“見える化”のため、パワーシフト「1億円キャンペーン」を呼びかけている。
これは、再生エネルギー中心の電力会社を選んだ人々の「電気代」を積み上げていくというもの。
パワーシフト・キャンペーンの特設ウェブサイト上で、自身の地域やこれまでの年間電気料金などを書き込んでいくことで、パワーシフトの動きを可視化していこうという試みだ。
こうした動きが活発になっていけば、まだまだ再生可能エネルギーに後ろ向きな大手電力会社の姿勢も変えられるかもしれない。
<取材・文/志葉玲>
『ハーバー・ビジネス・オンライン』(2020.01.19)
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