【週刊新社会:沈思実行(217)】
☆ 窮迫生活の責任者は
鎌田 慧
日本の自殺者は、23年が2万183人で前年と比べて44人少なかった。とはいえ2万人もの人たちが、現実と未来に絶望して自分の命を絶っている現実を思うと心寒くなる。
「高度経済成長」の頃、日本人は「一億総中流」の意識に捉われていた。しかし、文字通り「泡・バブル」の時代だった。わたしは、その恩恵に預かることなく「板子一枚下は地獄」と嘯(うそぶ)いていた。
高度経済成長の崩壊後、1997年まで2万人台だった自殺者は、翌98年3万2863人となり、2003年が3万4429人となった。3万人台が、1998年から2011年まで、13年間も続いたのは、日本社会の冷酷さを示している。
隣国・韓国の10万人あたりの自殺者は、OECD加盟国20力国のうち最悪となっている。急速な近代化を進めたこともあって、競争が激しく、学生の就職が厳しい状況が伝えられている。
社会保障制度が遅れ、国民皆保険が99年から、ということからか、生活に行き詰まる老人が多く、自殺者が多い。敬老の精神に富んだ国、という印象が強かったが、生活が苦しい老人がふえているようだ。
日本での自殺の原因・動機別では「経済・生活問題」が、前年比484人増の5181人。この2年間で1・5倍にもなった。
家庭の問題や勤務状態を含めると、社会的な問題が9割近くを占める。
賃上げが、これまで永年にわたって凍結されてきたのは、「人材派遣法」の影響が大きい。
非正規労働者40%の存在が低賃金を持続させてきた。それが、物価高による生活の窮迫に追い討ちをかけている。
そのこともあって、今回の総選挙では、減税を訴えた野党が票を伸ばした。
しかし、生活感覚のまったくない世襲が2世、3世、4世まではびこっている。自民党政治を許してきた野党の責任も大きかった。
欧米のような大幅賃上げ闘争もなく、大労組は眠り込んでいる。
裏金ばかりが問題なのではない。生活立て直し、それがこれからの最大の要求だ。
水に落ちた自公を救わない、野党の闘いの連携が、解決への最大の道だ。
『週刊新社会』(2014年11月13日)
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