◇ 「驚きを通り越して言葉もない」(自由人権協会)
報道等によれば、大阪市は、本年2月9日付けで別添の「労使関係に関する職員のアンケート調査について」を各所属長宛に発し、もって各職員に対するアンケート調査を実施している(なお、その調査期間は同月16日までとされている)。
当協会は、このアンケート調査(以下「本件調査」という)には、到底看過することができない、あまりにも重大な問題があるものと考え、以下のとおり、同調査に関する意見を述べる。
第1 はじめに
一言で言えば、本件調査には、自治体の公的行為としては、前代未聞と言えるほど非常に多数かつ重大な問題がある。本件調査は、憲法を頂点とする法秩序を全く無視するものであり、このような本件調査に、弁護士資格を有する橋下徹・大阪市長が職員各位に対して、真実を正確に回答することを求めていること、また、本件調査が弁護士である野村修也・大阪市特別顧問のもとで実施されていることに、驚きを通り越して、言葉もない。
以下、本件調査の具体的な問題点を指摘する。
第2 問題点
1 本件調査は思想良心の自由を侵害する
本件調査は、任意の調査ではなく、市長の業務命令として行われている。また、正確な回答がなされない場合には処分の対象となり得ることが付記されている。
そのうえで、本件調査は、各職員の氏名等、各職員を特定するに足りる事項を質問し、さらに、大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動への参加の有無及びその内容、であるとか、過去2年間での、特定の政治家を応援する活動への参加の有無及び内容や、職場の関係者からの特定の政治家への投票要請の有無及び内容、組合加入の有無及び内容などを質問している。
上記の質問事項は、各職員の人格的な内面的精神作用にわたるものであり、本件調査は、公権力が処分という手段をもってこれら質問事項に回答を強制するものに他ならず、各職員の思想良心の自由(憲法19条)を侵害するものである。
なおここで念のため付言すれば、憲法19条が「思想良心の自由は、これを侵してはならない。」としていることの意味は、第一に、国民がいかなる国家観、世界観、人生観をもとうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由である、ということであり、第二には、思想についての沈黙の自由が保障されており、公権力は、個人が内心において抱いている思想について、直接または間接に、訊ねることも許されない、ということである。本件調査は、これらの双方の意味における思想良心の自由を侵害するものである。
2 本件調査はプライバシー権を侵害する
上記の質問事項は、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項であるところ、本件調査はそれらへの答を強制するものであり、各職員のプライバシー権(憲法13条)を侵害する。
なお、本件調査は労使関係の適正化を図ることを目的としているようであるが、「労使関係の適正化」という概念は抽象的であるし、またそれが、プライバシー権を制約する正当な理由となることも、何ら論証されていない(このことは、以下の各人権についても同様である)。
3 本件調査は政治活動の自由を侵害する
前記のとおり、本件調査は、過去2年間での、特定の政治家を応援する活動への参加の有無及び内容や、職場の関係者からの特定の政治家への投票要請の有無及び内容などを質問している。本件調査は、これら質問事項を、市長の業務命令として、処分という手段をもって強制することで、各職員の政治活動及びその内容に萎縮的効果を及ぼすものであって、各職員の政治活動の自由(憲法21条)を侵害するものである。
なお、上記の質問事項の内容は、地方公務員法36条において制限されている地方公務員の政治的行為に必ずしも当たるものではなく、本件調査は職員の適法行為も対象に含めて質問するものであることからも、上記の侵害は明らかである。
4 本件調査は労働基本権を侵害する
本件調査は、大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動への参加の有無及びその内容などを質問している。本件調査は、これら質問事項を、市長の業務命令として、処分という手段をもって強制することで、各職員の、団結権、また、団体行動権の一内容としての組合活動権、という労働基本権(憲法28条)を侵害する。
第3 結語
このように、本件調査は、少なくとも、上記のような多くの根本的な問題を含むものであって、違憲違法なものであることは明らかである。当協会は、大阪市が、本件調査を即刻中止し、また、現時点までに得られた調査結果を直ちに廃棄することを、強く求める。
『自由人権協会(大阪市「労使関係に関する職員アンケート調査」について)』
http://www.jclu.org/file/oosakashi-questionaire-ikensho.pdf
『【堺からのアピール】教育基本条例案を撤回せよ』(2012/2/18)
http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/3104640.html
2012年2月16日
意 見 書
報道等によれば、大阪市は、本年2月9日付けで別添の「労使関係に関する職員のアンケート調査について」を各所属長宛に発し、もって各職員に対するアンケート調査を実施している(なお、その調査期間は同月16日までとされている)。
当協会は、このアンケート調査(以下「本件調査」という)には、到底看過することができない、あまりにも重大な問題があるものと考え、以下のとおり、同調査に関する意見を述べる。
第1 はじめに
一言で言えば、本件調査には、自治体の公的行為としては、前代未聞と言えるほど非常に多数かつ重大な問題がある。本件調査は、憲法を頂点とする法秩序を全く無視するものであり、このような本件調査に、弁護士資格を有する橋下徹・大阪市長が職員各位に対して、真実を正確に回答することを求めていること、また、本件調査が弁護士である野村修也・大阪市特別顧問のもとで実施されていることに、驚きを通り越して、言葉もない。
以下、本件調査の具体的な問題点を指摘する。
第2 問題点
1 本件調査は思想良心の自由を侵害する
本件調査は、任意の調査ではなく、市長の業務命令として行われている。また、正確な回答がなされない場合には処分の対象となり得ることが付記されている。
そのうえで、本件調査は、各職員の氏名等、各職員を特定するに足りる事項を質問し、さらに、大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動への参加の有無及びその内容、であるとか、過去2年間での、特定の政治家を応援する活動への参加の有無及び内容や、職場の関係者からの特定の政治家への投票要請の有無及び内容、組合加入の有無及び内容などを質問している。
上記の質問事項は、各職員の人格的な内面的精神作用にわたるものであり、本件調査は、公権力が処分という手段をもってこれら質問事項に回答を強制するものに他ならず、各職員の思想良心の自由(憲法19条)を侵害するものである。
なおここで念のため付言すれば、憲法19条が「思想良心の自由は、これを侵してはならない。」としていることの意味は、第一に、国民がいかなる国家観、世界観、人生観をもとうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由である、ということであり、第二には、思想についての沈黙の自由が保障されており、公権力は、個人が内心において抱いている思想について、直接または間接に、訊ねることも許されない、ということである。本件調査は、これらの双方の意味における思想良心の自由を侵害するものである。
2 本件調査はプライバシー権を侵害する
上記の質問事項は、個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項であるところ、本件調査はそれらへの答を強制するものであり、各職員のプライバシー権(憲法13条)を侵害する。
なお、本件調査は労使関係の適正化を図ることを目的としているようであるが、「労使関係の適正化」という概念は抽象的であるし、またそれが、プライバシー権を制約する正当な理由となることも、何ら論証されていない(このことは、以下の各人権についても同様である)。
3 本件調査は政治活動の自由を侵害する
前記のとおり、本件調査は、過去2年間での、特定の政治家を応援する活動への参加の有無及び内容や、職場の関係者からの特定の政治家への投票要請の有無及び内容などを質問している。本件調査は、これら質問事項を、市長の業務命令として、処分という手段をもって強制することで、各職員の政治活動及びその内容に萎縮的効果を及ぼすものであって、各職員の政治活動の自由(憲法21条)を侵害するものである。
なお、上記の質問事項の内容は、地方公務員法36条において制限されている地方公務員の政治的行為に必ずしも当たるものではなく、本件調査は職員の適法行為も対象に含めて質問するものであることからも、上記の侵害は明らかである。
4 本件調査は労働基本権を侵害する
本件調査は、大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動への参加の有無及びその内容などを質問している。本件調査は、これら質問事項を、市長の業務命令として、処分という手段をもって強制することで、各職員の、団結権、また、団体行動権の一内容としての組合活動権、という労働基本権(憲法28条)を侵害する。
第3 結語
このように、本件調査は、少なくとも、上記のような多くの根本的な問題を含むものであって、違憲違法なものであることは明らかである。当協会は、大阪市が、本件調査を即刻中止し、また、現時点までに得られた調査結果を直ちに廃棄することを、強く求める。
以 上
社団法人 自 由 人 権 協 会
代表理事 羽柴 駿
同 紙谷雅子
同 田中 宏
同 喜田村洋一
同 三宅 弘
社団法人 自由人権協会 大阪・兵庫支部
代表理事 菅 充行
代表理事 羽柴 駿
同 紙谷雅子
同 田中 宏
同 喜田村洋一
同 三宅 弘
社団法人 自由人権協会 大阪・兵庫支部
代表理事 菅 充行
『自由人権協会(大阪市「労使関係に関する職員アンケート調査」について)』
http://www.jclu.org/file/oosakashi-questionaire-ikensho.pdf
『【堺からのアピール】教育基本条例案を撤回せよ』(2012/2/18)
http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/3104640.html
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