<国連の日本審査 私が見て感じたこと> 第3回
■ 個人通報制度への道
かねてからの宿題に個人通報制度実施の問題があります。
■ 個人通報制度とは
個人通報制度というのは、自由権規約で保障された権利を侵害された人が、国連の自由権規約委員会に直接救済の申立てができる制度のことです。自由権規約とセットになった第一選択議定書を国が批准することによって、それが可能となるわけです。
すでに自由権規約批准164カ国のうち、111カ国がこの選択議定書を批准していますが、日本は未だこれを批准していないために私たちには個人通報権がありません。
この申立てがなされると、委員会はこれを審議し、関係当事国と申立てた個人に意見を送付します。意見に拘束力はありませんが、人権侵害の状況が明らかにされ公に監視されることになりますから、人権状況が大きく改善される契機になります。
個人通報によってオランダでは失業保険給付の男女差別が、フランスでは軍人年金支給の国籍差別が改められました。
■ 委員会から批准勧告
自由権規約委員会は、かねてから日本に対しこの選択議定書の批准を促してきましたが、日本政府は、最高裁の上にも一つひとつ裁判所を置くようなものだ、4審制になってしまうなどを理由に終始消極姿勢を示してきました。
今回、この問題に対し、委員会は、「これは4審制ではなく、国内裁判所が行う事実や証拠の評価、国内法の解釈適用に関する再調査は原則的に行わない」のだから、「批准を検討すべきである」と改めて勧告しました。
勧告がここまで丁寧に述べたのは、日本政府にはこの点で規約に対する誤解があると委員会がみているからです。だから、個人通報制度は、規約違反があるかどうかを審議するものであって、国内司法の判断を蒸し返すものではないのだとこれまでの委員会見解を改めて示して、心配するなと説諭しているのです。
■ アジア各国が批准
すでにアジアではモンゴルも韓国もフィリピンも批准している選択議定書を日本政府が頑なに拒否する理由はどこにもないのです。関係省庁は内部の勉強会を重ね、批准した場合に予測される事態を検討していると説明しています。
私たちは運動次第で、個人通報制度の実現する日が遠からずやってくると踏んでいます。国際人権活動日本委員会は毎年団体署名を外務省に届けていますし、日弁連もこの制度実現のための委員会を立ち上げて運動を展開しています。(つづく)
日本国民救援会「救援新聞」(2009/1/25)より
■ 個人通報制度への道
鈴木亜英(国際人権活動日本委員会代表)
かねてからの宿題に個人通報制度実施の問題があります。
■ 個人通報制度とは
個人通報制度というのは、自由権規約で保障された権利を侵害された人が、国連の自由権規約委員会に直接救済の申立てができる制度のことです。自由権規約とセットになった第一選択議定書を国が批准することによって、それが可能となるわけです。
すでに自由権規約批准164カ国のうち、111カ国がこの選択議定書を批准していますが、日本は未だこれを批准していないために私たちには個人通報権がありません。
この申立てがなされると、委員会はこれを審議し、関係当事国と申立てた個人に意見を送付します。意見に拘束力はありませんが、人権侵害の状況が明らかにされ公に監視されることになりますから、人権状況が大きく改善される契機になります。
個人通報によってオランダでは失業保険給付の男女差別が、フランスでは軍人年金支給の国籍差別が改められました。
■ 委員会から批准勧告
自由権規約委員会は、かねてから日本に対しこの選択議定書の批准を促してきましたが、日本政府は、最高裁の上にも一つひとつ裁判所を置くようなものだ、4審制になってしまうなどを理由に終始消極姿勢を示してきました。
今回、この問題に対し、委員会は、「これは4審制ではなく、国内裁判所が行う事実や証拠の評価、国内法の解釈適用に関する再調査は原則的に行わない」のだから、「批准を検討すべきである」と改めて勧告しました。
勧告がここまで丁寧に述べたのは、日本政府にはこの点で規約に対する誤解があると委員会がみているからです。だから、個人通報制度は、規約違反があるかどうかを審議するものであって、国内司法の判断を蒸し返すものではないのだとこれまでの委員会見解を改めて示して、心配するなと説諭しているのです。
■ アジア各国が批准
すでにアジアではモンゴルも韓国もフィリピンも批准している選択議定書を日本政府が頑なに拒否する理由はどこにもないのです。関係省庁は内部の勉強会を重ね、批准した場合に予測される事態を検討していると説明しています。
私たちは運動次第で、個人通報制度の実現する日が遠からずやってくると踏んでいます。国際人権活動日本委員会は毎年団体署名を外務省に届けていますし、日弁連もこの制度実現のための委員会を立ち上げて運動を展開しています。(つづく)
日本国民救援会「救援新聞」(2009/1/25)より
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