☆ 2023年5月12日の参議院本会議での
梅村みずほ議員の発言の撤回、謝罪を求める抗議文
日本維新の会
参議院議員 梅村 みずほ 殿
2023年5月16日
START~外国人労働者・難民と共に歩む会~
代表 本間 鮎美
2023年5月12日に行われた参議院本会議で、貴殿が、法務大臣への質問のなかで、「医師の診療情報提供書や面会記録等をふくめた資料とともにウィシュマさんの映像を総合的に見ていきますと、よかれと思った支援者の一言が、皮肉にも、ウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待をいだかせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況につながったおそれも否定できません。」と発言しました。
(貴殿の発言全文はこの文章の最後に掲載しています。)
ここで言われている支援者とは、我々STARTのことであると思われます。事実に基づかない支援者に対する悪宣伝である貴殿の発言に強く抗議し、発言の撤回と謝罪を求めます。
そもそも、STARTはウィシュマさんに対して「病気になれば仮放免される」という趣旨の発言をしたことは一度もありません。
2021年8月に入管庁が公表したウィシュマさん死亡事件の事実関係をまとめた最終報告書(p.54~)には、名古屋入管の職員がウィシュマさんの「体調不良の訴えについて、仮放免許可申請に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないか」と認識しており、その認識の原因の一つとして、面会のなかで支援者の、ウィシュマさんの体調不良の訴えに対する「お腹の不調については、病院に行って検査しないと原因がわからないので、早く病院に行ってもらえるように担当にアピールした方がいい。」「入管は体調不良者について何もしない。病院に行って体調不良を訴えないと仮放免されない。仮放免されたいのであれば、病院が嫌いでも病院に行った方がいい。」という発言に、ウィシュマさんが「病気になれば仮放免される」という認識を抱いたのではないかと、職員が考えていたことが書かれています。
つまり、職員が勝手に事実を捻じ曲げて受け止め、このような認識をいだいたのです。
病院に行くためのアピールをすることを伝えたとき、ウィシュマさんはすでに体調不良で、病気でした。入管庁も支援者が「体調不良の訴えについて、仮放免許可申請に向けたアピールとして実際よりも誇張して主張しているのではないか」と発言したのではなく、これは入管職員の認識にすぎないことを明記しています。
貴殿の発言は、「医師の診療情報提供書や面会記録等をふくめた資料とともにウィシュマさんの映像を総合的に見ていきますと…」と、あたかも客観的な証拠に基づいて発言しているようにみせかけていますが、全くの事実無根です。これは、最終報告書を読めばわかることです。
(「令和3年3月6日の名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する調査報告書」)
ウィシュマさんは実際に病気でした。病気ではないのに病気のふりをしていたのでは決してありません。それは、一部が開示、公開されているウィシュマさんが収容されていた部屋の監視カメラの映像をみても明らかです。映像を観て、ウィシュマさんが演技していると思う人はいません。
貴殿は、映像を観て、ウィシュマさんが演技をしていると思ったのでしょうか?
2月15日の尿検査の結果では、飢餓状態を示す数値が出ていたことも明らかにされています。
今問題になっているのは、ウィシュマさんが詐病だったのかどうかということではありません。詐病でなかったことは明らかです。
入管職員が、食べても吐いてしまうウィシュマさんを見ても、詐病だと決めつけてしまうような処遇部門の組織環境がつくられていたことが問題です。
点滴をしてほしい、病院へ連れて行ってほしいというウィシュマさんの再三の懇願を、病気のふりをしていると決めつけてまともに聞き入れず、放置した結果、ウィシュマさんは命を落としました。
貴殿は、この入管職員と同じ誤りを犯しています。
ウィシュマさんが亡くなる2日前の3月4日、外部病院の精神科を受診したときの、医師が入管に提出した報告書には、「支援者から『病気になれば、仮釈放してもらえる』と言われた頃から、心身の不調を生じており、詐病の可能性もある」と書かれています。
支援者がウィシュマさんに何を言っているかを、医師が知り得るはずがありません。
これは、入管職員が医師に伝えた情報です。つまり、入管側の主観でとらえた誤った情報を医師に伝え、その結果、情報を鵜呑みにした医師が、映像では首もすわらない状態だったウィシュマさんに対し、何の検査もせずに薬を処方したのです。
(名古屋入管死亡事件・3月4日「診療情報提供書」に対するSTARTの見解)
貴殿が述べたように、支援者が、ウィシュマさんに「病気になれば仮釈放される」と言ったという話に、斎藤法務大臣は、その回答の中では一切触れていません。入管法改正案の中に盛り込まれている、監理措置制度について回答しているのみです。
貴殿は、なぜ、わざわざ客観的事実に基づかない、「病気になれば仮釈放してもらえる」と支援者が言った、という話を持ち出し、質問したのでしょうか。
この貴殿の質問は、具体的な回答を求めることを目的とせず、ウィシュマさんをそそのかした支援者と、それにのっかったウィシュマさんが悪者であるという印象を与えようとする悪質な宣伝です。この発言は、ウィシュマさんへの冒涜であり、支援者に対する蔑視以外のなにものでもありません。
入管は、被収容者の行動の自由を奪って収容をするのですから、被収容者の命と健康を守る収容主体としての責任があります。
被収容者は自らの判断で病院に行くことができないのですから、被収容者の命と健康については、入管が責任を負うのです。この責任が負えないなら、入管は人を収容する資格がありません。
ウィシュマさんが亡くなった原因は、ウィシュマさんが再三体調不良を訴え、すぐに病院に連れて行ってほしい、点滴をしてほしいという切実な訴えに応えることをせず、収容主体としての責任を果たさなかったことにあります。
私たちSTARTは、名古屋入管に対して、ウィシュマさんに点滴をすること、また入院も含めた病気治療を直ちに行うよう、入管に対して、収容主体としての責任を果たすことを要求していました。
名古屋入管がこれを受け入れていれば、ウィシュマさんの命は救えたのです。
その責任は、全面的に入管にあります。
貴殿は、事実を捻じ曲げた上で、問題をすり替え、ウィシュマさんの死亡は支援者に責任があるかのような発言をしました。
支援団体の正当な要求を聞き入れなかった入管の責任を問題にするのではなく、支援団体の行動がウィシュマさんの死亡の原因であるかのように描き出したのです。国会議員の重要な仕事は、行政を監視し、その暴走を止めることのはずですが、貴殿は入管の責任を免罪するために、支援団体を断罪しました。貴殿の発言は国会議員としてふさわしくないものです。
全くの嘘、でたらめをもって、問題をすりかえ、入管を免罪して、支援者やウィシュマさんに責任を転嫁する今回の貴殿の発言に強く抗議し、発言の撤回と謝罪を求めます。
貴殿の質問
「つぎに入管被収容者に対する支援のあり方についておたずねします。医師の診療情報提供書や面会記録等をふくめた資料とともにウィシュマさんの映像を総合的に見ていきますと、よかれと思った支援者の一言が、皮肉にも、ウィシュマさんに「病気になれば仮釈放してもらえる」という淡い期待をいだかせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できません。自分が何とかしなければという正義感や善意からとはいえ、なかには一度も面識のない被収容外国人につぎからつぎへとアクセスする支援者もいらっしゃいます。難民認定要件を満たしているのに不当に長期収容されているのではないか、弱い人を救いたいという支援者の必死の手助けや助言は、場合によってはかえって、被収容者にとって、見なければよかった夢、すがってはいけない藁(わら)になる可能性もあると考えますが、法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
また、監理措置制度については、監理人に対し罰則付きの報告義務を課せられており、人のために手間と時間をかけてリスクをになえる人材をはたして必要数確保できるかどうかが懸念されています。外国人への支援として、結果的に逃走や不法滞在の手助けをしてしまっているグループも存在し、適切な人材が監理人としての責任を果たさなくてはなりません。法務大臣はこれまでの不適切事例も踏まえ、どのような人物が監理人にふさわしいとお考えでしょうか。また、指定される監理人の規模は何人ほどを想定していますか。その監理人の規模でどれほどの収容人数を減らすことができるのでしょうか。入管庁長官が監理人に情報提供・助言をおこなうとはされていますが、それだけで十分とは思えません。今後監理人を増やしていくためにも、監理人の負担の軽減などの支援策が必要ではありませんか。以上、あわせてお答えください。」
『レイバーネット日本』(2023-05-17)
http://www.labornetjp.org/news/2023/1684280096076staff01
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