=メディアの今 見張り塔から(『東京新聞』【日々論々】)=
◆ コロナ禍のテレビ局
番組制作を見直す時
各テレビ局が新型コロナウイルスで大きな影響を受けている。
テレビ朝日は四月十二日、看板報道番組の「報道ステーション」のメインキャスターを務める冨川悠太アナウンサーが新型コロナウイルスに感染したと発表。チーフプロデューサーをはじめとする番組スタッフも感染したため、同番組のスタッフ全員が自宅待機の措置となり、緊急招集された他番組のスタッフで制作を行った。
他局の報道番組や情報番組も軒並み感染対策のため、ZoomやSkypeなどのテレビ会議ソフトを使ったリモート出演や、別室からの中継など工夫を凝らして番組制作を行うように変わっている。
問題はスタッフや出演者の濃厚接触が避けづらいドラマやバラエティーだ。
各キー局はドラマの撮影を大幅延期しており、緊急事態宣言が出たことにより、再開の見込みも立っていない状況だ。
多くの番組は過去のVTRを使った総集編を放送するなどして乗り切っているが、それもいつまでもストックが続くわけではない。どこかのタイミングで番組編成を大きく変える必要に迫られるだろう。
他方でここ数年、質の高い番組制作と利用しやすさでテレビ局の顧客をごっそり奪って成長している「ネットブリックス」は、コロナ禍をきっかけに業績を伸ばしている。
第一・四半期の新規有料会員数は予想の二倍以上となる千五百七十七万人の純増。世界中の顧客がロックダウンによって自宅にこもらなければならなくなったため、「巣ごもり需要」が同社に殺到したのだろう。
しかし、そんな同社も既に三月中旬から北米大陸における番組制作を休止している。
米国では新型コロナの感染拡大で、テレビや映画業界に携わる出演者やスタッフが職を失っており、その数はなんと十二万人にものぼるという。
同社はそうしたスタッフを支援するため一億ドル(約百十一億円)の救済基金をつくって対応しているが、日本以上に感染拡大が進む北米でコロナ禍以前のようにドラマを作れるようになるにはかなりの時間を必要とするだろう。
大規模感染症は一度ピークを過ぎたあとでも第二波、第三波が来ることが高い確率で予測されている。
多少、感染者が落ち着いたからといってドラマやバラエティーの撮影を再開させた結果、大規模なクラスターを発生させてしまった場合、取り返しがつかないことにもなりかねない。
中長期的な視点で見れば、テレビ局は今後数年にわたって新作ドラマの制作を中止し、バラエティーも安全にできるものだけを制作するなど、コンテンツ制作のあり方そのものを考え直さなければいけなくなるだろう。
そうなれば、必然的に報道番組の拡充が求められる。
コロナ禍で取材が難しくなっている部分もあるだろうが、他方で当たり前のようにリモート出演や取材が可能になったため、時間や場所に縛られず、さまざまな取材対象者に話が聞けるようになった側面もあるはずだ。
扇情的な報道に疲れた視聴者も多いと聞く。こういうときだからこそ、専門家によるじっくりとした討論番組を増やすなど、番組制作そのものを見直すきっかけにしてほしい。
◆ コロナ禍のテレビ局
番組制作を見直す時
ジャーナリスト・津田大介さん
各テレビ局が新型コロナウイルスで大きな影響を受けている。
テレビ朝日は四月十二日、看板報道番組の「報道ステーション」のメインキャスターを務める冨川悠太アナウンサーが新型コロナウイルスに感染したと発表。チーフプロデューサーをはじめとする番組スタッフも感染したため、同番組のスタッフ全員が自宅待機の措置となり、緊急招集された他番組のスタッフで制作を行った。
他局の報道番組や情報番組も軒並み感染対策のため、ZoomやSkypeなどのテレビ会議ソフトを使ったリモート出演や、別室からの中継など工夫を凝らして番組制作を行うように変わっている。
問題はスタッフや出演者の濃厚接触が避けづらいドラマやバラエティーだ。
各キー局はドラマの撮影を大幅延期しており、緊急事態宣言が出たことにより、再開の見込みも立っていない状況だ。
多くの番組は過去のVTRを使った総集編を放送するなどして乗り切っているが、それもいつまでもストックが続くわけではない。どこかのタイミングで番組編成を大きく変える必要に迫られるだろう。
他方でここ数年、質の高い番組制作と利用しやすさでテレビ局の顧客をごっそり奪って成長している「ネットブリックス」は、コロナ禍をきっかけに業績を伸ばしている。
第一・四半期の新規有料会員数は予想の二倍以上となる千五百七十七万人の純増。世界中の顧客がロックダウンによって自宅にこもらなければならなくなったため、「巣ごもり需要」が同社に殺到したのだろう。
しかし、そんな同社も既に三月中旬から北米大陸における番組制作を休止している。
米国では新型コロナの感染拡大で、テレビや映画業界に携わる出演者やスタッフが職を失っており、その数はなんと十二万人にものぼるという。
同社はそうしたスタッフを支援するため一億ドル(約百十一億円)の救済基金をつくって対応しているが、日本以上に感染拡大が進む北米でコロナ禍以前のようにドラマを作れるようになるにはかなりの時間を必要とするだろう。
大規模感染症は一度ピークを過ぎたあとでも第二波、第三波が来ることが高い確率で予測されている。
多少、感染者が落ち着いたからといってドラマやバラエティーの撮影を再開させた結果、大規模なクラスターを発生させてしまった場合、取り返しがつかないことにもなりかねない。
中長期的な視点で見れば、テレビ局は今後数年にわたって新作ドラマの制作を中止し、バラエティーも安全にできるものだけを制作するなど、コンテンツ制作のあり方そのものを考え直さなければいけなくなるだろう。
そうなれば、必然的に報道番組の拡充が求められる。
コロナ禍で取材が難しくなっている部分もあるだろうが、他方で当たり前のようにリモート出演や取材が可能になったため、時間や場所に縛られず、さまざまな取材対象者に話が聞けるようになった側面もあるはずだ。
扇情的な報道に疲れた視聴者も多いと聞く。こういうときだからこそ、専門家によるじっくりとした討論番組を増やすなど、番組制作そのものを見直すきっかけにしてほしい。
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