◆ 新型コロナ感染リスクでも「君が代斉唱せよ」
~命は二の次?!の東京都教育委員会 (週刊金曜日)
「飛沫感染防止のため校歌や式歌はカットしながら、国歌は斉唱するという異様な式が行なわれた」-。これは、君が代斉唱時に起立せず処分された都立学校教職員でつくる「被処分者の会」などが3月31日に東京都内で開いた、今年の都立学校卒業式をめぐる総括集会での報告だ。
2003年10月23日、東京都教育委員会は都立学校長宛てに通達。教職員が卒業式等の式典で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよとの職務命令に従わなければ服務上の責任を問われるとした。「10・23通達」と呼ばれる。
これに対して「日の丸・君が代」がかつて侵略戦争に利用されたことや、子どもたちの内心の自由を守る目的などから起立しなかったり、ピアノ伴奏を拒否したりした教職員が戒告、減給、停職などの処分を受けた。
その数は累計で483人に上る(被処分者の会調べ)。
以降、都教委は各都立学校に毎年、卒業式が通達に沿って行なわれたかを報告するよう求めてきた。
しかし今年2月28日、都は都立学校長宛てに「卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について」と題して事務連絡。
新型コロナウイルスの感染拡大を避けるべく、本年度に限り「『10・23通達』に示す取り扱いと異なる方法で卒業式を実施する場合は、以下の例を参考に」回答するとした。
例えば、ウイルスの飛沫感染を防ぐ目的で国歌斉唱や合唱を行なわなかった場合は「斉唱せずメロディも流さず」と回答し、「教職員の状況」を空欄のまま回答しても「不適切な状況として取り扱わない」などとした。
ところが同日、都は再度の事務連絡で「『国旗掲揚の下に、体育館で実施する』『国歌斉唱を行う』という方針に変更はない」と通知。
こうした都の対応に、集会では「命よりも国歌を優先するのか」などと声があがった。
◆ 命を軽視する都教委
筆者は都教育庁に質問。「新型コロナウイルス感染防止の観点から、都教委も当初は国歌省略をやむなしと考えたのか」と質すと、担当主任は渋々「はい」と認めた。
― ではなぜ再度の事務連絡で「国歌斉唱の方針に変わりはない」としたのか。(以下一問一答)
主任 「従来の(「10・23通達」に基づく)方針に変更があったのか」という問い合わせが複数の都立学校からあったからです。
― 文部科学省から国歌斉唱せよと指示があったり、逆に国歌斉唱すべきか国に確認したりした結果、再度事務連絡を出したのでは?
主任 それはありません。
― 「子どもたちの健康より国歌が大切なのか」との批判があるが。
主任 国旗国歌の適正な実施は学習指導要領に定められており、密閉、密集、密接を避けるなど安全上の手立てを講じているので大丈夫と判断しました。(ここまで)
一方、文科省に「都教委に国歌斉唱を指示したのか」とたずねると「個別の対応は答えられない。ただ、日常的なやりとりの中で『学習指導要領にあるので国旗国歌は実施して下さい』とは言っている」と答えた。
教育政策が専門の世取山洋介・新潟大学准教授(よとりやまようすけ)は、今回の都の対応を批判する。
「卒業式や入学式などの学校行事の中身は各学校が自治的に決めるべきで、そこに介入してはならない。新型コロナウイルス拡大のおそれがあるのは明らかなのに、都教委が国歌斉唱を強制することは、子どもの生命と健康を守る自らの義務に反する」。
同会の近藤徹さんは、「大綱的基準の学習指導要領を根拠に国歌斉唱を強制するのは校長権限の教育課程への不当な介入だ」と話した。
『週刊金曜日 1278号』(2020.4.24)
~命は二の次?!の東京都教育委員会 (週刊金曜日)
永尾俊彦(ながおとしひこ・ルポライター)
「飛沫感染防止のため校歌や式歌はカットしながら、国歌は斉唱するという異様な式が行なわれた」-。これは、君が代斉唱時に起立せず処分された都立学校教職員でつくる「被処分者の会」などが3月31日に東京都内で開いた、今年の都立学校卒業式をめぐる総括集会での報告だ。
2003年10月23日、東京都教育委員会は都立学校長宛てに通達。教職員が卒業式等の式典で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよとの職務命令に従わなければ服務上の責任を問われるとした。「10・23通達」と呼ばれる。
これに対して「日の丸・君が代」がかつて侵略戦争に利用されたことや、子どもたちの内心の自由を守る目的などから起立しなかったり、ピアノ伴奏を拒否したりした教職員が戒告、減給、停職などの処分を受けた。
その数は累計で483人に上る(被処分者の会調べ)。
以降、都教委は各都立学校に毎年、卒業式が通達に沿って行なわれたかを報告するよう求めてきた。
しかし今年2月28日、都は都立学校長宛てに「卒業式における国旗・国歌に関する調査の実施について」と題して事務連絡。
新型コロナウイルスの感染拡大を避けるべく、本年度に限り「『10・23通達』に示す取り扱いと異なる方法で卒業式を実施する場合は、以下の例を参考に」回答するとした。
例えば、ウイルスの飛沫感染を防ぐ目的で国歌斉唱や合唱を行なわなかった場合は「斉唱せずメロディも流さず」と回答し、「教職員の状況」を空欄のまま回答しても「不適切な状況として取り扱わない」などとした。
ところが同日、都は再度の事務連絡で「『国旗掲揚の下に、体育館で実施する』『国歌斉唱を行う』という方針に変更はない」と通知。
こうした都の対応に、集会では「命よりも国歌を優先するのか」などと声があがった。
◆ 命を軽視する都教委
筆者は都教育庁に質問。「新型コロナウイルス感染防止の観点から、都教委も当初は国歌省略をやむなしと考えたのか」と質すと、担当主任は渋々「はい」と認めた。
― ではなぜ再度の事務連絡で「国歌斉唱の方針に変わりはない」としたのか。(以下一問一答)
主任 「従来の(「10・23通達」に基づく)方針に変更があったのか」という問い合わせが複数の都立学校からあったからです。
― 文部科学省から国歌斉唱せよと指示があったり、逆に国歌斉唱すべきか国に確認したりした結果、再度事務連絡を出したのでは?
主任 それはありません。
― 「子どもたちの健康より国歌が大切なのか」との批判があるが。
主任 国旗国歌の適正な実施は学習指導要領に定められており、密閉、密集、密接を避けるなど安全上の手立てを講じているので大丈夫と判断しました。(ここまで)
一方、文科省に「都教委に国歌斉唱を指示したのか」とたずねると「個別の対応は答えられない。ただ、日常的なやりとりの中で『学習指導要領にあるので国旗国歌は実施して下さい』とは言っている」と答えた。
教育政策が専門の世取山洋介・新潟大学准教授(よとりやまようすけ)は、今回の都の対応を批判する。
「卒業式や入学式などの学校行事の中身は各学校が自治的に決めるべきで、そこに介入してはならない。新型コロナウイルス拡大のおそれがあるのは明らかなのに、都教委が国歌斉唱を強制することは、子どもの生命と健康を守る自らの義務に反する」。
同会の近藤徹さんは、「大綱的基準の学習指導要領を根拠に国歌斉唱を強制するのは校長権限の教育課程への不当な介入だ」と話した。
『週刊金曜日 1278号』(2020.4.24)
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