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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

卒業証書の作り方-卒業式①

2012年03月30日 | 暴走する都教委
 『尾形修一の教員免許更新制反対日記』から
 卒業証書の作り方-卒業式①


 大震災関連で「ガレキ問題」「自衛隊評価」について書こうかなと思ってたけど、社説みたいな話を時期を逸して書いても仕方ないからやめます。で、しばらく「卒業式」について、いろいろと。え、卒業式の話題も時期遅れでは、という人もいるかもしれないけど、そうではないです。最後の学校だった六本木など単位制の高校では大体これから。もちろん小中もこれから。僕の経験による卒業式シーズンは20日前後という気持ちなわけ。この「時期の問題」はまた別に書きます。
 今日は、「卒業証書の作り方」。なんでかというと、東京でそれで「事故」が起こったから。17日の東京新聞朝刊に「校長印なく卒業証書無効 都立忍岡高、父母らに謝罪 作り直し郵送へ」という記事が載ってました。都教委のホームページを見ると、16日付で「都立高等学校における卒業証書に関わる事故について」という文書が。この「卒業証書」というものは、僕はもらった後で一度も見たことがない。普通二度と使わないでしょ。まあ破った記憶もないから、どこかにはあると思うけど。都のHPには「すぐに卒業証書を必要とする場合には個別に対応する」などと書いてあるけど、必要とする人はいないはず。いるのは「卒業証明書」の方です。卒業したことが証明されればいいのであって、あんな大きな証書を見せろという大学や企業があるわけないよね。
 で、ほとんどの人は卒業証書がどうやって作られているか知らないと思うので、少し紹介しておこうかなと思ったわけ。「卒業証書」の紙そのもの(と「卒業証書フォルダー」)は、(都立高校では)都教委から来ます。何枚いると申請します。外国籍生徒の場合、西暦を選べます。(日本籍では選べないのがおかしいのではないか。)定時制高校だと「学び直し」の生徒がいることがあるので、生年が「昭和」の場合がある。よって、「平成」「昭和」「西暦」各何枚と申請するわけです。
 そうやって厚紙に基本条項(「本校所定の全教育課程を修了したことを証する 東京都立○○高等学校長 ○×△□」)とか書いてあるわけです。この下に校長公印が押されるわけです。それ以外に「卒業証書」の横にもっと大きな「学校印」、上に「割印」と三つ押します。その前に。卒業生が確定しなければ作りようがありません。進学校なら何の問題もないでしょうが、中堅以下の高校だと成績不振や出席不足で卒業できない生徒が出ます。卒業生が確定して初めて証書作りになります。でも、中には「追試」「課題」をクリアできれば、卒業が追認されるという生徒がいるときも。待ってると証書が作れません。そういう時は作るだけ作っておいて、「卒業生番号」を最後に回すことにすると思います。
 押印の前に、まず個人情報を書き入れなくてはなりません。「氏名」「生年月日」「卒業生番号」ですね。これは担任が書いているわけではありません。そんな恐ろしいことはできません。ちゃんと「筆耕料」が公費で予算化を認められています。大体は書道の講師の先生だと思います。芸術科の中に「音楽」「美術」「工芸」「書道」とあるのですが、書道は講座数、生徒数の関係で大体は非常勤講師にお願いすることになります。その先生に証書の名前書きを依頼することが多いでしょう。もちろん校内、特に担任の中に能書家がいれば書いてもらうこともあるかも。でもそれだとタダだし、今はあまりないと思う。
 そうして押印の段階になるのは、10日から一週間前頃。都立高校の入選前後の空いてる時間を使って押印作業をするわけです。僕にとっては、ものすごく面白い仕事ではないけど嫌いではない、という仕事でしょうか。面白くないない部分は、その後ほとんど役に立つわけではないのにハンコの押し方などの決まりが面倒くさいから。曲がっていたら嫌な感じを持つ生徒もいるだろうし、けっこう気を遣うわけです。でも嫌いじゃないのは、いよいよ学年団の最後の仕事、一年間の大団円という気分の仕事だからですね。基本、同じことの繰り返しの肉体作業。リズムに乗れば楽しくないこともない。ハンコそのものは、経営企画室(事務室)にあります。公印は基本的に校長か室長しか押さないものだけど、証書作りだけは担任がやるしかないので、今は公印持ち出し簿みたいなのがあると思います。先ほどの「事故」の件は、本来この段階で気付いていないとおかしいと思います。そして「位置合わせ機」みたいなものに乗せて押していくわけです。もっともこの「位置合わせ機」というのは六本木で初めて使ったんだけど。別に担任がクラスの生徒を押すということではないので、誰が押したかはアトランダム。
 その前に「卒業生台帳」作りがあります。本来はこちらが重要で、永遠に残る卒業の証明。卒業生をその年の生徒番号順に書き並べた書類。これは学級担任が書きます。多少字が下手でも内部だけの書類だし、生年月日とかの情報は担任しか判らない。その台帳で卒業生に順番を振ります。それが卒業生番号になり、卒業証書の番号となります。で、台帳と証書を「割印」するわけです。最後に押印が終わった証書を乾かす。どこか誰も来ない部屋に並べてカギを掛けておくことが多いでしょう。こうしてやっと出来上がり。追認生徒が出たら、番号を最後にして同じ作業。
 今回の誤押印問題は、それ自体は生徒・保護者には「言われるまで感づかない」(言われてもピンと来ない)問題だと思います。生徒にすれば、「どっちでもいいよ」という話。学校印は押してあるんだから、それでいいんじゃないかという気もします。細かい話をすれば、卒業を認定したのは誰かという問題。「校長」です。「学校」や「教育委員会」ではありません。だから校長名の下に「校長印」がないとまずいわけ。「生徒にすれば、どっちでもいい話」だと思うけれども、教師とすれば「プロ的には信じがたい」話だと思います。ただし、校長印にも二つあって「公印」と「私印」、その「公印」の方です。「東京都立○○高等学校長」とハンコ特有の読めない文字で書いてあるものです。普通読めないから、読まない。よってどっちでもいいと僕が言ったわけ。「私印」は普通のハンコで、つまり鈴木校長なら「鈴木」とあるもの。「生徒指導要録」という大事な記録に押すハンコは私印。
 こうやって、卒業式の準備がウラで粛々と進んで行くわけです。最後に、乾いた証書を確認して順番に並べ、金庫にしまい当日を待ちます。難読人名にポストイットでルビを振ったりもするかな。途中でミスを見つけるとどうなるかとか、いろいろエピソードもあるけどやめておきましょう。「ケータイ大喜利」見てたら時間が遅くなってしまったな。とにかく、こういう裏仕事があるんだということを、ちょっと都立高の「事故」をきっかけに書いてみました。

『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2012年03月18日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/6f573baf36ef041f0ff43f1827542187

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