◆ すすむ「愛国心」の刷り込みと「エリート」優遇教育 (レイバーネット日本)
議案は校長の任命及び教員等の懲戒処分案件でいずれも非公開、報告は非公開報告が懲戒処分、公開報告が
①都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)の骨子について
②SNSを活用した教育相談(試行)の結果について
③都民の声(教育・文化)について[2018年度上半期(4月~9月)]他。
傍聴していて毎回思うことだが、教育委員諸氏は議案・報告に対して一言発言はするが、丁寧に論議し都教委事務方に変更や加除修正を迫ることは皆無。議案・報告を追認するために教育委員会定例会を開催するのではないはずだ。心してほしいと強く思う。
① 都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)の骨子について
――「エリート」優遇・「愛国心」刷り込みの「改革」は止めてもらいたい!
1997年から2006年にわたる都立高校改革推進計画では目に見えるものとして、学区の廃止、進学指導重点校の指定やチャレンジスクール等の新設、夜間定時制閉課程等を行った。
2012年から2021年にわたる都立高校改革推進計画では、国際高校の国際バカロレア認定コースや〇〇推進校・重点校等の指定、自己負担80万円で1年間の留学(年間200人)実現を「支援」する次世代リーダー育成道場、夜間定時制4校の閉課程(廃止)等々、競争主義、「エリート」優遇・「ノンエリート」切り捨ての「改革」を行ってきた。
この日の報告は、2019年度から2021年までの「新実施計画(第二次)」(案)の骨子ができたとして示された(都教委HPにアップされている)。12月21日まで都民からパブリックコメントを募集し、2月に「新実施計画(第二次)」を策定するとのことだった。
骨子は、「次代を担う社会的に自立した人間の育成(教育内容)」「生徒一人一人の能力を最大限に伸ばす学校づくりの推進(学校設置・課程改善等)」「質の高い教育を支えるための環境整備(教育諸条件)」を目標にすると、ことばはきれい。
しかし、先にも述べたように「エリート」育成のための改革であり、「弱者」に位置する生徒は切り捨ててもいいという内容に思えてならない。
一例を挙げれば、夜間定時制課程の閉課程には「チャレンジスクールでは代替にならない」とたくさんの都民から強い反対(=請願を含む)が寄せられてきたが、骨子はこうした都民の声には耳を貸すことなく、「チャレンジスクール・昼夜間定時制高校の充実」「一部の夜間定時制課程を閉課程」と「取組の方向」を記す。
都民の声を受けて論議をし直した形跡は見られない。都教委にとっては、高校に行けない子どもが出てもいいということなのか、と思う。
「オリンピック・パラリンピック教育の推進」の「ボランティアマインド」では、「すべての都立高校に『ボランティアサポートチーム』を編成し、各学校で組織的、計画的にボランティア活動が一層推進される仕組みを構築」するという。
2020東京大会開催に疑問を持つ生徒にまでボランティア活動を強制することは、してはいけないことだ。
骨子からは、「エリート」優遇・「ノンエリート」切り捨てや「愛国心」の刷り込み、都教委の学校支配を更に進めるであろうことは明白だ。
「環境整備」に関して、「教員を目指す人で、優秀な人が減っている」との発言が2人の教育委員からあった。しかし、教育委員からも担当部長からも、なぜそうなってしまうのか、なぜ採用試験の倍率が高くならないのかの原因を追及する発言は今回もなかった。
職員会議での発言を禁じられ、都教委の指示のままに動かされ、オーバーワークが常態化する現実に、現職の教員だけでなく教職希望者も教職の仕事に魅力を感じなくなっているのだ。
解決策は、都教委が支配介入をやめて各学校の職員会議を最高決定機関に戻すこと、それ以外に解決策はない。
② SNSを活用した教育相談(試行)の結果について
――SNSではなく、身近な教員に相談したいと生徒が思える環境・教員の働き方が大事!
8月25日から9月7日まで都立高校生(都立中後期課程、特別支援学校高等部を含む)を対象に、10回線1対1のチャット相談を行った。相談員は心理カウンセラー資格保有者。
その結果、相談件数は315件、1件当たりの相談時間平均は88分、相談回数は1回が146人、2回が38人、4回以上が11人。相談内容は「友人関係」が73件で最多、「いじめ」についての相談は電話相談では一番多いが、今回は9件。
試行の結果として、「教育相談におけるSNSは有効」「対象者数に対する回線数はおおむね妥当」、次年度に向けては「福祉保健局や青少年・治安対策本部と連携したSNS相談体制の構築」「相談者に最後まで寄り添える対応の検討」を挙げた。
SNSや電話相談を全面否定するものではないが、それ以前に、生徒と長い時間を過ごす教員たちに、生徒が相談したいと思える関係性を取り戻すことだ。
生徒と過ごす時間的余裕が教員にあれば、教員は生徒と触れ合う中で異常に気づくことができ、生徒に向き合うことができる。生徒も安心して教員に悩みを打ち明け相談できるのだ。
相談員とは違って、その生徒の学級や友人関係も知る教員だから対応できることが大きいのだ。そのことが、都教委や教育委員には理解できないのか、と思う。
③ 都民の声(教育・文化)について[2018年度上半期(4月~9月)]
――都教委に批判的な「声」をこそ、大事にすべき!
今年度上半期の「都民の声」受付件数は例年の1.4倍の2688件。受付件数の増加は、足立区の性教育を巡って自民党の古賀都議が「不適切な授業」と問題視したことに対し、295件の「声」が寄せられたことによる。
このうち、都教委の方針を支持する「声」が168件、「性交」「避妊」「人工中絶」を教えた授業を支持し都教委を批判する「声」が125件。都教委を批判する「声」を受けとめて、改めて都教委で論議したという報告はなかった。
都教委の方針を支持する「声」が多かったからよしとするのではなく、批判から学ぶ姿勢が大事なのだ。この姿勢が教育委員を含む都教委には欠如している。「都民の声」を受け付ける教育情報課は、「苦情」のガス抜きのために存在するのではない。
なお、北村教育委員からは今回も、「性教育については様々な立場・考え方があるが、学校は保護者や生徒のニーズに即して萎縮することなく性教育を進めてほしい」との発言があった。この発言だけを見れば、「性交」「避妊」「人工中絶」を教えることを支持しているかのようにも聞こえる。しかし、この発言は、都教委の授業に対する見解と今後の方針を批判するものではないことは明らかだ。(注)の見解と方針が4月26日の定例会で議題になった際に、同教育委員はこれを批判し修正する発言をしなかったのだから。どこに同教育委員の真意があるのか、私にはさっぱりわからない。
(注)授業に対する都教委の見解は、「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」であり、今後の方針は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」というものだった。
『レイバーネット日本』(2018-11-27)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1122nedu
議案は校長の任命及び教員等の懲戒処分案件でいずれも非公開、報告は非公開報告が懲戒処分、公開報告が
①都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)の骨子について
②SNSを活用した教育相談(試行)の結果について
③都民の声(教育・文化)について[2018年度上半期(4月~9月)]他。
傍聴していて毎回思うことだが、教育委員諸氏は議案・報告に対して一言発言はするが、丁寧に論議し都教委事務方に変更や加除修正を迫ることは皆無。議案・報告を追認するために教育委員会定例会を開催するのではないはずだ。心してほしいと強く思う。
① 都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)(案)の骨子について
――「エリート」優遇・「愛国心」刷り込みの「改革」は止めてもらいたい!
1997年から2006年にわたる都立高校改革推進計画では目に見えるものとして、学区の廃止、進学指導重点校の指定やチャレンジスクール等の新設、夜間定時制閉課程等を行った。
2012年から2021年にわたる都立高校改革推進計画では、国際高校の国際バカロレア認定コースや〇〇推進校・重点校等の指定、自己負担80万円で1年間の留学(年間200人)実現を「支援」する次世代リーダー育成道場、夜間定時制4校の閉課程(廃止)等々、競争主義、「エリート」優遇・「ノンエリート」切り捨ての「改革」を行ってきた。
この日の報告は、2019年度から2021年までの「新実施計画(第二次)」(案)の骨子ができたとして示された(都教委HPにアップされている)。12月21日まで都民からパブリックコメントを募集し、2月に「新実施計画(第二次)」を策定するとのことだった。
骨子は、「次代を担う社会的に自立した人間の育成(教育内容)」「生徒一人一人の能力を最大限に伸ばす学校づくりの推進(学校設置・課程改善等)」「質の高い教育を支えるための環境整備(教育諸条件)」を目標にすると、ことばはきれい。
しかし、先にも述べたように「エリート」育成のための改革であり、「弱者」に位置する生徒は切り捨ててもいいという内容に思えてならない。
一例を挙げれば、夜間定時制課程の閉課程には「チャレンジスクールでは代替にならない」とたくさんの都民から強い反対(=請願を含む)が寄せられてきたが、骨子はこうした都民の声には耳を貸すことなく、「チャレンジスクール・昼夜間定時制高校の充実」「一部の夜間定時制課程を閉課程」と「取組の方向」を記す。
都民の声を受けて論議をし直した形跡は見られない。都教委にとっては、高校に行けない子どもが出てもいいということなのか、と思う。
「オリンピック・パラリンピック教育の推進」の「ボランティアマインド」では、「すべての都立高校に『ボランティアサポートチーム』を編成し、各学校で組織的、計画的にボランティア活動が一層推進される仕組みを構築」するという。
2020東京大会開催に疑問を持つ生徒にまでボランティア活動を強制することは、してはいけないことだ。
骨子からは、「エリート」優遇・「ノンエリート」切り捨てや「愛国心」の刷り込み、都教委の学校支配を更に進めるであろうことは明白だ。
「環境整備」に関して、「教員を目指す人で、優秀な人が減っている」との発言が2人の教育委員からあった。しかし、教育委員からも担当部長からも、なぜそうなってしまうのか、なぜ採用試験の倍率が高くならないのかの原因を追及する発言は今回もなかった。
職員会議での発言を禁じられ、都教委の指示のままに動かされ、オーバーワークが常態化する現実に、現職の教員だけでなく教職希望者も教職の仕事に魅力を感じなくなっているのだ。
解決策は、都教委が支配介入をやめて各学校の職員会議を最高決定機関に戻すこと、それ以外に解決策はない。
② SNSを活用した教育相談(試行)の結果について
――SNSではなく、身近な教員に相談したいと生徒が思える環境・教員の働き方が大事!
8月25日から9月7日まで都立高校生(都立中後期課程、特別支援学校高等部を含む)を対象に、10回線1対1のチャット相談を行った。相談員は心理カウンセラー資格保有者。
その結果、相談件数は315件、1件当たりの相談時間平均は88分、相談回数は1回が146人、2回が38人、4回以上が11人。相談内容は「友人関係」が73件で最多、「いじめ」についての相談は電話相談では一番多いが、今回は9件。
試行の結果として、「教育相談におけるSNSは有効」「対象者数に対する回線数はおおむね妥当」、次年度に向けては「福祉保健局や青少年・治安対策本部と連携したSNS相談体制の構築」「相談者に最後まで寄り添える対応の検討」を挙げた。
SNSや電話相談を全面否定するものではないが、それ以前に、生徒と長い時間を過ごす教員たちに、生徒が相談したいと思える関係性を取り戻すことだ。
生徒と過ごす時間的余裕が教員にあれば、教員は生徒と触れ合う中で異常に気づくことができ、生徒に向き合うことができる。生徒も安心して教員に悩みを打ち明け相談できるのだ。
相談員とは違って、その生徒の学級や友人関係も知る教員だから対応できることが大きいのだ。そのことが、都教委や教育委員には理解できないのか、と思う。
③ 都民の声(教育・文化)について[2018年度上半期(4月~9月)]
――都教委に批判的な「声」をこそ、大事にすべき!
今年度上半期の「都民の声」受付件数は例年の1.4倍の2688件。受付件数の増加は、足立区の性教育を巡って自民党の古賀都議が「不適切な授業」と問題視したことに対し、295件の「声」が寄せられたことによる。
このうち、都教委の方針を支持する「声」が168件、「性交」「避妊」「人工中絶」を教えた授業を支持し都教委を批判する「声」が125件。都教委を批判する「声」を受けとめて、改めて都教委で論議したという報告はなかった。
都教委の方針を支持する「声」が多かったからよしとするのではなく、批判から学ぶ姿勢が大事なのだ。この姿勢が教育委員を含む都教委には欠如している。「都民の声」を受け付ける教育情報課は、「苦情」のガス抜きのために存在するのではない。
なお、北村教育委員からは今回も、「性教育については様々な立場・考え方があるが、学校は保護者や生徒のニーズに即して萎縮することなく性教育を進めてほしい」との発言があった。この発言だけを見れば、「性交」「避妊」「人工中絶」を教えることを支持しているかのようにも聞こえる。しかし、この発言は、都教委の授業に対する見解と今後の方針を批判するものではないことは明らかだ。(注)の見解と方針が4月26日の定例会で議題になった際に、同教育委員はこれを批判し修正する発言をしなかったのだから。どこに同教育委員の真意があるのか、私にはさっぱりわからない。
(注)授業に対する都教委の見解は、「『性交』『避妊』『人工中絶』といった中学校学習指導要領保健体育にないことばを使った授業は不適切。保護者の理解を必ずしも十分得ないまま授業が実施されていた。」であり、今後の方針は、「学習指導要領を基本とする。すべてを集団指導で教えるのではなく、集団指導で教えるべき内容と個別指導で教えるべき内容を明確にする。学習指導要領を超える内容を指導する場合には、事前に学習指導案を保護者に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別指導を実施するなど」というものだった。
『レイバーネット日本』(2018-11-27)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1122nedu
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