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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

これでいいの?練馬の教育

2009年03月05日 | 平和憲法
 ▲ これでいいの?練馬の教育

 2月20日(金)の夜、「学校はだれのもの? これでいいの?練馬の教育」という集会が石神井交流センターで開催された(主催 生かそう1947教育基本法!練馬連絡会議)。
 練馬の小中学校では、2003年ごろから二学期制、学校選択制、学校統廃合、夏休み1週間短縮、小中一貫教育など、新自由主義教育の流れに沿った「改革」が強引に導入された。共通しているのは、一方的に区教委が決定しトップダウンで現場に押しつける姿勢である。こうした現状を、保護者、教員、研究者が、それぞれの立場から問題提起した。

 ▲ 問題提起
1 光が丘地区学校統廃合問題  保護者より(西浦昭英さん)

 光が丘地区の小学校8校は「区立学校適正配置第一次実施計画」(2008年2月策定)に基づき、2010年4月に4校に統合・再編される。区は適正配置の前提として光が丘地区の児童数減少を挙げるが、事実とは違う。
 08年度東京都教育人口等推計によると、光が丘一小・二小の統合新校は、2010年度から13年度にかけて620~630人の水準を保ち、しかも毎年約2人微増する。110人以上と予想される学年が複数あり、クラス数は毎年18クラスで、文科省の適正規模の12~18クラスの上限ぎりぎりになる。
 学区には、畑や空き地がかなり残っている団地外地区も含むため、マンション新築により児童数が増加すれば120人を超えて1クラス増となる可能性がある。現在のところ、教室の余裕は算数の少人数用教室と多目的室しかないため、パンクする可能性がある。光が丘団地内は都市計画上増築が一切できないので、プレハブすら建てられない。
 すでに東京都以外の46道府県は、一部の学年で40人未満の少人数クラスを実行している。民主・社民・共産は、共同で少人数クラス実施の法案を提出しているし、公明党も、40人未満の少人数クラスに賛成している。今後35人学級や30人学級に移行すれば、普通クラスの教室すら確保できなくなる。
 区教委は「国による40人学級の見直しは当面ない」と判断しているが、すでに文科省は少人数クラスになった場合の試算をするプロジェクトチームを立ち上げており、将来的に40人学級が継続する見通しはまったくない。今回の光が丘地区の小学校の統廃合は、杜撰な計画であると言わざるをえない
 現在、光が丘四小は7クラス約210人と恵まれた規模で、子どもにとってすばらしい環境だ。娘が入学する前は、単学級はクラス替えができず、いじめなどの問題が起こると対応が難しいと感じていたが、実際に入学するとそういう問題は聞かないし、親子とも満足している。算数の授業は東京都の加配と練馬区の学力支援向上講師がいるので、1クラスを3つに分け10人強で授業をしている。ところが、統合後は2クラスを3分割するため、20人以上で授業をすることになり教育環境は悪くなる。
 現在の動きとしては、議会に陳情を出すことと並行して、質問を区教委に投げかけている。区教委の回答を読むと、教育の視点がなく、大規模改修の巨額の費用をいかに安くするかという発想しか感じられない。今後の課題として3つのことを考えている。まず教育委員へのアプローチ。区議には接触できるが、教育委員へのアプローチは難しい。次に区議、とくに公明党の議員にアプローチをしたい。そして保護者や教員との協力もさらに必要になるだろう。
2 大泉学園桜小・桜中小中一貫校問題  教員より(大泉学園桜中教員)
 大泉学園桜中は1学年2クラスの小規模校である。教職員が少ないので授業のアキ時間はほとんどない。また小規模校でも校務分掌の数は変わらないので、1人当たりの負担が大きい。
 *練馬区初の一貫校になることが教職員に知らされたのは昨年11月のことだった。「なぜうちの学校が」というのが正直な感想だった。現場に何の話もなく上から突然降りてきたからだ。
 その後、区民や保護者への説明会は合計3回あった。そのとき出た質問を紹介する。
 中学は学校選択が導入されているが「中学入学時に桜中以外を選択したり、桜小以外から桜中に入学できるのか」。区の回答はどちらも可能ということだった。
 「区民や教員から一貫校導入の要望があったのか」という質問には、区民からはあったとの回答だった(教員の要望については回答なし)。
 教員の数は増えるのかという質問には、定数法に基づくので増やさないとのことだった。
 「9年で卒業になるが教員の異動はどうなるのか」という質問には、特別な適用はないとのことだった。普通4-5年で異動なので、最後まで生徒をみることができなくなる。区民にも教職員にも不安が渦巻いている。
 区は、中学の英語や理科の教員が小学校に出向いて授業や実験をし、逆に中学の数学基礎ができていない生徒のために小学校の教師が中学で授業をすると説明した。しかし、教員に体は2つないし準備も必要なので、人数を増やさない限り物理的にムリだ
 その他、行事についても、運動会はいっしょにやるのか、中学校の入学式は行うのか、など見通しがついていないことは数多くある。
 学校体制について、区は、1期(小1-4)は学級担任制、2期(小5-中1)は一部教科担任制、3期(中2-3)は教科担任制で、校長1人、副校長3人という体制だと説明した。しかし現時点で*3人の副校長の役割分担は明確ではない。では職員室はどこに置き、職員会議はどうするのかという疑問も湧く。今後区民の知恵も借りながら、区にものをいっていきたい。
3 新学習指導要領で学校はどう変わるのか(夏休み短縮問題にも触れて)
              佐藤康尚・東京都教職員組合練馬支部執行委員長

 2007年に二学期制が導入されたころから、区教委はなぜ現場の声を聞かないのかという思いが募り、要請書を出してきた。教育長は懇談の場を設けてくれるが、結果はすべて無視だ。そこで今回の夏休み1週間短縮と小中一貫校の問題では陳情を出し、地域の方から「決める前にきちんと説明してほしい」との署名運動まで起こった。しかし不採択である。小中一貫校問題では基本方針を決めたあと13校の組み合わせから消去法で候補を絞っただけで、桜小・中の個別問題はまったく議論しなかった。だから決定したあといろんな問題が起こる。
 夏休み短縮問題でも、現場の意向はまったく聞かなかった。新学習指導要領改訂への移行措置で授業時間数が増える。中学では5時間授業の日が週2回だけあるが1日に減らす必要があり、それは負担が大きい。そこで夏休みを1週減らして時間を確保することを区教委は決定した。しかし週時程を現行のままにして時間割を組むことが可能かどうかという議論はまったくされなかった。現場への説明責任を果たさず決定するなし崩し的やり方で、ものごとがどんどん進んでいることに強い危機感を感じる。
 こういう流れをなんとしてでもストップさせるには、区民や保護者に実情を知らせなければいけない。夏休みが勝手に短くされることを子どもたちは知らない。民主主義を学ぶうえでも決定的に非教育的な状況になっている。学校はだれのものかという声を、現場からも保護者からも上げていく必要がある。
 背景には、新学習指導要領や新しい教科書など、全国的な教育行政の問題がある。教科書検定では、各教科に道徳をどう取り込んだのか、出版社に対照表を出させてチェック・統制することが始まりそうだ。教員への統制も、東京の主任教諭制導入で強まる。全国的にトップダウンで学校を統制する流れが強くなりつつある。子どもの最善の利益という立場はすっかり消えている。この面からも声を上げていきたい。
 ▲ 講演
これでいいの? 練馬の教育&教育行政

               講師 山本由美さん(東京田中短期大学准教授)

 新自由主義教育改革とは、具体的には学力テストに基づく学校・教員評価と学校選択制、従来の学校自治的な関係の解除(二学期制や夏休み短縮にも関係がある)、カッコ付きの「地域に開かれた学校」、そして究極の公教育の序列的再編である学校統廃合を指す。
 学校統廃合は足立・台東は2000年ごろ始まり、いま新宿・中野・練馬で進んでいる。
 練馬区の教育「改革」は、2003年に志村豊志郎区長が当選し、都教委から指導課長が出向してきたころ始まった。
 データでみると、練馬区の小学校の不登校者数は、区の人口が多いせいもあろうが、ここ5年ほど東京都で練馬が1位、中学は4位である。就学援助率は東京の平均程度、私立中学進学数はここ7年ほど18%前後で変化がない。
 学校選択制は、中学のみ2005年に導入された。昨年7月、中学校選択制度検証委員会の報告が発表された。デメリットとして、1)小規模校の小規模化と人気校への集中、2)保護者が風評で学校を選択する、3)希望する部活の有無に左右される、4)地域の教育力の低下、5)学級数が直前まで決まらないので新年度体制が固まらないといった教職員体制、学校経営上の問題、などが上がっている。
 アンケートでは「生徒の通学距離が長くなり、安全性に不安を感じている」「保護者から個別の要求が増えた」など正直な感想もみられる。江東区では選択制の見直しが始まったが、練馬もいずれそうなるかもしれない。
 区の学力テストは東京書籍に委託し2003年から実施し、学校別の結果も公表していたが、全国学テが始まった2007年に消滅した。
 「地域に開かれた学校」は、地域の保守層を参加させ教員と保護者の関係を分断しようとする手法だが、練馬では外部評価や学校評議員は取り入れていないので、その色彩は弱い。04年に導入した「学校応援団事業」や「児童放課後等居場所(ひろば)づくり事業」は民間委託の流れに乗るものである。
 学校二学期制は、練馬は東京でも早い07年から中学、08年から小学校に導入した。現場の意向を無視してトップダウンで強行した典型的な制度改革である。授業時間数確保という理由は口実に過ぎず、教職員をトップダウン手法に慣れさせるため「意識改革」をねらった制度である。子どもにとっては、駅伝が定期テストの4日前に行われたり、新人戦が定期テストと重なったり、夏休みが消えたり、ダメージが大きい。また中学では10-11月の教員の多忙が著しい。
 練馬の学校統廃合では、適正規模が小学校12-18学級、中学校11-18学級とされる。これは1953年の昭和の町村大合併の際、人口8000人で中学1校という行政効率から割り出した基準に過ぎず、教育学的根拠はいっさいない。さらに、早くも04年から適正規模からはずれる学校を「過小規模校」「過大規模校」と、練馬独自の表現で呼び始めた。他区では適正規模以外に最低基準を設け、最低基準を下回ったときにはじめて統廃合を考える。
 現在、学校ごとの統合準備会で新校名を検討しているが、準備会には教職員不在なので「こんな伝統を生かしたい」という意見は出しようもない。こんな状態では新校ができて学校が荒れないか懸念される
 小中一貫教育は03年に教育特区を取得した品川からスタートした。品川、渋谷、京都市にみられるように学校統廃合との関連が深い。「中1ギャップをなくす」を口実にするが、品川のようにエリート校づくりの側面が強い。しかし品川では子どもの発達段階を 無視したカリキュラムだという指摘がある。
 *夏休み短縮については、校長会が「夏休み短縮より授業時数増で対応する」といっているのにそれも無視し、結論先にありきで強引に進めようとしている。
 学校選択が早く始まった*足立や品川では、地域の教育力が落ち、広域不良少年団の抗争など、子どもの荒れが目立つようになった。練馬は今後どうなるのか。
 極端なトップダウンが続き、保護者は「どうせ言っても変わらない」と無力感に襲われている。教員はカリキュラム変更からすら排除されている。保護者のネットワークは、選択制で通学範囲が広がり顔を合わせる機会が減り分断化されている。
 この後の▲質疑応答で、
 教員の方から「いま学校は荒れている。勤務校では、友達を窓から逆さ吊りにしようとしたり、授業中に教室を走り回ったり後ろでトランプをして授業が成り立たない。プリントは紙飛行機になり、教科書は切り刻まれる。そういう状況を学校は隠そうとする。なかなかPTAに説明せず、やっと12月に懇親会を開いたが校長は『学校が召集したことにしないでくれ』といった。また教員同士も関係が閉ざされている」という発言、
 文教委員会の区議から「夏休み短縮は教育委員会で決定してから議会に報告し、教委は議会の介入は許さないと主張する」という批判、「夏休み短縮の教育委員会の席上、教育委員のなかには土曜を活用しよう、夏休みは重要だと最後まで言っていた人もいた。それを教育長が強引に誘導した。傍聴者が多いと教育長は気をつかった発言をする。教育委員会の傍聴に行こう」という提案があった。
☆「生かそう1947教育基本法!練馬連絡会議」の集会は、現職教員や教組役員が参加していて、いつも地に足のついた教育論が討論される。この日の集会には保護者、一般区民だけでなく区議も何人か参加していて、方向の定まった議論がされる集会となった。
『多面体F』より(集会報告 / 2009年02月24日)http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/

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