=たんぽぽ舎です。【TMM:No5084】2024年9月18日=
☆ 外務省・米軍は被害者の個人情報保護を隠蔽の理由に
「メディア改革」連載第160回 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)
私はキシャクラブ(日本にしかない「記者クラブ」は海外にあるpress clubとの混同を避けるためkisha kurabuと英訳される)は組織暴力団より悪質な集団だと言ってきた。また、その証拠となる事例があった。
私は9月12日から14日まで沖縄で、米兵事件と報道について取材した。沖縄の事件記者、報道デスク、編集幹部の直接取材はできなかった。メディアの取材や調査は最も困難な仕事だ。
1995年の米兵3人による小学生への強かん事件以降、沖縄県警は、米兵事件を、発生・立件後に記者クラブで広報してきた。ところが、昨年12月24日夜起きた、米空軍兵長による16歳未満の少女に対する不同意性交被疑事件では、県警・地検、外務省などが、今年6月25日まで事件を隠蔽した。
琉球朝日放送(QAB)の事件担当記者が那覇地裁の刑事裁判公判予定簿で事件のことを知り、報道部デスクへ伝え、捜査当局、米軍などを取材し、県警が在沖米空軍嘉手納基地の空軍兵長を3月11日に那覇地検に書類送検し、地検が同27日に在宅起訴していたことを突き止め独自に報じた。
また、6月28日には、女性を強かんしようとして負傷させた海兵隊員が5月26日に逮捕され、6月17日に起訴されていたことが琉球新報の報道でわかった。
また、林芳正官房長官が7月3日の会見で、この2件の他にも同様の事案が3件あると述べた。23年から計5件を隠蔽していたのだ。青森、神奈川、山口など米軍基地のある各自治体でも多数の米兵事件は隠蔽されていた。
☆ 「権力監視」が任務の県警記者クラブは抗議もせず
県警は9月5日、20代の米海兵隊員の男性を不同意性交致傷の疑いで書類送検したと県に伝達した。被害者は20代女性で、6月下旬に本島北部で発生した。この事件は一連の事件の時期が重なっている。昨年12月の事件が報道されていれば、その後の事件は防げたかもしれない。
昨年以降、沖縄で少女の事件を含め5件も、県警から県への連絡、県警記者クラブ、司法記者クラブ、県政記者クラブへの広報(レク、囲み取材、非公式の情報提供も含む)がなかったことは看過できない。外務省も県警から連絡を受け、米大使館へ抗議したのに、霞クラブでの広報をしていない。
那覇の捜査機関、中央政府が情報不開示(隠蔽)すると決定すると、刑事裁判が進行するまで、マスメディアの取材報道従事者に半年もの間、まったく伝わらない怖い構造ができ上っている。
私の関心は、報道各社、各記者クラブは、捜査当局、中央政府に、「なぜ広報しなかったのか」について抗議や要望をしているのかということだった。
9月10日、ネットのHPのサイトから、琉球新報とQABに、取材依頼書を送ったが返事はない。私は沖縄マスコミ労協結成30年集会で記念講演をするなど、沖縄で度々講演してきた。当時の労組幹部が沖縄の新聞、テレビの社長や役員になっている。
外務省報道官、官房長官らは、「被害者のプライバシー」を米兵事件の情報隠匿の理由に挙げているが、糸数氏らは弁護士、警察、ソーシャルワーカー、精神科医、記者有志、書店組合などのネットワークで、被害女性の匿名性を完全に守り、プライバシーを保護してきた。
☆ 沖縄の法曹界・市民・報道は被害女性の人権を擁護
糸数慶子・前参院議員は私の取材に、「沖縄の人民は、米兵事件と、事件の隠蔽に怒っている。いつまでこうした苦しみが続くのか。県議会は全会一致で、米軍に抗議し、情報を隠した政府にも改善を求めた。自民党も含め超党派で行動する」と語った。
県警クラブに質問書を送りたいと思ったが、幹事社がわからない。県警の代表電話に電話しても記者クラブには繋いでくれない。
県警クラブにはHPも、連絡先、事務局もない。怪しい反社団体と同じだ。県警の係長に幹事社への連絡の仲介を頼んだが17日までに連絡はない。
那覇の事件担当の記者に会えなかった。SNSで、匿名にするので情報提供をと呼び掛けたが無駄だった。報道界には社会的正義のために公益通報する労働者もいないのだ。13日にはFBでも、現場記者に呼び掛けたが無駄だった。
◎ 9月23日(休日)午後1時半から5時、東京・文京区民センターで『犯罪報道の犯罪』(学陽書房)出版40年記念シンポジウムを開催する。
シンポは9年ぶりの単行本『生涯一記者 権力監視のジャーナリズム提言』の刊行(9月20日、社会評論社)の記念も兼ねている。
フォークシンガー、中川五郎さんの友情ライブ公演もある。
お茶の水駅近くの「祭り」で二次会も用意されている。
シンポの案内は、ブログ「浅野健一のメディア批評」に載せている。
http://blog.livedoor.jp/asano_kenichi/archives/36724529.html
参加申込は、社会評論社 (book@shahyo.com) へ電子メールを。
電話:03-3814-3861、FAX:03-3818-2808。
9月23日午後、ぜひ文京区民センターに来てください。
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