☆ 証拠捏造(ねつぞう)の袴田事件(週刊新社会:沈思実行(210))
鎌田 慧
今月26日、静岡地裁は、死刑囚・袴田巌さんの再審判決で、無罪判決を出す。それにはまちがいはない。
しかし、問題なのは、検察側が抗告しないかどうかだ。
10年前の2014年3月、静岡地裁は再審開始決定を出した。が、検察側が抗告して、東京高裁が再審決定を取り消した。そのため、10年間も無罪判決が引き延ばされてきた。
それでも、袴田さんは「これ以上、拘置を続けるのは耐え難いほど正義に反する」との村山浩昭裁判長の英断によって、即時釈放となった。47年ぶりに姉ひで子さんと暮らせるようになった。
判決文に、証拠は「捜査機関による捏造の疑い」があると断じている。
袴田さんは無実の「死刑囚」として、巷(ちまた)の人たちに見守られながら街を闊歩している。不思議だ。
事件発生は1966年6月。清水市(現静岡市)で発生した「味噌工場」専務一家4人の殺人と放火事件だった。
その容疑者として従業員の袴田さんが逮捕されて、すでに58年2ヵ月がたった。
最高裁で死刑が確定してから袴田さんは、まるで死刑執行の恐怖から逃れるように、意識が世間から乖離して夢の中にいるようだ。
村山裁判長によって、「偽造」と判断された証拠とは。味噌タンクの中に隠されていた、5点の衣類である。
最初の「証拠」は袴田さんのパジャマだった。
ところが、それには4人を刺殺したにしては、血痕の付着がなかった。
それで後から「証拠」とされたのが下着など5点の衣類だった。
しかし、それらは1年以上も味噌に漬けられていたというにしては、血液の赤みが残っている、というものだった。本来なら、酸化して黒ずむはずである。
そればかりか、袴田真犯人を証明するために出してきたのが、味噌漬けになっていた半ズボンの「とも布」である。
袴田さんの実家から押収した生地と同一のものだ、と鑑定された。
しかし、その「とも布」は家宅捜索の時に警察官がもちこんだものだった。
『週刊新社会』(2024年9月18日)
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