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徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

脳と意識

2011年01月27日 | 生命

我々は外界を認識し、自意識を持って行動している。これらの全ては脳というスクリーンに投影された写像なのだが、普段はこの事実を忘れて見たものを現実だと思い行動している。

幻肢という症状がある。事故などで手足を失った人が、それが無いにもかかわらず痛んだり、痒みを感じたり、あるいはコーヒーカップを掴んだり出来る。他人が無理にその掴んだコーヒーカップを引っ張ると、引き剥がされるような痛みさえ感じる。これは当人にとっては厄介な問題で事故後何年たっても消えない。

この幻肢を消すことに成功した医者がいる。 V.S.ラマチャンドラン、インド系米国人で最近ニュートン(雑誌)のインタビュー記事でよく目にする。 彼の”Phantoms in the brein;脳の中の幽霊”という本の中でそれが述べられている。かれは簡単な箱と鏡でつくった器具を使い10年間消えなかった患者の幻肢の”切断”に成功した。

脳の中で何が起こっているかというと体の各部位、腕、足、手、唇等は脳の上にマッピングされている。事故で切断された腕や足が脳内マップに残ったままになっていて異常感覚を起こすのが幻肢である。これを消すには視覚によるフィードバックによりマップの再構成を行うことが有効でラマチャンドランはそれに気がついて成功した。

話は変わるが犬に意識はあるだろうか? 最近盲導犬クィールの訓練士である和多田さんの本を読んでいると ”犬には過去も未来も無く、今しかない” ので訓練の際には常にそれを意識しておく必要がある、と書いていた。 受動意識仮説というのがあって、”意識というのは自己の過去の経験を紐つけ(エピソード記憶)するために形成された”というもので、その意味では犬には意識は無いのだろう。なぜ意識が受動かという事に関して、リベットの実験というのがあり、人がある行動、例えばボタンを押そうとする場合、押そうと思うより前に指に準備電位が発生するという事実が実験により判っている。

この実験の結論は”人間の行動は無意識になされており,意識はそれを追認しているだけ。” と言う事になる。進化の観点から考えると犬やその他の哺乳類に意識がなくて人類にだけそれが有るとすると、後付で発生したと考えるのが自然である。 要は意識というのは過去の自己のエピソード記憶を形成するためのモニター機能であって、魂などとは全く関係ない代物だという説である。


謹賀新年

2011年01月01日 | 生命
     
明けまして、おめでとうございます
本年が皆様にとって良い年でありますよう、お祈り申し上げます。

地球は美しい星です。 まるで宇宙に浮かぶ青い宝石です。 そして我々人類を生み出した奇跡の星でもあります。 この宇宙には我々以外にも知的生命が存在するのでしょうか?それとも、我々はひとりぼっちなのでしょうか? これを推定するドレイクの方程式というのがあります。

N = {R}_{*} times {f}_{p} times {n}_{e} times {f}_{l} times {f}_{i} times {f}_{c} times L

ここで、

N :我々の銀河系に存在する通信可能な地球外文明の数
R* :我々の銀河系で恒星が形成される速さ
fp :惑星系を有する恒星の割合
ne :1 つの恒星系で生命の存在が可能となる範囲にある惑星の平均数
fl :上記の惑星で生命が実際に発生する割合
fi :発生した生命が知的生命体にまで進化する割合
fc :その知的生命体が星間通信を行う割合
L :星間通信を行うような文明の推定存続期間

1961年当時ドレイク等が使ったパラメータではN=10、つまりこの銀河系には10の知的文明がある可能性を推定していました。この推定に基きSETI(地球外知的生命探査)が大規模に開始されました。 しかしその後の天文学の成果から恒星の赤色矮星の占める比率の多さや、ガス惑星(木星や土星等)に比べ固体惑星が稀である事が判ってきてN数の推定値は大幅に小さくなりました。また長年のSETI活動からも何らの証拠は検出されていません。こうなると銀河系内での人類以外の知的生命体の存在はかなり疑わしくなります。

実空間で光速を超える事は出来ませんが時空は曲がることが実証されており曲がった時空同士をつなぐワームホールも一部の物理学者は真剣に検討しています。これから1000年後、一万年後を想像したとき人類がワームホールを経由して宇宙を自由に行き来している可能性はあると思います。そうなると人類は環境の整った固体惑星を探すでしょう。逆に考えると、もし過去に知的生命が存在したとすると地球を見逃すはずは無いと思いませんか。しかし地球上で過去に他の知的生命体が来訪した痕跡は見つかっていません。これをフェルミ・パラドックスと呼びます。 最近、2012年に巨大宇宙船が来訪するという報道はありますがガセネタでしょう。http://english.pravda.ru/science/mysteries/22-12-2010/116314-giant_spaceships-0/

以上の事を考え併せると、人類は宇宙で唯一の知的生命かもしれない、我々は、ひとりぼっちなのかもしれない... これは、私にとってかなショックな事柄です。小さい頃から鉄腕アトムに憧れ、SFを読んで大きくなった私としては宇宙人の居ない世界など想像したくもない事です。

しかし、この地球の我々だけが己を生み出した宇宙を理解できる唯一の存在だとしたらそこに深い意味を感じます。 人類がもし滅亡したらこの宇宙を理解できる存在がいなくなる、それは許されないと...


ミトコンドリアと真核生物

2010年10月13日 | 生命
引き続き生命進化の話である。先に述べた生命発生は普遍的な話で、水と紫外線と熱水噴出があれば地球以外の惑星でも容易に起こりそうな現象である。特に温度に着目すると4℃以上の海水と300℃以下の熱水が硫化鉄の泡を介して触れ合えばよいので、20℃前後の生ぬるい環境が必要という訳ではなく、生命の発生条件は拡大する。
さて、問題はその後である。真菌たる原核生物はATPを生成するプロトンポンプをその細胞膜上に持っており、その細胞膜に穴が開くと電位差の維持が出来なくなり即死する。よって、それを細胞壁で頑丈に守る必要がある。また幾何学の基礎では、球の表面積は直径の二乗に比例し、体積は三乗に比例する。細胞膜上にプロトンポンプを持つ原核生物はその幾何学上の制限により大きくなれないのである。直径が大きくなると体積に相対して表面積が少なくなり細胞を維持するエネルギー生成が出来なくなるのである。また頑丈な細胞壁は捕食を不可能にする。原核生物の生存戦略は、大きくなって敵を捕食する弱肉強食原理ではなく、小さいまま早く増殖しリソースを奪う事である。早く増殖するには単純なDNAである必要があり、生命の複雑化という道筋は辿れない。原核生物は進化の袋小路で行き止まるのである。
リン・マーギュリスは1967年6月に有名な細胞内共生説を発表した。我々の細胞内の組織であるミトコンドリアや植物の葉緑体は、元来は別の生命であったのが捕食の際に取り込まれ共生を始め、今に至っているという説である。現にミトコンドリアは細胞核とは別の独自のDNAを持っており母系遺伝をすることは良く知られている。
ミトコンドリアは数ミクロンの大きさで、ひだひだの二重壁を持ち、非常に効率的にATPを生成する組織であり、これは元々独立した原核生物であった。我々の細胞内にはこのミトコンドリアが細胞あたり100-数千個存在しており、全部で体重の約10%を占める。原核生物と真核生物の違いは字義からくる核の違いより、このミトコンドリアによる差が大きい。
ミトコンドリアを持つ真核生物はそのエネルギー代謝を細胞膜ではなくミトコンドリアが受け持つことで幾何学的2/3乗則の呪縛から解き放たれ、硬い細胞壁も不要とした。ここに細胞の巨大化、捕食及び多細胞化の道が開けたのだ。つまり弱肉強食の進化への道がミトコンドリアにより開始したのである。そしてこの共生というイベントが偶々起こったことで知的生命への可能性が開けたが、これは必然的な事象ではなく奇跡的な偶然と捕らえたほうが良い。恐らく地球外生命探査を続けると原核生物様の生命体はある確率で見つかるであろうが、真核生物タイプが見つかるかどうかは疑わしい、この件は地球外知的生命体探査(SETI)問題であるフェルミ・パラドックスの結論とも関わる問題である。

生命の発生

2010年10月13日 | 生命
原初問題への疑問が私の知的興味の主なものである。宇宙の始まり、生命の始まり、人類の始まり、文明の始まり、日本人の始まり等々...
宇宙の始まりの次は生命の始まりの謎であろう。実は生命は比較的簡単に発生するのである。ところがそこから我々にいたる道筋で奇跡に近いような偶然が働いている。
生物の分類で最も基本的なものは界・ドメインである。全ての地球上の生物は、真菌界(原核生物)、真核生物界、古細菌界の3ドメインに分類される。古細菌(アーキア)は最近になって見つかったドメインで以前は真菌とごっちゃになっていた。
この3ドメインの生物に共通する機構がDNAとプロトンポンプによるATP代謝である。すべての生物はDNAを持つ。実は後に述べることになる”わがままな遺伝子(R.ドーキンス)”によると生物がDNAを持つのではなく、生命の本体はDNAでそれが生物の殻をまとっているという、とんでもない真実が語られている。そしてプロトンポンプ。ATP(アデノシン3燐酸)は生体内のエネルギー通貨であり呼吸、発酵により生成されATPがADP(アデノシン2燐酸)と燐分子に分解するとき生命活動に必要なエネルギーを放出する。このATPを生成するのがプロトンポンプであり、全生命に共通のメカニズムとなっている。プロトンポンプは膜に開いた穴に付随するタンパク質で、この穴をプロトン(水素イオン)が通過するとタンパク質の腕が回転し一回転で3個のATPを生成する。プロトンがこのプロトンポンプチャンネルを通過するのは膜の内外の電位差である。膜の外側が正電位で内側が負電位を持つ場合、正の電荷を持つ水素イオンは外から内に流れ込もうとし、プロトンポンプを回す。つまり生体エネルギーは膜(細胞膜)の内外の電位差によって生じるのである。
この電位差によるエネルギー生成は全生命に共通であり生命発生のヒントを与えている。最近生命の発生のステージとして深海底のブラックスモーカー:熱水噴出孔が注目されている。約40億年前の地球には、いたるところに熱水噴出孔があった。そして海水は太陽からの紫外線(オゾン層無し)で分解し軽い水素は宇宙へ拡散し海は酸化していった。一方マントルからの熱水は還元電位を維持しており海との間に電位差を生じる。また、噴出孔付近には硫化鉄の微小な泡が膜構造を形成する。ここにプロトンポンプの原型であるATPアーゼがくっつけばATPの生成が始まるのである。これらの事は”Power,SEX,Suicide:ミトコンドリアが進化を決めた、N.レーン”のひき写しである。詳しくはそちらを参照されたし、であるが原初生命がフルメタルジャケットであったとしたら驚きである。ちなみに、今でも熱水噴出孔のあたりでは白瓜貝や蟹、バクテリア等の生物が繁殖している。太陽光の全く射さない深海底で生命活動を維持できるのは未だに熱水の酸化・還元電位を利用しているからである。