イヌイット(エスキモー)パラドックスというのがある。
”グリーンランドに住むイヌイットは心臓のトラブルが非常に少なく、それに対して、デンマークに移住したイヌイットでは、心臓系の病気がデンマーク人と同じくらいに増加していたことがわかりました。そこで両者の血液を調べてみると、グリーンランドの先住民では、EPAがアラキドン酸とほとんど同じ比率(0.94)であったのに対し、デンマークに移住した先住民ではEPAの割合が極端に少なくなっており(0.02)、このことが原因で、心臓のトラブルが激増していたことが確認されました。そしてこの違いは、グリーンランドではアザラシなどの海獣の肉を食べているのに対し、デンマークではいわゆる欧米型の食事をしているということだったのです。”
イヌイットの人々は海獣の生肉と脂肪を多量に食べているのに心臓疾患が少ない。これはオメガ3必須脂肪酸(EPA,DHA)が海獣の肉に含まれているからだ。このオメガ3が心臓に良い理由を理化学研究所と東大の研究チームが解明した。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140721-2/
我々を含む哺乳類にはオメガ3を合成する能力は無い。しかし、ある種の藻や線虫はそれを体内合成できる。そこで研究チームは線虫の遺伝子をネズミに埋め込んでオメガ3を自己合成できるネズミを創った。
そして有ろう事か、そのネズミの大動脈を縛って血が流れにくくしたのだ。これは動脈硬化を起こして高血圧になった人と同じ状況をシミュレートした事になる。こうするとネズミの心臓は無理に血流を流そうとして肥大化しそのうち膨張弛緩して心不全を起こして死んでしまう。
ところが先の線虫から遺伝子移植してオメガ3を自己合成できるようになったネズミは心臓肥大はするが心不全には至らない。そこでこの二種類のネズミの心臓を分析するとEPA由来の18-HEPEがFat-1 Tgマクロファージで顕著に増加していた事が解った。
ついでに、このEPA由来の18-HEPEを遺伝子操作していない野生型ネズミに注射すると同様に心不全を起こさないという実験結果を得ている。
要するに、オメガ3から派生した18-HEPEという物質が心臓を守るのだ。
オメガ3は必須脂肪酸でありビタミンと一緒で体内合成出来ない。だから食事やサプリで摂るしかない。魚中心の食事を続けていた昭和以前の日本人には心臓疾患が少なかったが、最近の西欧化した食事を続ける事で心臓疾患が急激に増加している。オメガ3はサプリで摂るのが簡単だ。
老婆心ながら付け加えると、国産のEPA・DHAサプリは米国産に比べて10倍以上高い。米国で1000円で買えるものが国産では1万円以上する。バカらしいからTVで宣伝してるような国産サプリを買うのは止めたほうがいい。ステマじゃないが買うなら例えばこんなのをお勧めします。
http://jp.iherb.com/Now-Foods-Omega-3-Molecularly-Distilled-Cholesterol-Free-500-Softgels/18104