2017年に出版された最新のゲノム解析による日本人論、著者は斎藤成也・東大教授。
前半1/3は20万年前にアフリカで出現した我々ホモ・サピエンスが、どのような経過をたどって地球上に分布していったかをDNA解析を通じて解説している。これはこれで凄く面白いし最新の知見でこんな事まで解るのかという驚嘆すべき事実が述べられている。
ただ、私がこの本で最も注目したいのは日本人の3重構造説だ。従来より日本人の縄文系、弥生系の二重構造は定説になっているがゲノム解析の結果それだけでは説明しきれない事実が出てきた。
きっかけは出雲県人会の人たちのゲノム解析結果だ。
東京在住の出雲出身者でつくる出雲会メンバー21名の解析をしたところ関東人とは明らかに違う分布を示した。このクラスターは東北人のパターンと一致する。そう、松本清張の砂の器で語られた出雲と東北の類似性がDNA解析にも表れたのだ。
東北人のパターンは平均的日本人とは若干ズレているが沖縄・アイヌの縄文系パターンとも違う。著者は日本人は縄文の後に弥生第一波、弥生第二波の三段階の流入があったという仮説を立てている。
ここで思い浮かぶのが記紀における出雲神話と銅鐸の話だ。近畿地方の弥生時代遺構からは鏡は一枚も出ていないで出てくるのは銅鐸だ。
ここからは私の推測だが、この銅鐸のキャリア―が第二波の弥生渡来人では無かろうか。記紀における神武東征が4世紀初頭に実際にあってそれ以降古墳時代が始まる。考古学的には畿内で弥生遺構から一枚も出土しない鏡が、古墳時代以降北部九州と同様に大量に出土するようになる。そして、弥生晩期に見つかる畿内の銅鐸は姿を消す。
著者はこの第三波渡来人の分布をこう見る。
この図を見て頭に浮かんだのがこれ、
この図は1961年に早大問題研究会が作った未開放の全国分布図です。僕自身は未開放は縄文系の人々を後から来た渡来系の連中が駆逐して追い込んだ居留区だと考えていたが、実はそうではなく出雲系(銅鐸族)の居留区かもしれないという可能性が出てきた。東北地方はの空白地帯でその理由は蝦夷だと考えていたが蝦夷は縄文ではなく第二波弥生系ではないか。なぜなら、東北人のゲノムはアイヌ・沖縄とは一致しないことがはっきりしていて、むしろ東北・出雲・長野あたりでクラスターを作っている。(というより、北部九州・瀬戸内・近畿・関東以外と言ったほうが正しいかも)
最後に県ごとのゲノム分布を載せるが色々と考えさせて面白いね。