小野薬品の株価が上がっている。がんの新薬を発売したのだ。http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/
この薬、従来の抗がん剤とは全く違う働きをする。元々人の身体には免疫機構があり異物を排除する働きが備わっている。しかし、癌はこの免疫の攻撃を受けずに成長・転移し全身を蝕む。なぜ、がんが免疫の対象にならないかと言うとPD-1という生体高分子が働く事で免疫T細胞の免疫機能を抑制するからだ。
このPD-1免疫抑制因子は2009年京大で発見された。 http://news.mynavi.jp/news/2013/09/19/026/
がん細胞はこのPD-1分子を使って免疫を逃れているわけだ。
小野薬品の新しい薬はこのPD-1に結合し機能させなくすることで、がんに対する免疫寛容を抑制しがんを本来からだが持っている免疫機能で消滅させることが出来る。
このPD-1抑制の効果は歴然でがん患者の10年後生存率が3割から8割に改善している。
しかし、このPD-1抑制は良いことばかりではなく副作用もある。PD-1の研究は元々自己免疫症の研究から始まった。自己免疫症というのは自分の免疫機構が自分自身を攻撃する病気の総称でリューマチ、エリテマトーデスなどの膠原病や潰瘍性大腸炎などがその代表例だ。このような自己免疫症にかかりやすい人はPD-1分子が少ないため自己免疫寛容度が低く免疫が自分自身を攻撃する。小野薬品の新薬を飲むとこれと同じ状況になる。免疫はがんを攻撃すると同時に自分自身も攻撃するようになる。ただ、異物であるがんと自分自身では免疫対象となる度合いが違うので効果が勝ることになる。
逆に言うと、自己免疫症の人はがんに罹りにくいという事だ。PD-1分子が少ない自己免疫症体質の人は免疫が自分自身を攻撃しやすいと同時にがん細胞を免疫機構が早期に除去してくれるためがんに罹りにくい。
そこで、ふと自分自身の事を思い出した。私自身足のひざに乾癬が出来て15年以上になる。乾癬とは皮膚に現れる自己免疫症の一種で、なかなか治らない。ステロイド剤で症状は治まっているが根治はしないで困っている。困っているといっても別に命に別状があるわけでもなく単に見てくれが悪いだけだが...
と言う事は、私は 自己免疫体質=がんに罹りにくい と言う事がいえそうだ。 禍福は糾える縄の如し、あるいは災い転じて福となす と、言う事かな