久しぶりに興奮する本に出合えた。数学的な宇宙。
著者のテグマークはスウェーデン生まれ現在50歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)で物理学教授をやっている。
何が面白いって、この本には最新を越えて現在進行形の宇宙論が詳しく解りやすい言葉で書かれていて実にワクワクする。
宇宙はビッグバンから始まった、というのは古いフリードマンモデルであってビックバンに先立ってインフレーションという状態があった。真空中ではプランク質量の範囲で陽子、反陽子ペアが常に発生しては再結合して消えているのは良く知られた量子論の話だがこのペア発生がある確率でトンネル現象を起こすとペア間の距離が離れることで負の重力エネルギーが発生し、その負のエネルギーを埋め合わせる正の質量が出現する。するとその質量で膨張した分だけ負の重力エネルギーが増加しますます正の質量が爆発的に増大する。これがインフレーションの状態です。宇宙全体の総エネルギーは全質量+正エネルギーと重力の負のエネルギーがバランスしてほぼゼロ(プランク質量)でエネルギー・質量保存則と辻褄は合っている。
ここまでは既知の宇宙論だが、ここまででこの本の4分の1しか進んでいない。ここから先の展開が常軌を逸したような多宇宙論に発展する。我々が見える範囲の宇宙、つまり140億光年の範囲ではインフレーションは終わっているが、その外側ではインフレーションが続いている部分や新たにインフレーションがはじまっている部分が有り(得る)宇宙は枝分かれをした多元的なものだという。
宇宙論と合わせて物理学最大の謎の一つである量子の重ね合わせ状態についても、エヴァレットの多世界解釈を解りやすく紹介している。量子過程において観測者を含む世界が右と左に同時に分岐するのが重ね合わせの状態だという説だ。これについては面白いデータを提示している。アメリカの量子力学学会で参加者に重ね合わせの解釈についてのアンケートを取っているのだが。1997年では全48票のうちコペンハーゲン解釈が13票、多世界解釈が8票だったのが2010年にハーバードで採った際にはコペンハーゲンはゼロで多世界が35票中16票を取っているのだ。つまり一流の学者の間ではエヴァレットの多世界解釈が主流となりつつある。量子力学の教科書が書き代わるのもそう遠くないかもね(´・ω・`)
まあ偉そうに書いているが実はまだこの本を読了していない。後半の主題である数学的な宇宙については哲学的と言うか、なかなか話についていけないのだから仕方がない。自分の頭の悪さを呪うしかないな(´・ω・`)
100年間議論が続いている量子の謎の話も面白いがその先にある最新の宇宙論を知りたいならこの本だね。とんでもない内容だけど、時間かけても読み通したい本に久々に出合えて興奮しています。