徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

再生可能エネルギープラントのアイデア

2014年05月18日 | 物理

ここ数日新しい太陽光発電システムのアイデアに取り付かれている。本気でやるなら特許を申請すべきですが、それも面倒くさいのでこのブログで公開して公知にしてしまいます。

きっかけはこの記事を見たことです。 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1405/13/news017.html

これはイスラエルの学者のアイデアで、アリゾナに高さ700m近いタワーを建設しようとしているプロジェクトで、なかなか面白い。みなさんは夏に滝に涼みに行った事はあると思います。その時に滝つぼから、かなり強い冷風が吹いて来るのを経験した事はありませんか?あれは単に水の流下に伴う気流ではなく、水しぶきが気化する際に気化熱を奪い、空気が冷却され重くなって下降気流が発生しているのです。このダウンドラフトタワーはその原理を応用して砂漠地帯の乾燥した暑い空気に水を散布して下降気流を起こしその風で発電しようとするものです。

似たような話で以前からあるのが、砂漠の太陽光で空気を温めて上昇気流を起こし発電する、というアイデアです。

ただ、これは砂漠の熱い空気のなかでより熱い空気を作り出して上昇気流を作り出す、というものでけっこう無理があるのです。熱力学第二法則と言うのがあって熱機関の効率は温度差が大きいほど高くなります。このアップドラフト方式では温室で暖めた空気をチムニーで集めて上昇させるのですがこの温室の外の地上も太陽光エネルギーは同じように暖めます。つまり、このシステムは熱力学的には効率が悪いのです。これに対して水で冷却するダウンドラフト方式はとても有望だと思います。

ただ、ダウンドラフト方式の問題は水の供給です。オリジナルのアイデアでは海水をポンプアップして散布するとしています。 https://www.youtube.com/watch?v=2japP5d0qCI

この場合、ポンプアップに要する電力と乾燥した塩分を撒き散らすことによる環境汚染が問題になるでしょう。アリゾナに最初のプラントを計画しているので、この場合は近くのコロラド川のパウエル湖からサイホンで水を引けばこれ等の問題は解決しますが、とは言え貴重な真水をタダぶちまけるのは気が引けます。

そこで、私は考えました。この二つの方式を一緒にしたらどうかと... 

いちおう簡単な図を書いてみたんですが、これはダウンドラフトタワーとアップドラフトタワーを同軸構造にしています。まず高さ700mの地点で外側のダウンドラフト部分で散水し下降気流を作り出します。その気流を使って基部のタービンを回し発電する。その湿った冷たい空気を温室を通して太陽光で加熱し、アップドラフトタワーで上昇気流を作る。ここで、従来のアップドラフトタワーと決定的に違うのは上昇するのが乾燥空気ではなく高湿度の水分を含んだ空気という点です。

みなさんは夏空にモクモクと湧き上がる積乱雲をご存知でしょう。あの雲が何故成層圏に届くまで発達して上昇するかと言うと、空気中の水分が凝結する際に潜熱を出して、周りの空気より温度が高くなるからです。水分を含んだ空気と言うのは乾燥空気に比べエネルギー密度がずっと高いのです。砂漠では空気が乾燥しているので雲は出来ません。しかし、このシステムでは水を散布する事で人工的に積乱雲をタワーの中で作ることが出来るのです。こうすることで、ダウンドラフトの下降流と潜熱放出による上昇流が合わさって高出力の発電が可能になります。おまけに潜熱放出した水分は凝結して液体に戻るので、それをタワーの頂部で捕集してダウンドラフトに戻せば水をポンプアップ電力無しに循環する事が出来る。

と、ここまでは良いのですが実はひとつ大問題があります。砂漠特有の気候です。実はダウンドラフトは夜間発電が可能なのです。というのも、砂漠の上空の空気は2000m位まで熱く一定なのです。(下図) http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/72375/1/a35b1p19.pdf

我々が住んでいる地域では100mで0.6℃ずつ気温が下がりますが砂漠は違うのです。このおかげで夜間も上空の空気は高温を保っているので散水によって下降気流が起こり発電が可能なのです。しかし、問題は雲の発生高度です。温度が一定だと断熱膨張による温度低下の度合いが小さいのでなかなか雲は発生しません。2000mのプラネタリー境界を越えてやっと温度が下がるので人工的にタワー内部で雲を作り出そうとするとこの2000m以上の高さのチムニーが必要となるのです。(なんせ、積乱雲は1万mですからね...)

まあ、2000mの煙突となるとちょっと手が出ない感じがします。ただ、ダウンドラフトが実用化し、水の供給が将来問題になってきたら、きっと人類はこの煙突を立てる時が来る様な気がします。その時にワシは2014年の5月にそれは気がついておった、と言う証拠にこのブログを書いておく、という次第です。

追記;

夜間は太陽光エネルギー供給が無いので、ダウンドラフト気流はバイパスして外部放出する機構が必要

 


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
神はサイコロ遊びをする (マルテンサイト熱力学)
2024-04-03 04:48:24
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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