徒然なるまゝによしなしごとを書きつくる

旧タイトル めざせ、ブータン

生命の発生

2010年10月13日 | 生命
原初問題への疑問が私の知的興味の主なものである。宇宙の始まり、生命の始まり、人類の始まり、文明の始まり、日本人の始まり等々...
宇宙の始まりの次は生命の始まりの謎であろう。実は生命は比較的簡単に発生するのである。ところがそこから我々にいたる道筋で奇跡に近いような偶然が働いている。
生物の分類で最も基本的なものは界・ドメインである。全ての地球上の生物は、真菌界(原核生物)、真核生物界、古細菌界の3ドメインに分類される。古細菌(アーキア)は最近になって見つかったドメインで以前は真菌とごっちゃになっていた。
この3ドメインの生物に共通する機構がDNAとプロトンポンプによるATP代謝である。すべての生物はDNAを持つ。実は後に述べることになる”わがままな遺伝子(R.ドーキンス)”によると生物がDNAを持つのではなく、生命の本体はDNAでそれが生物の殻をまとっているという、とんでもない真実が語られている。そしてプロトンポンプ。ATP(アデノシン3燐酸)は生体内のエネルギー通貨であり呼吸、発酵により生成されATPがADP(アデノシン2燐酸)と燐分子に分解するとき生命活動に必要なエネルギーを放出する。このATPを生成するのがプロトンポンプであり、全生命に共通のメカニズムとなっている。プロトンポンプは膜に開いた穴に付随するタンパク質で、この穴をプロトン(水素イオン)が通過するとタンパク質の腕が回転し一回転で3個のATPを生成する。プロトンがこのプロトンポンプチャンネルを通過するのは膜の内外の電位差である。膜の外側が正電位で内側が負電位を持つ場合、正の電荷を持つ水素イオンは外から内に流れ込もうとし、プロトンポンプを回す。つまり生体エネルギーは膜(細胞膜)の内外の電位差によって生じるのである。
この電位差によるエネルギー生成は全生命に共通であり生命発生のヒントを与えている。最近生命の発生のステージとして深海底のブラックスモーカー:熱水噴出孔が注目されている。約40億年前の地球には、いたるところに熱水噴出孔があった。そして海水は太陽からの紫外線(オゾン層無し)で分解し軽い水素は宇宙へ拡散し海は酸化していった。一方マントルからの熱水は還元電位を維持しており海との間に電位差を生じる。また、噴出孔付近には硫化鉄の微小な泡が膜構造を形成する。ここにプロトンポンプの原型であるATPアーゼがくっつけばATPの生成が始まるのである。これらの事は”Power,SEX,Suicide:ミトコンドリアが進化を決めた、N.レーン”のひき写しである。詳しくはそちらを参照されたし、であるが原初生命がフルメタルジャケットであったとしたら驚きである。ちなみに、今でも熱水噴出孔のあたりでは白瓜貝や蟹、バクテリア等の生物が繁殖している。太陽光の全く射さない深海底で生命活動を維持できるのは未だに熱水の酸化・還元電位を利用しているからである。


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