今年のプロムスで最も楽しみにしていたプログラム、ジョシュア・ベルによるブラームス・ヴァイオリン協奏曲。
私にとって、ヴァイオリンを習うきっかけになった曲であり、いろいろな演奏を聴いて、プロにとっても難しい曲だと理解したので、是非ジョシュア・ベルの生演奏を聴いてみたいと思っていた。
ジョシュの音はとても澄んで美しいと感じた。清楚な音だ。一般的なヴァイオリンの好みとしては、ガルネリの芳醇さなのだけれど、こういう清らかな音もいいものだと思う。日常生活においても、スタイリッシュなジョシュらしい音。黒だったか濃紺だったか思い出せないけれど、ポルシェを駆り、MacBookを使う彼らしい。ガルネリはもうちょっと、マセラッティとか、そういう感じ(勝手な想像)。
左手の動きがあまりに早くて、耳が音を聞き分けられないくらいだ(ホールが悪い?)。右手もボウイングの美しいこと。弦間の移動が素早い。また、長音で弓を返してもそれが音に現れない。一体、どんな風に筋肉を使っているのだろう(ヴァイオリニストなら誰でもできる?-いけないところでこっそり弓を返すと、どうしても先生に見破られてしまう私)
第一楽章の自作のカデンツァ、素敵だ。第一楽章が終わったところで拍手をしたかったくらい。-と思っていたら、いるいる、拍手する人。曲の途中で拍手しない、は一応の約束事だけれど、オペラでアリアの後拍手が許されるように、カデンツァの後は許容してもらえないかしら。第二から第三楽章の間は、半呼吸後に突入。ここぞとばかり咳をしていて指揮者を見ていなかった人は、周囲から睨まれたことだろう。
ジョシュでこの曲を聴くと、いつもにも増して第三楽章の出だしが悲しい。他の曲の最終楽章では特に感じないのだけれど(あとはシューベルトのピアノソナタD.960くらい)、ここを聴くと「ああ、もう曲が終わってしまう」と悲しくなってしまうのだ。
それにしても、この曲、前奏も長いし(第一、第二楽章)、間奏も結構長い。自分の出番を待つ間、ジョシュが何を考えていたのか、とても知りたい。