S席£75という強気の値段が災いしてか、空席の目立つロイヤルフェスティバルホールでアンジェラ・ゲオルギュー、マリウス・マネアを聴いた。
これだけ広いホールでオケをバックに歌うのは、相当大変ではないかと想像する。アンジェラも、声量が特別あるわけではないので、ところどころオケに声が消されてしまう。それでも、一昨日までのソプラノがアンジェラで、テノールがマリウスだったら、どんなに良かっただろう、と思う。
アンジェラの声色の使い分け、演技力は素晴らしい。観ていて思わず感情移入してしまう。また、彼女は見た目も美しい。出てきたとたん、隣の隣のおじさん「Beautiful」と絶句。彼女が衣装を変えて舞台に現れる度、会場からため息が漏れる。
しかし、少々準備不足というか、小遣い稼ぎの演奏会的な部分は否めないか。オケの小品5、アンジェラの独唱2、マリウスの独唱2、アンジェラとマリウスのデュオが4という構成で£75というのは少々納得がいかない。それに輪をかけたのが、MascagniのCherry Duet。アンジェラが、指揮者の譜面台に寄るので、歌詞の意味が分からない私は、演技かな?と思っていたら、彼女が突然、「Sorry, Sorry, Sorry!!」。どうやら入る場所を間違えたらしい。指揮者と2言、3言交し、スコアを確認、再び歌い始めた。
それはないだろう~、アンジェラ。
アンコールの最後は勿論「乾杯の歌」。指揮者が会場に拍手の合いの手を入れるように指示をするが、イギリス人のリズム感が良いわけがない。私は合いの手には参加せず合唱部分を歌う。最後ははっきり言って「ディナーショー」のノリ。オペラファン流れなのか、おじさま、おばさまファンが多く、3~4人のおばさまは、舞台まで行って花束を渡していた。
サイン会をする、というので、行って見ると、舞台で見るよりずっと小柄で細身のアンジェラ登場。あの体のどこからホールを震わせる声が出るのか。誕生日であることを告げると「お誕生日おめでとう」と英語とルーマニア語(彼女はルーマニア人)でサインしてくれた。写真も「手も一緒に」といったら、こんなポーズをとってくれた。一流の演奏家という人種は、皆良い人なのだな。