アンドリュー・リットン指揮、Pfフレディ・ケンプ、ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラでチャイコフスキーのPf協奏曲を聴いた。
ケンプはYouTubeで見たときそのままに、極めて長い指を持て余し気味に弾く。長すぎるからミスタッチするんじゃないか、と思うほどだ。また、背丈も相当ありそうで、チャイコフスキーやラフマニノフのPf協奏曲向きの体格である。和音の嵐にも負けそうにない。346小節目からの両手オクターブは圧巻であった。しかし、こんな風に弾かれるピアノは幸せなのか、辛いのか。何度弦を切ったことがあるのか聞いてみたい。少なくとも我が家に居るSteinwayがこの人に弾かれたら5分と持たないだろう。
普段ならば、第1楽章が終わると、あ、この曲は終わった、という感じになってしまうのだが、第3楽章まで楽しく聴かせてもらった。長い指に起因するのかはともかく、多少ミスタッチが気になり、こういうところがコンクールで優勝できなかった理由なのかな(例えロシア人を優勝させたいという力が働いたとしても、言い訳になる)、なんて思った。一方で、ダイナミックな演奏は一般聴衆を惹きつけ、愛される力に結びつくのだろう。
後半はラフマニノフ交響曲第2番。ミーハーといわれようと、第3楽章のメロディは美しいと認めざるを得ない。ラフマニノフの脳内にメロディが自然と浮かんできたのか、あるいは人間が感動するメロディの特徴を知り尽くしていて、その通りに作曲したのか。彼が現代に生きていたら、素晴らしい「NHK大河ドラマ」の主題歌を作曲してくれたに違いない、と確信する。