Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

カーボンファイバーチェロ=風呂場で歌う歌@キングスプラス、ロンドン

2010-04-18 22:00:00 | コンサート

火山灰の影響でミュンヘンへ行けなくなった。そこで昨日はBBC交響楽団の演奏会へ行き(プロコのPf協奏曲第2番他-でも感想を書く気になれなかった)、今日はWigmore Hallの演奏会も演奏者が来られなくてキャンセルになっていたので、初めてキングスクロスの近くにあるキングスプラスへホールの見学がてら、演奏を聴きに行った。

キングスクロス駅から歩いて5分ほどだが、道程はおしゃれとは言えない(日が落ちたら一人では歩きたくない)。幸い今日は18時半から開演、しかも既にロンドンは20時半頃まで明るいので問題なかった。総合文化施設のようなところに室内楽用のホールがある。また、裏側には運河があり、お茶をするにはなかなか洒落ている。ホールは天井が高く、響きも良い。まだ新しくて綺麗でお薦めできる。

演奏はグリニッジトリオ(ピアノトリオ)でベートーベンの第7番、モーツァルトの第6番、ショスタコの第2番。

まずは奏者が出てきてびっくり。チェリストが抱えてきたのはカーボンファイバー製のチェロだった!ヨーヨー・マも使ったというし、生で聴くとどんななのだろう?とちょっとわくわくした。

評判通り、音量はあるが、音質的には「厚みの無い音」というのだろうか、おそらく倍音が少なく波形が木の楽器に比べてシンプルなのではないかと思うような音だ。また、楽器がまるで缶を鳴らすように響く。別の喩えを用いるなら、風呂場で歌を歌うような感じ。これをまたチェリストが放置するので、そこは休符でしょ?というところも前の音が響きっぱなしなのである(舞台近くで聴いていたから余計に気になったのかもしれないが、弾いている本人は気にならないのだろうか)。

この楽器で練習しても、奏者は上手くならないのではないかと心配になる。歌手は風呂場で歌の練習をしてはいけない(響くので上手くなったと錯覚する)と聞いたことがあるが、この楽器も本当は楽器を鳴らせていないのに、鳴らせたような気持ちになってしまうのではないかと心配だ。

弦楽器奏者は、楽器を他人と共有できないために、楽器の争奪になるのだろう。良い楽器にめぐり合うのも才能の一部だろうか?ヴァイオリニストの楽器は私が所有している楽器と似ていた(良い楽器は、なんというか、見た目もスマートなのだが、彼女のや私の楽器はどうも厚ぼったい感じがする)。彼女にも早く良いパトロンが付いて、良い楽器が与えられますように!

また、譜めくりの人が、ピアニストのニーズに対応できず、前半でクビになってしまった。後半で譜めくりの人用の椅子が下げられたとき(休憩中にやっておけばよいものを!)、会場からは笑いが漏れた。

まだ若いトリオである。できの悪い譜めくり人をどう扱うかとか、演奏中に間違えたり、打ち合わせと違っても変な顔をしない、とか、プロとして(というよりは人前で演奏するとき)の基本的なことも学習中、といった感じ。

前半のベートーベンからブラボーが出ていたが、演奏者の知り合いのようだった。自分達の出来具合は本人達が一番良くわかっているとは思うし、まだ若い奏者達なので、今後の活躍に期待したい。今日はコンサートホール見学費で£16.50だったような気がする。少々高すぎないだろうか?