コリン・デイヴィス指揮、ロンドン交響楽団、Pf内田光子でモーツァルトのPf協奏曲K453を聴いた。
登場から内田はロンドンの聴衆を魅了している。コリンと舞台に現れた内田、ヴァイオリンの座席の間が比較的詰まっているのを見て、(以下想像)
「どこを歩いてピアノまで行ったらよいのかしら?」
「客席側を歩いていいんだよ」
「でも、失礼だわ」
「いいから大丈夫」
と内田は舞台の一番客席側のスペースを通ってピアノへ、一方コリンはヴァイオリンの間を抜けて指揮台へ。
そして二人は指揮台横で、
「再び会えて嬉しい(わ)」
と手を取り合い、演奏以前に客席をドラマの中へ引きずり込んで行く。
演奏開始。内田は相変わらず「あちらの世界」へ入り込んでゆく。でも今日は派手なパフォーマンスもなく(=派手なミスもなく)、ナチュラルなモーツァルトを聴かせてくれた。
演奏中、あちらの世界に行っている内田、とってもお茶目で、楽章間にはピアノの本体と蓋の間から、その先にいるチェリストを覗いてみたり。フランス人かイタリア人だったら、目配せくらい返しただろうけれど、英国人と思しきチェリスト、世界的ピアニストからのいたずらっぽい視線に、戸惑うのみ、無反応。あー、つまんない(後半でのVcソロは上手かったから許す)。
演奏終了後、コリンの元へ寄って、指揮台の上にいる彼に背伸びをしてビズをする。本当に「妖精」である。
舞台上の内田を見ていると、こんなにかわいらしくて(今年62歳だというのに!)、可憐な妖精はめったにいない、と思う。しかし、一度舞台を降りれば、これ以上強靭な精神を持った人間は、地球上にそうはいないと思わされる。このギャップも魅力か。
そこを何とかボタンを押し、内田と話をしにいった。
「コリンとは相性がいいのよ」
日曜日も同じ曲目だけれど、聴きに行くことにした。